ペットボトル3本が1本の傘に生まれ変わる 気候変動を肌で感じた傘メーカーの挑戦

AI要約

ビコーズ代表取締役の渡辺一徳さんが、廃棄ペットボトルをリサイクルした素材を使用した傘を開発するきっかけとその取り組みについて語る。

リペットシリーズの開発に挑戦し、品質維持の難しさや取り組みの過程を紹介。

地球環境に配慮した商品としてだけでなく、品質の高さや環境負荷の削減にも注力するビコーズの取り組み。

ペットボトル3本が1本の傘に生まれ変わる 気候変動を肌で感じた傘メーカーの挑戦

廃棄ペットボトルをリサイクルした素材を使用するなど、サステナブルな傘作りにチャレンジしている傘メーカー、ビコーズ代表取締役の渡辺一徳さん。地球環境に配慮したサステナブルな製品を作ろうと決めたのは、創業以来、毎日のように天気を観察する生活を続けるなかで、ここ数年の気候が以前とは異なることを肌で感じたからだという。開発までの道のりと目指すことを聞いた。(聞き手 SDGs ACTION!編集部・池田美樹)

――廃棄ペットボトルのリサイクル素材を使った傘が好評です。開発を始めたきっかけは何でしたか。

私は傘メーカーを立ち上げて30年になります。この間、天気のことを365日考えており、その変化にはとても敏感です。しかし特にここ数年、突然の豪雨や猛暑など予測不可能な天気の変化が頻繁に起こるようになり、気候変動をひしひしと感じていました。そこで、何らかの形で地球環境の保護に貢献することができないかと考え始めました。

2018年ごろにフランスであったある展示会を訪問した際、環境に配慮した多くの製品に出会い、強いインスピレーションを受けました。

特に印象的だったのは、フランス人の出展者から「他の人がサステナブルじゃないことをしていても、自分がやるべきことをやらない理由にはならない」と言われたことでした。この言葉が強く心に響き、サステナビリティに対する取り組みを進めていく決意をしました。

調べるうちに、大量の廃棄ペットボトルが海に流れ着いてマイクロプラスチックとなり、生態系の破壊や海洋汚染の原因となっていることを知りました。海の環境破壊が進むことも、気候変動の一因です。

そこで、回収不可能なマイクロプラスチックになる前にペットボトルを回収し、そのリサイクル素材を使った商品を開発しようと考えました。こうして誕生したのが「U-DAY」というブランドで、最初の「リペット」シリーズは2021年2月から販売を開始しました。

使用済みのペットボトルを細かく砕いてチップにし、それを糸にして生地を作り、この生地を傘の素材として使用しています。およそ3本のペットボトルが1本の傘に生まれ変わります。

リサイクル素材を使用した商品の開発において、一番の難題は品質の維持です。一般的にリサイクル素材は新素材に比べて品質を保つことが難しく、なかなか製品に使用できるクオリティに達しませんでした。タッグを組んだ素材の開発会社と何度も試作とテストを繰り返し、強度と耐久性を高めて傘に最適な素材を開発しました。

こうした取り組みの結果、「リペット」シリーズは環境に配慮した製品としてだけでなく、その品質の高さからも多くのお客様に支持されています。また、製品のパッケージにも工夫を凝らし、再利用可能な素材を使用することで、さらなる環境負荷の削減を目指しています。