マクラーレン750S 詳細データテスト 荒々しい加速 ダイレクトなハンドリング 失ったしなやかさ

AI要約

マクラーレン720Sは高い評価を受けていたが、アルトゥーラのトラブルを克服し、マクラーレンの未来は明るい。

750Sは競合車種とは異なり、軽量化を重視し性能を追求。重量優先の設計で競合車を凌駕する。

エンジンの出力を30psアップし、コイルスプリングやアダプティブダンパーを調整して走行性能を向上。Senaからカーボンセラミックブレーキを標準採用。

マクラーレン750S 詳細データテスト 荒々しい加速 ダイレクトなハンドリング 失ったしなやかさ

マクラーレン720Sのような高い信頼性と評価を得たスーパーカーは、会社として変革してきたこの数年間のウォーキングではとても心強い存在だったに違いない。しかし今、大胆な技術を用いながら初期にさまざまなトラブルが重なったアルトゥーラが改良を遂げた。マクラーレン・オートモーティブの首脳陣も2022年以降大幅に顔ぶれが変わったが、より安定したように思える。財務改善のため、株主とも折り合いをつけてきた。

ここからは前途洋々だろう。さらなる高級路線の開拓やライフスタイル系モデルのコンセプトはやることリストに残っているが、それらも自信を持って進められる。

いっぽうで、マクラーレンの主流にして傑作モデルの720Sも、次のステップへ進むときが来た。シンプルなカーボンタブのミドシップマシンが、改良を受けたモデルが今回のテスト物件だ。

競合モデルにプラグインハイブリッドが増える中、この750Sは反対の道を選んだ。さらなるパフォーマンスやハンドリングといった走りの魅力を追求するのに、軽さやアジリティ、ダウンフォース、メカニカルグリップ、そして操縦系のフィードバックといった要素を磨き上げる方法を取った。

モデナやサンタアガタのようなハイブリッド化をしないことで、重量増加や複雑化を避けたのである。マクラーレンは、純粋主義的スーパーカーファンや走りにこだわるドライバーへの訴求力をアップし、ライバルに対するアドバンテージを強調しようとしてきたのだ。その作戦は功を奏しているのだろうか。確かめていこう。

マクラーレンによれば750Sは、先代720Sに対し30%の部品を刷新しているという。外観では、エアインテーク内へ落ち窪んだヘッドライト周りの下に、長さを増したフロントスプリッターが備わる。サイドでは、大型化し、数も増したエアインテークが、シルや後輪アーチ周りに設けられた。リアでは、デッキが伸び、ウイングが大型化。中央には、ステンレスのエキゾーストが鎮座する。

このエキゾーストも含め、720Sに対して30kgもの軽量化を実現したという750Sの公称重量。標準仕様の実走状態で1400kgを切り、オプションの選択内容によっては1300kg以下まで引き下げることも可能だという。これは、電動化により1500kgに近づいたフェラーリ296GTBと比べれば、軽さが際立つ。

ちょっと残念だったのは、テスト車が実測1412kgに達していたこと。ガソリン量はタンクの1/3で、重量優先の仕様ではなかったが、軽量化オプションはいくつか装備されていた。それでも、2022年に同じような条件で計測した競合するフェラーリは、1648kgに達したのだが。現在の基準からすれば、十分に軽いスーパーカーだと言える。

油圧系を相互接続し、スタビライザー代わりに用いるプレディクティブシャシーコントロール(PCC)は再調整され、フロントをソフトに、リアをハードにしたコイルスプリング、さらにアダプティブダンパーを組み合わせている。フロントのトレッドは720Sより6mm拡幅され、実質的にフロントのスプリングレートをさらに下げている。ホイールジオメトリーも見直された。電動油圧式パワーステアリングラックはよりクイックになり、さらにパワフルな新型ポンプを採用している。

エンジンルームには、765LTのM840T型から軽量ピストンを受け継いだ4.0LツインターボV8を搭載。ブースト圧を720Sより高め、最高出力は30psアップの750ps、最大トルクは2018年にテストしたアルティメットシリーズのセナと同じ81.6kg-mを発生する。

トランスミッションは7速DCTで、ファイナル比はショートに。エンジン性能向上と合わせて、加速性能アップが見込まれる。

セナ由来のカーボンセラミックブレーキは標準装備だが、スペシャルなディスクやキャリパー、サーボアシストシステムもオプション設定される。テスト車には、これが装備されている。

エンジンとギアボックス、アクスルやステアリングのマウントは720Sより硬いものになり、操縦系のフィードバックを高めている。