ヤマトHD、共同輸送のマッチング行う新会社を設立…業界全体で積載率の向上目指す

AI要約

ヤマトホールディングス(HD)は共同輸送に向けて新会社を設立し、トラックの積載率向上を目指す。主な取り組みや課題、効果について紹介。

運転手不足が深刻化する中、「物流2024年問題」を契機に、積載率改善の必要性が高まっている。

業界全体で共同輸送の取り組みが広がりつつあり、効率化やコスト削減が期待されている。

 ヤマトホールディングス(HD)は21日、効率的な共同輸送に向けて、荷主と物流会社のマッチングを行う新会社を設立したと発表した。トラックの積載率を向上させることで配送の効率化を目指す。運転手不足が深刻化する「物流2024年問題」を契機に、業界で長年の課題だった低い積載率を改善する取り組みが目立ってきた。

 新会社は「サステナブル・シェアード・トランスポート(SST)」。オンライン上に専用のプラットフォーム(基盤)を設け、メーカーなどの出荷計画とトラック輸送を行う物流会社の運行計画を集約する。荷主は計画を見ながら空きスペースを予約できるようになる。今冬に運用を始める。

 SSTの高野茂幸社長は「あらゆる企業が危機感を持っている。一緒に物流をつくっていきたい」と述べた。今年度内に他の物流会社や荷主からも出資を募る方針だ。

 ヤマトや他の物流会社が東京・名古屋・大阪間を定時運行する。当初は1日40便、25年度末には80便の運行を目指す。荷主によって荷物の形状や大きさが異なり、共同輸送の効率化を阻害してきた点を踏まえ、荷物を載せるパレットの大きさを統一するなど工夫する。

 長距離輸送の場合、目的地まで荷物を運んだ後の復路が空になりがちで、国内のトラック積載率は平均4割程度にとどまっていた。今回の取り組みで7割への引き上げを目指す。

 背景には運転手不足で輸送力が低下することで、これまでの輸送網が維持できなくなることへの危機感がある。共同輸送が広がればトラック1台あたりの収益向上や運転手の負担軽減につながる。荷主側にとっても、自前のトラックを低い積載率で走らせるより、共同輸送に参加した方が運賃などのコスト削減につながる可能性がある。

 ソニーグループと日立製作所は今年、北海道で製品の共同輸送に乗り出した。日本郵便と西濃運輸もトラックの長距離路線で共同輸送を本格導入する方針だ。

 トラック運送業界は99%を中小企業が占める。すそ野の広い連携が実現しなければ、輸送力を確保したい企業連合が中小を取り合う構図に陥りかねない。各社の連携や規格の共通化がどこまで広がるかが、持続可能な物流のカギを握りそうだ。