亡き祖母の預金1000万円を叔父が勝手に自分名義にしていた…「母は相続をあきらめるしかないのか?」弁護士が解説

AI要約

祖母の預金を叔父が自分名義にしてしまった場合、母や叔母が相続する方法について解説。

叔父が勝手に引き出した預金については、叔父に返還請求権や損害賠償請求権が生前に発生しており、相続することが可能。

銀行に必要な手続きを行い、叔父の無断引き出しを証明することで、母や叔母が相続できる可能性がある。

亡き祖母の預金1000万円を叔父が勝手に自分名義にしていた…「母は相続をあきらめるしかないのか?」弁護士が解説

 亡くなった祖母の預金を叔父が勝手に自分名義にしていたことが発覚。この預金を母が相続するにはどうすればいいのだろうか。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。

【質問】

 半年前に祖母が亡くなりました。相続人は、私の母・叔父・叔母の3人です。祖母には預金が1000万円ほどあったのですが、祖母の生前、叔父が勝手に自分の名義にしてしまいました。

 その場合、母と叔母は相続することはできないのでしょうか。叔父の預金が祖母のお金だと証明し、母と叔母が相続する方法があれば教えてください。(島根県・48才・会社員)

【回答】

「祖母Aの預貯金をその生前に叔父Bが自分名義にした」ということは、「銀行から祖母Aの預金を引き出して叔父B名義の口座に入金した」のだと思います。

 相続したくても預金が残っていなければ相続できませんが、叔父Bによる預金の引き出しが無効であれば、まだ銀行に預金が残っていることになります。

 ここでまず問題になるのは、名義人でないBに対するA名義の預金の払い戻しの効力です。BがAから手続きを委任されていれば有効ですが、そうでない場合を前提に考えます。

 預金は通帳やキャッシュカードがあって暗証番号を知っていればATMで引き出せますが、高額は無理です。1000万円であれば、窓口で通帳を提出し、届出印鑑や暗証番号を使って引き出したものと思われますが、払い戻しを受ける権利のない者への預金の支払いは無効です。

 そこで、銀行を相手に預金の相続人として支払いを求める方法が考えられます。ところが、民法では「受領権者としての外観を有するもの(債権の準占有者)に対してした弁済」は、弁済者(この場合、銀行)が善意無過失だと有効になるとしています。

 祖母Aと叔父Bでは性別も違い、別人であることは明らかです。しかし、そのような場合でも、厳重保管が本来期待される通帳や届出印鑑を持参して預金の払い戻しを求めた人物であれば、本人から手続きを頼まれるなどしている蓋然性が高いので、叔父Bの説明などに不審な点がなければ無過失と解される場合が少なくありません。

 次に、叔父Bへの払い戻しが有効だとすれば、祖母Aは叔父Bに対して、勝手に引き出したお金について不当利得返還請求権または損害賠償請求権を生前に取得しています。この権利は相続財産です。あなたの母親と叔母は3分の1ずつ相続しているので、叔父Bに対して支払いを直接請求できます。

 預金の払い戻しの経緯は、銀行に請求すれば開示されます。ただし、引き出しが多数回あった場合には、どれが叔父Bの無断引き出しかについて判断する必要があります。叔父Bが否定しても、払い戻しの際に作成された伝票などから特定することも可能ですから、弁護士に相談してください。

【プロフィール】

竹下正己/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座・B型

※女性セブン2024年6月6日号