「衰退」してばかりの日本は世界から取り残される「ヤバい現実」

AI要約

将来の人口推計によると、日本は人口減少社会に向かっており、企業も対策を講じる必要がある。

人口減少に対応するためには、企業は成長モデルを転換し、戦略的に組織をスリム化する必要がある。

組織は残すべき事業とやめるべき事業を区別し、集中と特化によって競争力を維持することが生き残りの鍵である。

「衰退」してばかりの日本は世界から取り残される「ヤバい現実」

 国立社会保障・人口問題研究所が最新の将来推計人口を発表し、大きな話題になった。50年後の2070年には総人口が約8700万人、100年後の2120年には5000万人を割るという。

 ただ、多くの人が「人口減少日本で何が起こるのか」を本当の意味では理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。

 ベストセラー『未来の年表 業界大変化』は、製造・金融・自動車・物流・医療などの各業界で起きることを可視化し、人口減少を克服するための方策を明確に示した1冊だ。

 ※本記事は河合雅司『未来の年表 業界大変化』から抜粋・編集したものです。

 量的拡大と決別したならば、次に取り組むべきは、「戦略的に縮む」という成長モデルへの転換である。シェア争いをやめても、単に縮小均衡を繰り返していったのでは展望が開けない。

 国内需要が縮小するのに、現状の規模で製品やサービスを提供し続ければ供給過剰となることは目に見えている。しかも複雑なのはその先だ。国内マーケットの縮小と同時進行で勤労世代も減っていくため、多くの企業は恒常的な人手不足に陥りどこかの段階で現状の生産・提供体制を維持できなくなる。人口減少社会においては、需要不足と供給能力不足が、若干のタイムラグはあるもののほぼ同時に起きるのである。

 現状維持や拡大のためにどんなに無理を重ねようとも、結局はどちらかの理由で続かなくなる。そうした意味において結論は同じなのである。この「現実」を無視した経営を続けていると、どこかでパンクする。

 そこで「戦略的に縮む」という成長モデルの出番となる。二重の意味で縮んでいく国内マーケットと勤労世代の減少という「ダブルの変化」に対応するためには、追い込まれる前に戦略性をもって自ら組織のスリム化を図ることである。それが「戦略的に縮む」ということの意味だ。

 事業を多角化させている企業は多い。社会ニーズが複雑化する中で業務の範囲も肥大化しがちだ。しかしながら、出生数はこの20年間で30.7%減っており、新規学卒者の採用は年々困難になっていく。転職者採用も"即戦力"となる人材は争奪戦が激しく、すべての企業が計画通りに採用できるとは限らない。

 戦略を持たず、人口が減るに任せていたのでは組織規模は縮小し、各部署の余裕がなくなっていずれも衰退していくだろう。やがて企業としての競争力を失い、追い込まれていくこととなる。

 そうならないためにも組織体力のあるうちに、「残す事業」と、「やめてしまう事業」を仕分けするのである。その上で、「残す」と決めた事業に人材も資本も集中させて、これまで以上に組織としての持続力や競争力を向上させることだ。「やめてしまう事業」は他社に売却できるものは売却すればよい。

 人口減少社会においては、「拡大」とか「分散」とかいう発想は危うい。「集中」や「特化」が"生き残りワード"である。