信用取引をしない人も知っておきたい「増担保規制」の仕組み 適用されれば株価は急落の可能性、解除を見据えたトレードも狙い目

AI要約

信用取引とは現金や金融商品を担保として証券会社に預け、証券会社から売買に必要な現金や株式を借りておこなう取引のことだ。

信用取引には、株価を大きく動かす“増担保規制”というしくみがあり、株価が上昇や下落する要因となることが多い。

増担保規制がかかると株価は下落し、規制が解除されるとリバウンドする傾向があるため、投資家にとって重要な情報である。

信用取引をしない人も知っておきたい「増担保規制」の仕組み 適用されれば株価は急落の可能性、解除を見据えたトレードも狙い目

 信用取引とは現金や金融商品を担保として証券会社に預け、証券会社から売買に必要な現金や株式を借りておこなう取引のことだ。信用取引は株価に影響を与えることもあるため、信用取引をしない人にとっても仕組みを知っておくとよい。『世界一楽しい!会社四季報の読み方』などの著書がある個人投資家で株式投資講師・藤川里絵さんが解説するシリーズ「さあ、投資を始めよう!」。第98回は、「信用取引の増担保規制」について。

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 信用取引の基本的なしくみについては、以前紹介しました。信用倍率が1倍を割れている(信用の売り残のほうが買い残より多い)場合は、短期的に株価は上がりやすくなります(詳しくは過去記事へ)。そして、信用取引には、もうひとつ株価を大きく動かす“増担保規制”というしくみがあります。

 東京証券取引所が、6月17日の取引終了後、伊勢化学工業(4107)の信用取引による新規の売り付け及び買い付けにかかる委託保証金率を、翌18日売買分から50%以上とする臨時措置を実施すると発表しました。このニュースによって、17日の終値では3万8550円だった伊勢化学工業の株価は、21日の終値では1万9730円まで下落。4日間でなんと半値近くまで落ち込みました。

 ところが、25日の取引終了後に、26日から臨時措置を解除すると発表されると、株価は急騰。翌日の26日は16.5%の大幅高。その翌日も9.5%の上昇と信じられないほど激しく株価が動いています。

 このように、証券取引所が、信用取引の売買で投資家に要求する担保の割合を通常より引き上げることを“増担保規制”といいます。伊勢化学工業の株価動向が示すように、増担保規制がかかると株価が大きく下落し、その規制が解除されると上昇することが多いため、現物オンリーの人もアンテナを立てておきたい情報です。

 増担保規制が適用されるのは、下記の場合です。

【1】株価の急騰や急落

 特定の銘柄の株価が短期間で大きく上昇したり、逆に大きく下落した場合、信用取引での売買では、投資家が大きな損失を被るリスクが高まります。そのため投資家が損失をカバーできるように担保を多くします。

 伊勢化学工業の場合は、増担保規制が入る前の6日間で、株価が60%近く上昇していました。

【2】取引量の急増

 異常な取引量は、投機的な動きや市場操作の可能性を示すことがあるため、規制を強化することで市場の健全性を保ちます。

【3】市場の不安定性

 市場が全体的に不安定な状態にある場合や、特定のセクターや銘柄に対する不確実性が高まっている場合にも、増担保規制が適用されることがあります。例えば、経済指標の発表や政治的な出来事などが原因で市場全体が不安定になると、増担保規制が行われることがあります。

【4】特定のイベントやニュース

 企業の業績発表や重大なニュース(例:合併・買収の発表、新製品の発売、大規模な不正発覚など)が原因で、株価や取引量に大きな影響を与えると予想される場合にも、増担保規制が導入されることがあります。

 増担保規制がかかると、取引コストが増加するため、新規での買いが入りづらくなります。そのため株価は下落しますが、増担保規制が解除されると、そういったストレスから解放されるため、リバウンドすることが多いものです。そうなったときには解除後の株価上昇をねらう手も悪くありません。