空飛ぶクルマ最前線 電動化が実現する「空の移動革命」 静粛性やコストに利点、都市で活躍

AI要約

「空飛ぶクルマ」が実用化の段階に入り、次世代のモビリティーとして注目されている。垂直に離着陸し、都市部での活用が期待されている。

電動化技術とドローン技術の進展により、VTOL機の開発が加速している。小型VTOL機は航続距離を確保しやすく、都市型航空交通の一翼を担う。

ドローン技術の急速な普及や社会への活用拡大が、VTOLの発展を後押ししている。インフラモニタリングや物流での活用が期待されている。

空飛ぶクルマ最前線 電動化が実現する「空の移動革命」 静粛性やコストに利点、都市で活躍

 夢の乗り物であった「空飛ぶクルマ」がいよいよ実用化の段階に入ってきた。五輪や万博でのお披露目も間近だ。

■垂直に離着陸、街中で静かに降りる

「空飛ぶクルマ」が、次世代のモビリティーとして世界各地で急速に関心を集めている。欧米では、「eVTOL(イー・ブイトール)(electric Vertical Take-off and Landing、電動垂直離着陸機)」の名称で知られる。その名の通り、電気を動力として、垂直に離着陸する点に特徴がある乗り物だ。空陸両用車ではないため、道路を走行することはなく、航空法が適用される航空機に分類される。

 eVTOLは既存のヘリコプターと比較してより静音性に優れ、また機体価格やメンテナンスコストが安いため、100~150キロメートル圏内の空の旅をよりリーズナブルな価格で提供できる(表)。垂直に離着陸するため、街中に降りることができ、まずは都市部での活用が期待されている。海外では「フライングカー」ではなく、「エアタクシー」や「Urban Air Mobility(都市型航空交通)」とも呼ばれるのはそのためだ。

■ドローン技術も後押し

 実は、VTOL機は、1950年代から90年代にかけて、NASA(米航空宇宙局)や米軍などで、盛んに研究が行われた。しかし、当時の技術では内燃機関や複雑な動力伝達機構を必要とするほか、騒音も大きく、一部の軍用機を除き、開発が進まなかった経緯がある。

 しかし、2000年代以降の電動化技術の進展で、流れが一気に変わった。米テスラの登場により電気自動車(EV)が身近なものになり、陸の電動化が進む中で、その流れが今度は空に向かい始めたのだ。空に浮かべる分、大きなエネルギーを必要とするため、大型の航空機の電動化はまだ難しいが、小型のVTOL機であれば、ある程度の航続距離を確保することができる。

 この流れを加速させたもう一つの要因が、ドローン技術の進展だ。ホビー用のドローンが2010年に発売されて以来、ドローンは急速に社会に普及し、人手不足に苦しむ日本ではビルや橋りょうなどのインフラのモニタリングや物流のラストワンマイル配送での活用が広がることが期待されている。