訪日客「オーバーツーリズム」どうする?…渋滞解消へ観光バス分散システム・人手要らずのAI案内

AI要約

新型コロナウイルス禍で落ち込んでいたインバウンド(訪日外国人客)が回復する中、九州でもコロナ禍前の水準に戻りつつある。

オーバーツーリズム(観光公害)などの課題も深刻化し、自治体や宿泊施設は、混雑解消、業務負担の軽減などへの対策を進めている。

福岡市では訪日外国人客を受け入れる準備として、観光バスの分散化システムや忘れ物の管理に取り組んでいる。

 新型コロナウイルス禍で落ち込んでいたインバウンド(訪日外国人客)が回復する中、九州でもコロナ禍前の水準に戻りつつある。一方、オーバーツーリズム(観光公害)などの課題も深刻化し、自治体や宿泊施設は、混雑解消、業務負担の軽減などへの対策を進めている。(小川晶弘)

 5月16日正午、福岡市博多区の博多港岸壁に、中国・上海からのクルーズ船(全長324メートル、定員5246人)が着岸した。

 訪日外国人客を迎え入れる同港中央ふ頭クルーズセンターの駐車場では、観光バス約100台が並んだ。市の委託業者が運転手に、駐車許可証と、路上駐車の自粛を求める注意書き、位置情報を確認できるスマートフォンを渡し、「お帰りの際に返却をお願いします」と呼びかけた。

 市は2016年から、訪日外国人客を乗せたバスの分散化を図ろうと、行き先を共有できるシステム「クルーズNAVI」の運用を開始した。同システムでは、前日までに登録すると、観光施設の駐車場を予約できる。予約数の上限に達した駐車場を選ぶことはできないため、他に空いている駐車場や時間帯を選ぶことになる。

 市は、観光バスの位置情報を確認し、時間や場所が予定と異なれば、旅行ツアーの手配業者に連絡。経緯を尋ね、変更する場合は事前に連絡するよう求める。

 システム導入前、市内では、同じ時間帯にバスが特定の商業施設に集中。駐車場に入れない車が列をなし、周辺道路で渋滞が発生するなど混乱を招いていた。市クルーズ課の冨永誠治課長は「バスの混雑を抑え、時間と場所の分散化を実現できている」と手応えを感じている。

 日本政府観光局が発表した単月の訪日外国人客数は、24年3月にコロナ禍前を上回る過去最高の308万人(推計値)となった。九州運輸局によると、3月の九州への外国人入国者数(永住者も含む)は37万1057人(速報値)で、40万人を超えたコロナ禍前の水準に戻りつつある。

 訪日外国人客数の増加に伴い、忘れ物も増加。福岡県警福岡空港署には昨年、福岡空港などから2万8000件を超える拾得物があり、コロナ禍前の19年の約3万件に迫っているという。