手本は世界的ブランドのルイ・ヴィトンやディオール 日本のモノづくりを支える中小製造業へのヒントがここに

AI要約

由紀精密は中小企業の強みを活かし、全国の優れた製造業を結集することで技術集団を形成しようとしている。

大坪正人はフランスのLVMHグループを参考に、ものづくり企業をホールディングス化して業務の合理化を図っている。

ホールディングス化によりバックオフィス業務の負担を軽減し、効率化を図ることが目指されている。

手本は世界的ブランドのルイ・ヴィトンやディオール 日本のモノづくりを支える中小製造業へのヒントがここに

日本の会社の99%以上は中小企業。そのことが日本の生産性が低い原因になっていると批判する人も多いなかで、金属部品の切削加工メーカー・由紀精密(神奈川県茅ヶ崎市)の大坪正人・代表取締役は、中小企業だからこその強みがあると言います。

優れた要素技術を持つ全国の中小製造業をたばねてホールディングス化することで、失われつつある日本のものづくりを支える“技術集団”を作れないか――。

そう考えた大坪さんがイメージしたのは、ルイ・ヴィトンなど世界的ブランドが集まったフランスのラグジュアリー企業「LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)」グループでした。

【大坪正人(おおつぼ・まさと】

1975年神奈川県生まれ。

1998年東京大学工学部産業機械工学科卒業。2000年東京大学大学院工学系研究科産業機械工学専攻修了。

同年、3次元プリンターサービスのインクス(現ソライズ)に入社。高速金型部門で開発を担当し、世界最高速で金型を作る工場を立ち上げる。

06年、祖父が創業した由紀精密に常務取締役として入社。13年代表取締役社長に就任(現在は代表取締役)。

経営危機に陥っていた由紀精密を、電気電子業界から航空宇宙業界や医療関連業界にビジネス転換し、V字回復を実現した。

17年10月由紀ホールディングスを設立し、代表取締役社長に就任(現職)。

「由紀精密での経験上、やっぱりきついんです。中小企業は、いろいろな機能が足りない。ひとつの会社でやろうとしても苦しいことがたくさんあるんです」

2017年10月、倒産寸前だった家業の由紀精密を10年かけて軌道に乗せた大坪さんは、次のステップへ進むことを決めました。由紀精密を含むものづくり企業をグループ化し、ホールディング・カンパニーを設立することです。

会社経営には「製品を作って販売する」という仕事以外にも、たくさんの業務があります。財務、総務、IT化、企画広報、採用、人材育成……こういったバックオフィスの仕事を20~30人規模の中小企業ですべて切り盛りすることは、大きな負担です。ホールディングス化すれば、それらの業務を補い合いながら合理化できると考えたのです。