勝地涼さんの“旧車”への思いとは? クルマに対する考え方、選び方にも迫る

AI要約

勝地涼さんが憧れるクルマについて語る。

マスタングや他の古いクルマに対する興味や考えを明かす。

クラシックカー趣味に興味を持っている様子が伺える。

勝地涼さんの“旧車”への思いとは? クルマに対する考え方、選び方にも迫る

愛車を見せてもらえば、その人の人生が見えてくる。気になる人のクルマに隠されたエピソードをたずねるシリーズ第43回。後編は、俳優の勝地涼さんが、今、気になっているクルマ、憧れのクルマについて語る!

地響きのような音が次第に近づいて来たかと思うと、1965年型のフォード「マスタング」が悠然と姿を現した。

ぶ厚く太い音の発生源は、排気量5.0リッターのV型8気筒ガソリン・エンジン。バラバラと少し不揃いな音には、最新モデルのエンジンにはない迫力と野性味がある。オーナーによると、外観には66年型っぽいカスタマイズを施してあるという。

腕組みをした勝地涼さんは、「これですよ、これ!」と、深くうなずいた。

「父のおかげでクルマが好きになったという話をしましたけれど、最近は役者の先輩から影響を受けています。一時期、このマスタングに乗る人がまわりに増えて、いつかは自分も乗りたいと思っています。先輩方の話では、手間もお金もかかるというので、時間とお金に余裕がある渋いおじさんになって、こういうクルマに乗ったら格好いいだろうなと憧れています」

1964年にデビューした初代マスタングは、コンパクトなサイズにスポーティなルックスを与え、手の届く価格で販売するという戦略で開発されたモデルだ。スペシャリティカーの元祖であり、“ポニーカー”とも呼ばれた。この戦略は大当たりで、販売開始から2年で累計100万台を生産したという。

ちなみにマスタングの企画を手がけたのが、後にフォードとクライスラーの社長を務めることになる伝説のカーガイ、リー・アイアコッカだった。

資料によると、マスタングの全長は4760mm、ホイールベースは2745mm。現行のトヨタ「プリウス」がそれぞれ4600mmと2750mmだから、かなり近い。V8エンジンにはいくつかのチューンがあり、そのなかのひとつは最高出力が290psとあるから、現代の基準に照らしても充分にパワフルだ。

価格はエンジンのチューンによって違うけれど、1970年当時の東京では285万円から345万円で販売されていたと資料にはある。

タマ数はあるのか? 壊れないのか? メインテナンスはどうするのか? などなど、勝地さんはいかにも興味津々といった面持ちで、撮影に立ち会ったオーナーを質問攻めにする。

オーナーによれば、7年ほど前に内外装をオーバーホールしてから、大きな故障はないとのこと。仮に故障が見つかっても、複雑な電子制御やコンピュータが入っていないので、メンテは比較的容易だという。ただしブレーキだけはオリジナルには不安を感じたので、4輪ディスクブレーキに改めたという。

「運転が難しいのかと思っていたら、全然普通に乗れるそうだし、いつかは乗ってみたいという気持ちがさらに強くなりました。ただオーナーによると、アメリカでもこの手のクルマがブームみたいで、日本からどんどんアメリカに持っていかれているそうです。まだ日本にコンディションのいいタマがあるうちに、買ったほうがいいのかな……」

マスタングのほかに興味のある古いクルマを尋ねると、「やっぱり(ポルシェ)『911』の古いタイプですかね……」と、言ってから、少し遠くを見た。

「実は、BMWのカブリオレに乗っていた頃に、一度だけ911を考えたんです。結局、子どもができたのでメルセデスのGLCになったんですけど、いつかは911という気持ちもあります。そう考えると、ほかにも乗りたいクルマがいくつもあるなぁ。仕事仲間が乗っている1970年代のベンツの『SL』も格好いいし、知り合いの演出家が古いランドローバーの『ディフェンダー』に乗っていて、それも趣があります。正直、僕はクルマと運転が好きなだけで、詳しくはないんです。でも、欲しくなるクルマはたくさんあるんですよね」

マスタングのオーナーに「どうぞどうぞ」と、勧められて、勝地さんはマスタングの運転席に腰掛ける。

「このシートのふかふかした感じ、最近のクルマとは全然違う味わいがありますね。インテリアも最高に渋い。やっぱり1台、こういうクルマを持ちたいな……」

オーナーによると、きれいな水色のボデイカラーは、当時のカタログにあったものをできるだけ忠実に再現したものだという。それを聞いた勝地さんは、「こういうクルマって、乗って眺めるだけでなく、手をくわえて完成させる楽しみがあるんですね」と、感心したように語った。

そのいきいきとした表情には、クラシックカー趣味に足を踏み入れてみたいという思いがにじみでている。

1986年生まれ、東京都出身。2000年にドラマ『千晶、もう一度笑って』で俳優デビュー。2005年には映画『亡国のイージス』で日本アカデミー賞新人賞を受賞するなど、俳優としての基盤を固める。テレビドラマや映画にコンスタントに出演し続けながら、舞台でも活躍。今後は、ウーマンリブvol.16「主婦 米田時江の免疫力がアップするコント6本」の上演が控える。

文・サトータケシ 写真・安井宏充(Weekend.) ヘア&メイク・小口あづさ スタイリング・梶原浩敬 編集・稲垣邦康(GQ) 撮影協力・メルセデス ミー 東京