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日本人の対話力不足の原因は「ジャンケン」だった⁉…なんでも「偶然」に任せてしまうことの思いもよらぬ「弊害」
作家の鴻上尚史が新刊『君はどう生きるか』を発表。日本人の対話能力の欠如についてジャンケンを例に語る。
ジャンケンに依存することの問題点や、真剣な問題に対する対話の重要性を指摘。
現代の日本社会において、対話がジャンケンに置き換えられがちな問題を考察。
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いままで、「大切な人と深くつながるために」「いじめられている君へ」「親の期待に応えなくていい」など、10代に向けて多くのメッセージを発信してきた作家の鴻上尚史さんが「今の10代に贈る生きるヒント」を6月12日に刊行する。その書籍のタイトルは『君はどう生きるか』。昨年ジブリの映画でも話題になった90年近く前のベストセラーをもじったこのタイトル。なぜ「君たち」でなくて「君」なのか。そこには鴻上尚史の考える時代の大きな変化があった。
『君はどう生きるか』(鴻上尚史著)より抜粋して、著者がいまを生きる10代に贈るメッセージを一部紹介する。
『君はどう生きるか』連載第15回
『5歳の子供が「ブランコ」をめぐって熱い話し合い…イギリス人の対話力を育てる衝撃の「価値観」とは』より続く
ぼくはね、日本人が「対話」が下手なのは、じつはジャンケンがあるからだと思ってるんだ。
ジャンケンっていう過保護な親がいてさ、子供が一人立ちするのをとめてるっていう印象。「君は何も考えなくていいのよ。ジャンケンがすべて決めてくれるから。その結果にただ従っていればいいんだから」って感じ。
この国は、君をずっと子供扱いしながら、「いつまでもホントに子供なんだから」ってなげいている国だとぼくは思っているんだ。「いつまでも子供だってなげきながら、子供扱いをやめない国」。
子供じゃなくなって欲しいと思ったら、子供扱いをやめないとね。でも、やめないんだ。
まさにジャンケンがその根本をつくっている気がする。
もちろん、ジャンケンは便利なのね。ぼくはジャンケンを完全にやめた方がいいなんて思ってないの。
お互いにとってたいした問題じゃないことはジャンケンに任せるのがいいと思う。
ジャンケンして、負けた方が次の電信柱までみんなのバッグを持つだの、最後に残ったスイーツを食べるだの、誰からゲームをするか、なんてのは、いちいち議論しないでジャンケンでいいと思う。
遊びの予定を決める対話に疲れて、もうジャンケンをするってのもありだと思う。
でも、練習のメニューはジャンケンで決めてはいけない。そう思わない?
それは大切な問題で、ジャンケンという偶然に任せてはいけないことだからだ。
だって、総理大臣が「今年から、入試の合格不合格は、ジャンケンで決めます」なんて言ったら「そんなのヤダ!」って思うだろう。
「税金を増やすかどうかは、ジャンケンで決めます」なんてのも嫌だよね。真剣なことは、ジャンケンで決めちゃいけないんだ。
でも、真剣なことだけ「対話」していると、なかなか、対話が上手くならないね。ここが困った点なんだよね。
だから、ジャンケンの代わりに、対話することをちょっとは増やした方がいいとぼくは思ってるんだ。
『「多数決は少数派に対する暴力」…「しようがない」で受け入れないで! 大人も気付かない多数決の問題点』へ続く