日銀、次の焦点は追加利上げ 住宅ローンにも影響、7月会合に向け地ならしか

AI要約

日本銀行が長期国債の買い入れを減らす方針を決定し、金融政策の正常化が前進した。

国債買い入れの減額により円相場は急落し、円安水準が続いている。

追加利上げは慎重に検討され、7月の会合で具体的な計画が示される見込み。

日銀、次の焦点は追加利上げ 住宅ローンにも影響、7月会合に向け地ならしか

日本銀行が14日、長期国債の買い入れを月6兆円程度から減らす方針を決めたことで、金利に加え、量でも金融政策の正常化が前進した。具体的な削減計画は次回7月会合で示す方針だが、市場の次の関心は、変動型住宅ローンや企業向けの貸し出しなどへの影響も大きい追加利上げに移る。過度な円安への対応も視野に、日銀は追加利上げの適切なタイミングを慎重に探ることとなる。

■肩透かしで円安進行

「(銀行や証券会社など債券)市場参加者の意見も伺い、丁寧に進めたい」。14日の会合後の記者会見で日銀の植田和男総裁はこう語り、慎重に減額を進める姿勢を示した。

日銀の決定を受け、円相場はこの日、一時1ドル=158円台まで1円以上急落。政府・日銀による為替介入観測がある4月29日以来、約1カ月半ぶりの円安水準となった。

一般的に国債買い入れの減額は、需給が緩むことで国債価格が下落し、長期金利の上昇につながる。円安抑止の期待もあったが、実際には逆の展開となった。

市場関係者の事前予想では6月会合で国債の買い入れについて、具体的な減額が決まると見る向きが多かった。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「結果的に肩透かしにあった形だ」と指摘する。

一方で、植田氏は国債買い入れの減額については「相応の規模」になると強調。日銀は3月会合以降、買い入れ額を月6兆円程度としているが、5月の実際の買い入れ額は4兆5000億円程度にとどまった。木内氏は「7月に決まる減額のペースは月3~4兆円程度の可能性もある」との見方を示す。

■追加利上げは後ずれか

平成25年4月の大規模金融緩和開始以降、日銀は国債を大量に買い入れてきた。保有残高は発行済みの長期国債の5割超に上り、その動向が市場に与える影響は大きい。

それだけに無用な混乱を避けるため、日銀は「例外的な措置」(植田氏)として投資家の意見を聞き、7月の会合で具体的な減額計画を決める方針だ。

市場では「7月の追加利上げの可能性は後退した」との見方が強まった。木内氏は「大きな政策修正を同時に2つ実施することには相応のリスクがある」と指摘。追加利上げは最短で9月になるとの見方を披露する。(永田岳彦)