「本部長の犯罪隠蔽」告発で揺れる鹿児島県警の愚挙 批判メディアへの強制捜査、心臓疾患を無視した取り調べ

AI要約

元警察官が警察内部情報を漏洩し、県警が情報源のメディアを強制捜査。メディアは性的暴行事件を追及し、警察の捜査を批判していた。

被害女性からの告訴を拒否したり、事件捜査の不正が疑われる中、ネットメディアは内部文書を公開し、警察を告発。警察は情報漏洩を認識し、犯人捜しを開始。

ネットメディア代表は警察から身の危険を感じ、警察内部の悪しき体質に対する懸念を示す。

「本部長の犯罪隠蔽」告発で揺れる鹿児島県警の愚挙 批判メディアへの強制捜査、心臓疾患を無視した取り調べ

 警察内部の情報を漏らしたとして逮捕された鹿児島県警の元警視正が「犯罪行為を県警本部長が隠蔽しようとした」と告発して騒然となっているが、この事件ではもう一つ大きな問題がある。内部情報が漏れた先と疑って、警察批判記事を発信していたメディアを県警が家宅捜索したことだ。メディアを強制捜査して情報源を探るとは、この国の警察はどうなってしまったのか。

 福岡県を本拠にするネットメディア「ハンター」は2022年から、鹿児島県内で発生した強制性交事件を報じ始めた。県内の女性が21年9月に、鹿児島県医師会の元職員から性的な暴行を受けたという事件だった。

 ハンターの記事によると、元職員は「謝罪文」を被害女性に送り、当初は事件を認めていた。だが、県医師会が「同意の上での性交だった」などと主張したため、ハンターは県医師会への批判を発信。警察が被害女性からの告訴状の受理をいったん拒んだことや、管轄が違う鹿児島中央署が告訴状を受理し、医師会元職員の父親がその鹿児島中央署の警察官であることがわかってくると、ハンターの追及の矛先は、県警の捜査に向かい、

「強制性交が疑われる事件の実相が、現職の幹部警察官と身内を庇う警察の悪しき体質によって捻じ曲げられている」

 などと批判を続けた。

 その中で、23年10月、ハンターは県警の内部文書である「告訴・告発事件処理簿一覧表」の一部を黒塗りにしてニュースサイトに掲載し、不当捜査の証拠であると主張を展開した。

 県警はこのハンターの記事を見て、掲載された「一覧表」は県警が作成したものだと気づき、個人情報が漏洩したとして個人情報保護委員会に報告した。同時に、情報を漏らした「犯人捜し」を始めた。

■ハンター代表から「家宅捜索が入った」と電話

 今年3月12日、ハンター代表の中願寺純則氏(64)から、筆者のもとに電話があった。

「鹿児島県警が騒がしい。私の身が危ないかもしれない」

 中願寺氏の声は切迫していた。