実はスゴ技「旅客機のピタリ駐機」 コックピットから地面…見えません! どうやって実現しているのか

AI要約

空港で見る旅客機の駐機方法には、マーシャリングやVDGSなどさまざまなサポートシステムが存在する。

マーシャリングでは専門の地上支援スタッフがパイロットに停止位置を指示し、ICAOの基準に従って指示を行う。

一部の旅客機ではVDGSがうまく機能せず、マーシャラーによる誘導が行われた例もある。

実はスゴ技「旅客機のピタリ駐機」 コックピットから地面…見えません! どうやって実現しているのか

 空港で見る旅客機は、ほとんどが駐機場の所定の停止位置にピタリと停まっています。実は駐機場所はモデルごとに停止位置が定められ、一般的に黄色い線でそれが記されていますが、そこにピタッと停めるため、さまざまなサポートシステムが存在します。

 正確な駐機は、もちろんパイロットの技術もありますが、旅客機のコックピットは死角が多く、停止位置はほぼ見えていないのが実情です。そこで円滑に駐機できるよう、空港側にもそれを助ける工夫が備わっています。

 一般的な方法のひとつに、マーシャラーという地上支援スタッフが、旅客機に対して停止位置を指示する方法「マーシャリング」があります。

 旅客機が駐機するとき、停止位置の延長線側に専用車「マーシャリングカー」などを停め、そこから、マーシャラーがしゃもじのようなパドルや、サイリウムのようなマーシャリングライトを使って、パイロットに対しスピードや左右のずれ、停止位置などを指示します。

 マーシャラーは地上支援スタッフのなかでも、3か月から4か月の実技訓練を受けたうえで、さらに社内試験などに合格することが必要な、プロフェッショナル職とされています。

 パイロットへ指示を出す身体の動かし方は、ICAO(国際民間航空機関)が国際基準を定められており、たとえば直進の合図は、肩から水平に伸ばした両腕の肘先を内側に曲げ伸ばしする、といったように、ほぼ世界共通のものです。なかには動きに細かい規定がされているものもあるそうで、それを旅客機の状況を見ながら繰り出すには、パイロットと同様、熟練の技術が必要となります。

 そして日本では近年、駐機場を多数備える成田空港や羽田空港、中部空港などの一部エリアにおいて、このマーシャリングを機械にさせる動きも進んでいます。その代表的なものが「VDGS(ビジュアル・ドッキング・ガイダンス・システム、駐機位置指示灯)」というもので、赤外線などを用いて旅客機の位置を特定し、電光表示部に所定の位置へ停止するまでの指示を出し、誘導するものです。

 ちなみにこの「VDGS」が設置されている駐機スポットでも、一部の旅客機では反応しづらいことから、かつてはマーシャラーが誘導していたこともあったようです。

 たとえば九州に本拠を構える航空会社、スターフライヤーの旅客機がそうでした。機体の塗装が真っ黒であることから、赤外線による位置特定がうまく機能しなかったといいます。同社によるとその後、空港側のVDGSの改修や、機体の塗装を塗り直したことなどで、徐々に反応が良くなったことにより、現在はVDGSを用いた駐機が一般的に行われているそうです。