日韓歌手が競い合う「韓日歌王戦」異例の高視聴率 「雪の華」など歌った日本人出演者が語る「国は違っても同じ」

AI要約

日韓それぞれで選抜された歌手が競い合う「韓日歌王戦」が話題を集め、高視聴率を記録。

日本人歌手が日本語の歌を歌い、視聴者から絶賛されることで国境を越えた共感が生まれた。

番組を通じて日本人歌手が韓国ファンに愛情を伝えるため、韓国語の勉強を開始し、さらなる活躍を目指す意気込み。

日韓歌手が競い合う「韓日歌王戦」異例の高視聴率 「雪の華」など歌った日本人出演者が語る「国は違っても同じ」

 日韓それぞれで選抜された歌手7人ずつが歌を競い合う韓国MBNのテレビ番組「韓日歌王戦」が4~5月にかけて放送され、歌番組としては異例の高視聴率を記録した。日本人歌手がテレビなどで日本語の歌を歌うことは1998年の日本大衆文化の開放後もタブー視されてきたが、その壁を破ったことも話題になった。日本人選抜メンバーのうち、歌手生活30年の歌心りえさん(50)、日本選抜1位の福田未来さん(30)、高校生の住田愛子さん(16)の3人に韓国ソウルで話を聞いた。

 日本の「懐メロ」や韓国の大衆歌謡「トロット」を歌う全6回の番組で、視聴率は4月2日の初回が11・9%。その後も10%程度を維持し、5月7日の最終回は最高15%超に達した。6週連続で同時視聴率トップという快挙だった。番組では、歌心さんが歌う中島美嘉さんの「雪の華」に韓国側の出演者らが涙を浮かべて聞き入り、住田さんが披露した近藤真彦さんの「ギンギラギンにさりげなく」では、立ち上がって踊り出す場面も見られた。

 動画投稿サイト「ユーチューブ」でも3人が歌う動画は、それぞれ約240万~約360万回(6月7日現在)の再生回数を記録し、番組終了後も伸び続けている。

 「日本人も韓国人も言葉をとても大切にしている。だから歌に命が宿り、相手に届くのだと思う」。福田さんは国を超えて人気を集めた理由を語る。歌心さんも「国は違っても曲に込められた感情や情景は同じものがあり、共感が広がった」と話す。

 韓国の交流サイト(SNS)には、3人について「圧倒的な実力だ。毎日聴きたい」「本物の芸術だ。ここ数年感じたことのない感動を味わっている」「国籍に関係ない最高レベルだ」などの賛辞が相次ぐ。「人生で日本の歌をテレビで見られる日が来るとは思わなかった」「政治家の扇動に踊らされず、いいものはいいと声を上げよう」とのコメントもあった。

 住田さんは「夢がかなった。歌で元気を与える立場なのに、私が元気と活力をもらって感謝している」と話す。番組を見た友人から声をかけられる機会が増え、手応えを実感しているという。福田さんは「番組に出てSNSのフォロワーが一気に数千人単位で増えた。歌を純粋に褒めてくれるコメントをたくさんいただいて、感動した」と反響の大きさに驚いている様子。日本で長くヒット曲がなかったという歌心さんは「歌を諦めようと思った時期もあったがようやく実を結んだ。さらに花を咲かせたい」と意気込んだ。

 韓国ではトロットが若者にも人気で、音楽ランキングでトロット歌手がK-POPアイドルを超えることもある。韓国側の出演者はすでに高い知名度があるスターだ。

 番組を制作したクレアスタジオのソ・ヘジン代表は、韓国メディアの取材に「日本の音楽を受け入れることでトロットがさらに深く広くなるという期待があった」と狙いを語った。だが、日本語の歌がこれほどの反響を呼び、視聴者が双方の歌手を称賛し合うようになるのは想定外だった。「韓国は日本文化を受け入れる余裕があり、世代が大きく変わったと感じた」という。

 韓国紙、ヘラルド経済は「単なる音楽対決ではなく、韓日文化交流の場であり、友情を築く信頼の場としての役割を十分に果たした」と評価した。

 3人は韓国のファンにもっと気持ちを伝えたいという思いから、韓国語の勉強も始めたという。歌心さんは「私が日韓の架け橋になっているんだと少しずつ感じてきた。声が出る限り歌い続けたい」。福田さんは「私の世界に人を引き込み、共感を広げられる歌手になりたい」。住田さんは「ダンスやバラードにも挑戦し、心に届くパフォーマンスを目指す」と話し、それぞれ国境に関係なく活躍することを誓った。

(ソウル山口卓)