東京都知事選「死んだはずの男が立候補」という前代未聞のミステリー

AI要約

東京都知事選挙には小池百合子氏と蓮舫氏以外にも多くの候補者が出馬しており、過去には幽霊候補も登場した。

幽霊候補の一人、橋本勝氏は青少年の性問題解決策として女性型人造人間を提案し、その高額さが話題になった。

橋本氏の独創的な政策提案は一部で支持されたが、正当な立候補なのか疑問が持たれた。

東京都知事選「死んだはずの男が立候補」という前代未聞のミステリー

 小池百合子氏と蓮舫氏の一騎打ちのように報じられがちな東京都知事選であるが、もちろん二人以外にも数多くの候補者が出馬を表明している。

 一体誰なのか、どこまで本気なのかわからない候補者を見て、政治の劣化を嘆く向きもいることだろう。もっとも、怪しげな候補者が立候補するのは今に始まったものではない。

 かつて東京都知事選では「死んだはずの男」が立候補して、立派に一定数の票を得たことすらあるのだ。

 なぜそんなことが起きたのか。

 幽霊男の意外な狙いとは何か。

 この不思議な「幽霊候補事件」について、選挙にまつわる衝撃のエピソード集『ヤバい選挙』(宮澤暁・著)をもとに見てみよう(以下は、同書をもとに再構成したものです)。

 1963年の東京都知事選は3月23日告示、投票日は4月17日だった。立候補の締め切り日、4月2日に橋本勝という人物が選挙管理委員会に現れる。

 彼は立候補に必要な書類はそろえていたものの、選挙公報の原稿を用意していなかった。

 そこでその場で職員の前で筆を取り出して、さらさらと原稿を作成した。達筆すぎて読み取りづらいものだったが、次のようなことが書かれていた。

「政経パトロールプレス社々長 橋本勝 58歳」

 政策として「愛情都政」を訴えており、「23区」を「市」に格上げすることを掲げているあたりはまだ理解できるのだが、その先がすごかった。

「青少年非行防止のため女の人造人間を数万体造って(略)青少年のエネルギーの発散場所を造ってやる」

 無茶苦茶な構想なのだが、橋本氏は真剣だった。当時、「週刊新潮」が彼にインタビューをしている。それによると、橋本氏は青少年の性のはけ口を非常に憂慮しているようで、その解決策が「女性型人造人間」なのだという。そして名前は明かせないが、ある技術者に1体20万円で作れると言われた、と。ちなみに当時の国家公務員大卒総合職の初任給が1万7千円ほどなので、いかにこの人形が高価なのかがわかる。