中国軍と海警による「挑発」と「嫌がらせ」 波乱含みの台湾周辺の海を見守るアメリカ海軍の大型洋上監視機「トライトン」

AI要約

アメリカ海軍の大型無人監視機MQ-4Cトライトンが沖縄県の嘉手納基地に初めて着陸し、その構造や機能について紹介。

台湾の新総統就任演説が中国政府から非難を浴び、それに対する中国軍の演習が行われたことを報告。

台湾国防部の反応や中国軍との軍事紛争の緊張が台湾海峡で高まっている状況を解説。

中国軍と海警による「挑発」と「嫌がらせ」 波乱含みの台湾周辺の海を見守るアメリカ海軍の大型洋上監視機「トライトン」

5月20日初めて沖縄県の嘉手納基地に、V字尾翼が特徴のアメリカ海軍の大型無人洋上監視機、MQ-4Cトライトンが着陸した。

全長14.5m、全幅39.9m、全高4.7mの機体には、機首下部にMTS-Bマルチスペクトル電気/光学/赤外線センサー、そして、機体下部、主翼前の位置にある流滴型のふくらみの中には、多機能アクティブセンサー(MFAS)として、AN/ZPY-3 Xバンド・レーダーが内蔵されている。

このレーダーは、さまざまな監視モードに素早く切り替えることが出来る。

そのなかには海上目標を追跡するための海面捜索(MSS)モードや、船舶を分類するための逆合成開口レーダー(ISAR)モード、さらに、地上の捜索には2つの合成開口レーダー(SAR)モードが使用され、最大数百km先まで見通し、しかも360度スキャンしながら24時間以上連続して飛行できる。

そして、機体後部、エンジンの真下の部分には敵のレーダーやデータリンクなど電波情報をかき集めるESM装置がある。まさに、空からの海上・陸上の見張り役なのだ。

嘉手納にトライトンが展開した5月20日、台湾では蔡英文氏と同じ民進党所属の頼清徳(らい・せいとく)氏が新しい総統に就任し「台湾海峡の両岸の将来は世界情勢に決定的な影響を与える。(中略)私は中国に対し、台湾への言論での威嚇や武力による挑発をやめるよう求める」と演説。「中華民国と中華人民共和国は互いに隷属していない」とも述べた。

これに対して、中国政府(国務院台湾事務弁公室)の報道官は翌21日、頼総統の演説は「台湾独立の自白」と非難した。

そして、非難は言葉だけで終わらなかった。

中国国営メディアの人民網(日本語版)は5月23日「中国人民解放軍東部戦区は23日から24日にかけて、戦区の陸軍、海軍、空軍、ロケット軍などの兵力を派遣し、台湾島周辺で「連合利剣-2024A」演習を実施。海空合同戦闘即応性パトロール、戦場総合支配権の合同奪取、重要目標の合同精密攻撃などを重点的に訓練し、艦艇や航空機が台湾島周辺に接近して戦闘即応性パトロール、列島線内外一体化連動などを実施し、戦区部隊の合同作戦・実戦能力を検証する」と発表。演習の様子とみられる映像を、中国国営メディアが公開した。

また、この「連合利剣-2024A」演習の意義について、台湾を取り囲むように演習区域を設定した地図を示し「『台湾独立』分裂勢力に対する力強い懲戒であり、干渉し挑発する外部勢力に対する厳重な警告でもある」と発表した。

頼清徳総統の就任演説から、わずか3日。ずいぶん以前から演習海域・空域の設定、部隊の選定など準備をしていたのか。それとも現在の中国軍には、それだけの即応性があるということなのだろうか。

これに対して、台湾の国防部は23日夕「23日午後2時までに中国軍などの艦船31隻(内、海警船16隻)と軍用機延べ42機が台湾周辺の海空域で海空統合演習を実施」と発表した(フォーカス台湾 5/23付)

そして「台湾国防部は『今回の軍事演習は台湾海峡の平和と安定に貢献しないばかりか、(中国の)軍国主義的精神を浮き彫りにするものだ』と非難」(ロイター 5/23付)し、「『突発状況処置規定』にのっとり陸海空の兵力の派遣を検討するなどして実際の行動で自由、民主主義、主権を守ると強調」(フォーカス台湾5/23)したうえで、ミラージュ2000-5D型戦闘機や台湾国産のティンクオ戦闘機、それにF-16戦闘機などでスクランブルを行い、撮影した中国側のH-6爆撃機やJ-16型戦闘爆撃機の映像を公開した。

台湾海峡は南北の長さは約380km、東西の幅はもっとも狭い所で約130km。北端では約150~160km、南端は250~260kmとされる。

「連合利剣-2024A」で、中国軍の東部戦区は台湾海峡のみならず、台湾の東側からも包囲する想定で演習を行った。