ソニー・ホンダのEV「AFEELA」に鳴りはじめたカウントダウン。ホンダ出身・水野会長が語る「自動車業界の危機感」

AI要約

ソニー・ホンダが異例のスピードでEV開発を進めている様子を水野泰秀氏が語る。

新しいEV「AFEELA」の開発や2025年のアメリカでの受注開始を目指す取り組み。

水野氏が語る量産モデルへのアプローチやソニー・ホンダのモノ作りの難しさについて。

ソニー・ホンダのEV「AFEELA」に鳴りはじめたカウントダウン。ホンダ出身・水野会長が語る「自動車業界の危機感」

「(車両開発の)このスピード感は、従来の自動車会社からするとあり得ない」

ソニー・ホンダモビリティ会長 兼 CEOの水野泰秀氏は単独インタビューに対して、当初の開発速度を苦笑しながらこう語る。2022年10月の設立会見から、3カ月後の2023年1月には国際イベントでプロトタイプを展示する ── このスピード感は笑うしかなかったと言わんばかりだ。

同社は現在、バッテリーEV(EV)である「AFEELA(アフィーラ)」を開発中だ。2025年中にアメリカで受注を開始すると公表している。

ソニーとホンダがジョイントベンチャーを設立し、まったく新しいEVを開発するというプロジェクトも、2024年に入って「発売へのカウントダウン」が始まった感がある。受注をオンスケジュールで開始するなら、2024年度中にも最終版に近いプロトタイプが展示される可能性が視野に入るからだ。

実際のところ、ソニー・ホンダモビリティ(以下ソニー・ホンダ)におけるEV開発と組織づくりはどのように進んでいるのか。

今回、ホンダ側とソニー側、それぞれのトップの単独インタビューを通して、見え始めた開発の手触りを探った。

(聞き手・Business Insider Japan編集長 伊藤有、西田宗千佳 文・西田宗千佳)

水野会長は「2025年の受注に向けて順調に進んでいる。来年にはほぼ量産モデルをお見せできるだろう」と開発状況を説明する。

ソニー・ホンダの合弁契約が交わされたのは2022年6月、正式に発足したのは同9月のことだ。一方、AFEELAの最初のプロトタイプが公開されたのは2023年1月。発足から公開までは半年もかかっていない。

水野会長は、本田技研工業(ホンダ)で中国本部長や四輪事業本部長といった要職を歴任し、ソニー・ホンダが立ち上がる直前にはホンダの専務執行役員を務めた人物。国内外の自動車業界は熟知している。

自動車の開発には時間がかかる。それゆえに、開発初期に実車に近いデザインを発表すると、発売時には飽きられてしまう可能性もある。実際、ホンダも過去、国産スーパーカーと呼ばれた「NSX」のデザインを早期に公開した結果、発売時には新奇性が薄れた……という反省があるという。

「でも現在は、発売3年前にデザインを見せ、そこから徐々に進化していくのもアリだな、と考えるようになりました。

一番やってはいけないパターンは、“プロトタイプと量産で全く違うものをお見せすること”。極端なことを言うと、数々の制約が生まれる量産モデルがつまらない形になるのは避けたかった。量産に向けて近づいてはいるものの、違和感なくコンセプトを保てています」

水野会長が語るこのエピソード自体、ソニーとホンダが一体になってモノ作りをすることの難しさを示している。