イメージセンサーの成長を今後けん引するのは? ソニーが見る半導体市場と成長戦略

AI要約

ソニーグループは2024年5月31日、イメージング&センシングソリューション分野(I&SS)の事業説明会を実施。ソニーセミコンダクタソリューションズ(以下、SSS)の社長兼CEOの清水照士氏が、事業の現状や今後の展望、成長戦略などについて語った。

第4次中期経営計画の振り返りや第5次中計の方針について説明。成長を実現しつつ収益性改善を図り、投資効率の改善や新工場建設などの方針を示した。

熊本市に新工場を建設する計画やJASMの第一工場の進捗、技術開発の強化など、将来に向けた取り組みや改善点を明らかにした。

イメージセンサーの成長を今後けん引するのは? ソニーが見る半導体市場と成長戦略

 ソニーグループは2024年5月31日、イメージング&センシングソリューション分野(I&SS)の事業説明会を実施。ソニーセミコンダクタソリューションズ(以下、SSS)の社長兼CEO(最高経営責任者)である清水照士氏が、事業の現状や今後の展望、成長戦略などについて語った。

 清水氏はまず、2023年度が最終年度だった第4次中期経営計画(以下、中計)の振り返りおよび、第5次中計(2024~2026年度)の方針について説明した。

 清水氏は第4次中計について、「中長期の成長に向けた仕込みを行った3年間だった」と説明。半導体不足や地政学リスクなど、不確実性が高く変化が見通しにくい事業環境は依然として続いているものの、「イメージセンサー事業を中心に市場の伸びを上回る成長を実現できたのは成果の一つだ」と述べ、積極的な設備投資/出資/研究開発投資の実施がこの成長を支えたとした。

 一方で、投資効率が悪化し、収益性改善が課題となったことにも言及。特に2023年度、最重要課題としてきたモバイル向けイメージセンサー新製品の歩留まり問題については「経営に大きなインパクトを与えた」と振り返ったが、清水氏は「われわれはこの経験にしっかりと学び、社内の組織体制や業務プロセスの総点検を行ったことで、足元では確実に改善が進んでいる」と語った。この歩留まり問題については、2024年5月、ソニーグループの決算説明会において、2024年度における損益影響が2023年度からほぼ半減となる180億円程度に圧縮できる見通しだと明かしている。

 こうした第4次中計を受け、第5次中計では「収益性を伴う成長に向けた経営基盤の再構築」を方針とした。清水氏は、「まず収益性を意識し、投資効率を改善していく」と説明。具体的には、成長に向けた設備投資は継続していく一方、既存資産を最大限に活用し投資を厳選。設備投資額は第4次中計比で約7割に抑えていく計画だという。ただし、そうした中でも「長期視点に立った将来に向けた準備」として熊本県合志市に新工場を建設することを決定したことも明かしていた。

 なお、同社の熊本工場(熊本県菊陽町)隣接地では2024年2月にTSMCの子会社でソニーも少数株主として出資するJASM(Japan Advanced Semiconductor Manufacturing)の第一工場が開所したが、清水氏は、「第一工場では、22nmの量産準備が順調に進んでいる。第二工場は将来の12nmに備えたキャパシティの準備という位置付けだ」などと説明していた。

 研究開発投資についても、将来への仕込みは継続する一方で、テーマの精査を通じた効率改善を推進する。清水氏は、「事業規模の拡大とともに費用としては増額してきたが、売上高に占める比率は15%前後の水準でコントロールしてきた。第5次中計も、将来への仕組みのためにしっかりと継続し費用としては増額する一方、テーマの精査を通じた効率改善によって、比率は過去中計に比べて減少させる計画だ」とした。

 また、上述の歩留まり問題の反省を生かし、「難易度の高い技術開発の完成度を早期に高め、量産にスムーズに移行できるよう開発力、製造力を再強化していく」とも述べていた。