プライベートクレジット幹部、年収100万ドルに不満-新興企業へ大脱走

AI要約

アントワーヌ・ゴスランメルキュリ氏が急成長した米資産運用会社ベアリングスで幹部入りした経緯。

プライベートクレジット市場でのベアリングスの地位と、GPF部門の古株たちが求めていたチャンス。

22人の社員が移籍し、騒動が起きた理由や現在の混乱状況。

プライベートクレジット幹部、年収100万ドルに不満-新興企業へ大脱走

(ブルームバーグ): アントワーヌ・ゴスランメルキュリ氏は、2021年に米資産運用会社ベアリングスに移籍したとき、これほど早く自分が幹部の仲間入りをするとは思っていなかったかもしれない。しかし、今年3月のある週末の間に、中堅社員だった同氏は、ロンドンのしゃれたオフィスで勤務するチームに残された最上級社員の1人になっていた。

活況を呈する1兆7000億ドル(約267兆円)規模のプライベートクレジット市場で頭角を現したい金融業者にとって、ベアリングスは格好の標的だった。ベアリングスのグローバル・プライベート・ファイナンス(GPF)部門は、特に欧州では長い間エリート中のエリートだった。1992年までさかのぼる企業向けローン提供の歴史、ディールメーキングのランキングでの高い地位、5000億ドルの資産を運用する親会社を誇る。

しかし、「GPF」の古株の多くにとって、その輝きはひどくあせつつあった。彼らが望んでいたのは、もっと稼ぐチャンスだった。できればもっと格段に稼ぐ機会だ。

比較的穏やかなプライベートクレジットの世界を驚愕(きょうがく)させた3月のこの騒動では、22人のベアリングス社員が一斉に退社し、オーストラリアの不動産起業家ポール・ウェイトマン氏が率いるコリンシア・グローバル・マネジメントという無名のスタートアップに移籍した。

この騒動の直前に取締役に昇進していたゴスランメルキュリ氏はとどまった。しかし、同業者の羨望(せんぼう)の的だったGPFのビジネスは混乱したままになっている。

「18年間にわたりクレジット市場で採用活動をしてきたが、このような動きは見たことがない」と、金融ヘッドハンティング会社RCQアソシエーツの創業ディレクター、エドワード・ジェームズ氏は述べた。

ウェイトマン氏や他の事情に詳しい関係者によると、GPFからの離反者たちはベアリングスでは提供されていなかった自社株の付与という約束に心が動いたようだ。一部の社員は年間100万ドル以上を稼いでいたが、それはアークモント・アセット・マネジメントのような小規模なブティック型証券会社で自社株を手にした上級社員がそれを現金化して得た数千万ドルには及ばない。