「カルチャー帝国」築く高級ブランドのしたたかさ ルイ・ヴィトンの「衝撃人事」が示す異変とは?

AI要約

ラグジュアリー業界において、2022年頃から注目されるようになった「クワイエット・ラグジュアリー」と呼ばれる潮流について紹介されています。ブランドロゴを抑えめにし、上質で控えめなデザインに焦点が当てられるようになった背景や理由、サステナビリティーの価値観が重要視されるようになった理由が述べられています。

ファッション業界における「ロゴ崇拝」の疑問や問題点、それに対するクワイエット・ラグジュアリーの対抗策としての注目度の高まり、ブランドの文化的影響力などに関する情報がまとめられています。

持続可能な価値観やステルスウェルスへの関心が高まる中で、上質で控えめな服への需要が高まり、知る人ぞ知るブランドが注目を集める機運が高まっていることが述べられています。

「カルチャー帝国」築く高級ブランドのしたたかさ ルイ・ヴィトンの「衝撃人事」が示す異変とは?

 時代の波に敏感なラグジュアリー業界では、2022年頃から「クワイエット・ラグジュアリー」(静かな贅沢)と呼ばれる潮流が到来した。ブランドロゴを過剰に誇示することをやめ、上質で控えめなデザインに注目が集まる中、「服そのもの」の存在感が以前よりも小さくなった。

 そこで、各ファッションブランドは映画や音楽などの文化、エンターテインメントとの結びつきを強め、ブランドの文化的影響力を拡大させようとしている。ファッション業界で起きている「異変」を見ていこう。

■ロゴ崇拝に疑問を呈したクワイエット・ラグジュアリー

 ファッションブランドは、約2カ月から半年に1度コレクション(商品ラインナップ)をがらりと変えて「新しさ」を提案することで、需要を喚起してきた。

 しかしこうした慣習が疑問視されるようになった。例えば先進国から、使われなくなった古着や売れない新品の衣料品が、大量にアフリカに輸出されていることをご存じだろうか。

 処理しきれない衣料品がごみ山となり、環境破壊につながっているという批判を受けている。

 また戦争や自然災害で苦しむ人が増えている今、話題先行で熱狂をあおるコラボ製品やブランドロゴを誇示する「ロゴマニア」と呼ばれるスタイルはもはや「鈍感」と見なされ、息をひそめた。

 そんなムードにサステナビリティーという価値観が加わり、上質で控えめな服に脚光が当たるようになった。クワイエット・ラグジュアリーが注目されるようになったのだ。

■品質も価格も高い「知る人ぞ知る」ブランド

 コロナ禍前の「ロゴ崇拝」の喧騒をいったんリセットしたこの潮流は、2022年頃から活発に話題に上り、2023年秋冬コレクションを席巻した。

 例えば、高いテーラリング(仕立て)技術を上質な素材に落としこんだウェアを展開するザ・ロウや、職人技術を尊重し、気負わぬ贅沢感を漂わせるブルネロ・クチネリといった、品質も価格も高い「知る人ぞ知る」ブランドが注目を浴びた。

 とはいえ、ブランドロゴをひけらかさないクワイエット・ラグジュアリーは本来、一過性のトレンドというわけではない。

 保守富裕層が大衆からの反感を避けて目立たないようにする、ステルスウェルス(隠れた豊かさ)と呼ばれて連綿と継承されているスタイルでもある。このテイストは、今後も続いていくだろう。