「なんか祐希の様子おかしくない?」リベロ山本智大が察した石川祐希の異変…勝利目前だったイタリア戦の分岐点「もし戻れるなら…あそこですね」

AI要約

パリ五輪で世界から賞賛を浴びたバレーボール男子日本代表の中心、山本智大の悔しさを振り返る。

準々決勝でのイタリア戦の大事な場面やチームの様々なチャンスを振り返り、勝機を逃した瞬間に悔しさがこみ上げる。

山本がイタリアとの対戦を「ラッキー」と捉え、過去の対戦成績や個人的な考えを明かす。

「なんか祐希の様子おかしくない?」リベロ山本智大が察した石川祐希の異変…勝利目前だったイタリア戦の分岐点「もし戻れるなら…あそこですね」

パリ五輪では目標としていたメダルには届かなかったが、世界から賞賛を浴びたバレーボール男子日本代表。その中心には、小さな守護神・山本智大がいた。SVリーグ開幕を前に、日本が誇る最強リベロに激闘を振り返ってもらった。〈NumberWebインタビュー全3回の1回目〉

 もしも戻れるなら……。

 パリから帰国して約3週間が経った8月末、インタビューに応じてくれた山本智大(大阪ブルテオン)が挙げたのは、準々決勝イタリア戦のあの場面だった。

「僕と石川の間に落ちたやつです。追いつかれた時っすね」

 淡々とした口調に、悔しさがにじむ。

 日本は第3セット24-21とマッチポイントを握り、準決勝進出まであと1点と迫った。そこからイタリアがサイドアウトを取り24-22。そこで、イタリア代表のキャプテン、シモーネ・ジャネッリが放ったサーブは山本と石川祐希(ペルージャ)の間へ。山本が懸命に食らいついてコート内に上げ、高橋藍(サントリーサンバーズ大阪)がつなぐが、3枚ブロックの指先を狙った石川のスパイクはわずかにそれてアウトとなり、24-23。

 山本が挙げたのはこの次の場面だ。ジャネッリのサーブは再び2人の間を襲い、ノータッチでコートに刺さった。24-24とデュースに持ち込まれ、その後逆転された。

 山本は回想する。

「僕と石川、どっちも行けるボールだったんですけど、彼が半歩ぐらい出ていたのが見えたので、(取りに)来るかなと思ってよけてしまった。でも最後にちょっとこっちに曲がってきて、という感じのボールでした。あれを、Aパスじゃなくても、上にあげることができていたら、状況は変わったのかなと。たらればですけど。戻るとしたらあそこですね。

 その1本前も僕が片手でギリギリ上げた。2回同じところに来るとは思わなかったです。やっぱり彼(ジャネッリ)は持っていますね」

 ただ勝敗の分岐点は他にいくつもあった。

「取るべきポイントは他にもありました。4セット目も5セット目も勝てるタイミングはありましたね。言ったらキリがないぐらいたくさん出てくるので、負けは負けかなと思います」

 チャンスがおおいにあったからこそ、改めて悔しさが込み上げる。

 予選ラウンドは1勝2敗と苦しんだが、それさえも快挙への布石だったのではと思えるほど、準々決勝は様々な面で“ハマった”。

 一つは組み合わせ。予選ラウンドを8位で通過した日本は、1位通過のイタリアと対戦することになったが、山本は“ラッキー”と捉えていた。

「イタリアは相性いいんですよ、本当に。周りは『1位で通過しているから(強い)』と言っていましたけど、僕は個人的にイタリアが一番やりやすいと思っていました」

 近年の対戦成績は五分で、昨年のネーションズリーグ3位決定戦では日本が勝利し銅メダルを獲得していた。

「アメリカとポーランドはちょっと嫌だなと思っていて、それ以外ならどこでもよかったんですけど、できればイタリアかフランスがいいなと。それかドイツですね。(5連勝中の)スロベニアだったら最高ですけど」

 予選ラウンド初戦で敗れていたドイツがよかったというのは意外だった。

「ドイツは強いんですけど、もう一回やったら勝てると思いました。感覚的に。初戦はこっちの調子が悪かったので、普通にやればいけるなと。フランス(がいいと思ったの)は、日本とタイプが似ているというか、同じようなバレーをするので。今年のネーションズリーグでも予選ラウンドでは勝ちましたし。ファイナルでは負けましたけどあと一歩のところだったので、いけるんじゃないかなと」

 結果的に、イタリアと当たることに。

「『来たー! 』と思ったっすね。そしたら負けました」と自嘲気味に苦笑した。