EV向け「自動車保険」が次々と登場しているワケ 保険業界が直面する課題とは

AI要約

電気自動車(EV)の普及が世界中で加速しており、2023年には世界のEV販売台数が1000万台を超える見通し。

EV特有の補償内容が必要とされ、例えば電池の補償や歩行者との事故に対する補償などが重要視されている。

保険会社はEVの特性を考慮し、専用の保険商品を提供している。

EV向け「自動車保険」が次々と登場しているワケ 保険業界が直面する課題とは

 近年、電気自動車(EV)の普及が世界中で加速している――。

 国際エネルギー機関(IEA)のデータによると、2023年には世界のEV販売台数が1000万台を突破。加えて日本自動車販売協会連合会が報告したデータに基づくと、2023年度における日本国内のEV売り上げ台数は約4万台にのぼったという。政府の補助金や環境への関心の高まりにより、EVの需要が急増。このような背景から、国内外問わず、EVの特性に合わせた保険商品の必要性が高まっている。

 例えばアクサ損保は、EVとプラグインハイブリッド車(PHV)の普及を促進するため、EV、PHVの保険料金を1500円割り引く「EV割引」のほかに、

「EV充電設備補償特約」

を新設。ちなみにこの特約は、自宅にある充電設備が故障や盗難、事故などの損害が発生した場合、設備への補償を提供。これが、EV所有者にとって安心材料となっている。

 このようにEVの普及が進むなか、それにともない新たな保険商品が登場しているのだ。ではなぜ、従来の自動車保険ではなく、EV向けの自動車保険をラインアップさせる必要があるのか、本記事でひもといていきたい。

 そもそもEVは内燃機関を持たず、電池で駆動するため、従来のガソリン車とは異なる特性を持っている。そのため、保険業界はEVの特性やデメリットを補うためにも、EV専用の補償内容を提供する必要があるのだ。その理由は次に記載する。

 まず、EVの最大の特徴である電池は、車両の心臓部ともいえる存在である。電池の劣化や故障は車両全体のパフォーマンスに大きく影響するため、保険では電池の補償が重要だ。従来のガソリン車と比べ、EVの電池は非常に高額であり、交換や修理に多額の費用がかかることが多い。このため、EV向けの自動車保険では電池の損傷や劣化に対する補償が手厚く設定されることが求められている。

 また、EVは静音性が高く、振動が少ないため、運転中の快適性が向上するが、それにともなう

「新たなリスク」

も存在する。例えば、歩行者が車の接近に気付かない可能性があり、事故のリスクが増加する。これに対応するため、保険商品には歩行者との事故に対する補償が含まれていることが求められている。

 さらに、EVはエンジン部分のメンテナンスが不要であるが、代わりにモーターや電力系統の点検・修理が必要だ。このため、保険商品にはモーターや電力系統に関する補償が含まれていることが重要となる。

 加えて、EVは充電インフラの整備状況に依存する面が強いため、充電中のトラブルや充電設備の故障などに対する補償も求められる。長距離の移動においては、充電スタンドの利用が必要不可欠であり、その利用中に発生するトラブルや損害に対応する保険も必要だといえる。

 このように、EV向け自動車保険は、一般的なガソリン車向けの保険とは異なる補償内容が求められる。そのため、保険会社はEVの特性を考慮し、専用の保険商品を提供する必要があるのだ。