ECBの前に立ちふさがるインフレの壁-利下げの難しさFRB並みも

AI要約

欧州中央銀行(ECB)が米連邦準備制度理事会(FRB)と同様の金利引き下げに直面する懸念が高まっている。ECBは物価上昇の要因には違いがあると強調しているが、一部のエコノミストは物価圧力のリスクに警告している。

5月のユーロ圏のインフレ率が予想を上回り、サービス価格の急上昇やコアインフレ率上昇が懸念されている。インフレ率は急低下後に下げ渋っており、米国の傾向に類似している可能性がある。

欧州の物価上昇要因は米国と異なるが、今後の欧州の要因は米国のインフレ持続の背景に近いかもしれない。需給のバランスが悪くなり賃金の上昇が見込まれるため、企業がコスト上昇を消費者に転嫁する可能性がある。

(ブルームバーグ): 欧州中央銀行(ECB)が米連邦準備制度理事会(FRB)と同じような金利引き下げへの障害に直面するのではないかという懸念が高まっている。

ECB当局者が繰り返し強調するように、物価上昇の要因には米欧で明らかな違いがある。しかし、一部のエコノミストは重要な類似点を見いだし、物価圧力が持続するリスクを過小評価しないよう警告している。

大々的に予告されている6日の利下げは問題ない。中銀預金金利は4%から引き下げられるだろう。問題は、米国のような頑固なインフレが、その後の急速な金利引き下げを難しくすることだ。FRBはすでに、予想を上回る物価上昇の中で金融緩和について再考を迫られた。

INGのマクロ調査グローバル責任者、カルステン・ブルゼスキ氏は「米国の粘着性のインフレ問題は、欧州にも波及する可能性がある。ECBは米国で見られるリフレのリスクを一概に否定せず、慎重な姿勢を崩さない方が賢明だろう」と述べた。

ユーロ圏の5月のインフレ率は2.6%と予想以上に加速した。さらに憂慮すべきは、サービス価格の急上昇と予想外のコアインフレ率上昇だ。

インフレ率は急低下した後に下げ渋っている。目標の2%までの道のりの険しさを覚悟しているECBにとって驚きではなかっただろう。しかし、インフレ動向のこのところのパターンは米国に類似している。最近のブルームバーグの調査では、エコノミストの約3分の1が欧州の物価上昇は米国の傾向に追随しているとの見方を示した。

元々のインフレ要因は、米国では莫大な財政刺激策、欧州ではロシアのウクライナ侵攻後のエネルギー危機というように異なる。しかし、今後の欧州の物価上昇要因は米国でのインフレ持続の背景にあるものとそれほど違わないかもしれない。

ノムラ・インターナショナルのエコノミスト、アンジェイ・シュチェパニアク氏は、域内総生産(GDP)が予想以上に拡大し、記録的な低失業率に支えられた消費者主導の景気回復が見込まれることで、賃金が大幅に上昇していることを挙げる。旺盛な需要により、企業はコスト上昇分を消費者に転嫁することができる。