「脱毛で帽子を脱げないがん患者もいる」創業112年の老舗4代目が立ち上げたブランド「当事者としての」挑戦

AI要約

がん患者向けの帽子ブランドを立ち上げた帽子メーカーの4代目・佐藤麻季子さん。ブランドのきっかけや自身のがん宣告との関連、ブランド立ち上げに対する思いを語る。

佐藤さんは病院の売店向けにOEMを手がけていたが、がん患者向けのおしゃれな帽子がないことに違和感を感じ、独自ブランドを立ち上げる決意を固める。

自身もがん宣告を受けたが、ブランド立ち上げの決意は揺らがず、病室で準備を進める。がん経験を通じて、患者の気持ちや日常生活の葛藤を理解するようになる。

「脱毛で帽子を脱げないがん患者もいる」創業112年の老舗4代目が立ち上げたブランド「当事者としての」挑戦

2022年にがん患者向けのブランドを立ち上げた、老舗帽子メーカーの4代目・佐藤麻季子さん。ブランドをつくった思い、そして自身もがんの宣告を受けたおひとりとして帽子にかける願いを聞きました。(全2回中の2回)

■がん患者向けの帽子ブランドを立ち上げ

── 2022年にがん患者向けの帽子ブランド「シャンヴルマキ」を立ち上げたきっかけを教えてください。

佐藤さん:もともと弊社では、病院の売店で売られている、がん患者の方向けのニット帽子のOEMを手がけていました。

でも、実際に街でそのような帽子を被っている方たちを見かけると、洋服はおしゃれをしていても、帽子だけが合っていないという違和感を持っていました 。がん患者の方もファッションを楽しみながら被れる帽子がないんですよね。ないならば弊社で作りたい、と考えました。そこで、2022年1月の仕事始めの新年の挨拶の時、社員の前で、がん患者さんに向けた帽子ブランドの立ち上げを宣言しました。

── しかし、その1か月後、ご自身のがんを宣告されました。ブランド立ち上げの決意が揺らぐことはありませんでしたか。

佐藤さん:もちろん、落ち込みましたし、今まで感じたことのないような恐怖を感じました。でも、がん患者さん向けのブランドを立ち上げると宣言していたことが、逆に私の力になってくれました。自分の病気のことだけを考えていると、不安と恐怖しか心に浮かんできません。行き場のないこの気持ちを人のために動くことで、なんとか力に変えたいという思いがありました。

病室でもずっとベッドの上で、資金調達やデザインなど、立ち上げの準備をしていました。

── ご自身ががんを経験されたことで、ブランド作りに影響はありましたか。

佐藤さん:私は脱毛を経験しませんでしたが、がんを宣告された人の気持ちがわかったことは大きかったと思います。

今、経過観察を続けて2年になります。定期的に通院していますが、こんなにたくさんの方ががんと向き合っていること、そして、心の中では恐怖や失望を抱えていても、日常生活を送らなければならない葛藤を理解できるようになりました。