盗塁は楽になったのか? 年間50盗塁に迫る大谷翔平の“走力軽視”に米記者が異論「技術は本当に並外れている」

AI要約

今メジャーリーグでMVPを巡る議論が盛り上がる中、大谷翔平の成績が注目されている。

大谷の打率.289、45本塁打、46盗塁、100打点、OPS.986という驚異的な数字に加え、シーズン50盗塁も目標に掲げている。

大谷の走力向上は注目される一方、MVP投票でDHはマイナス評価が下されがちな中での評価についても見解が分かれている。

盗塁は楽になったのか? 年間50盗塁に迫る大谷翔平の“走力軽視”に米記者が異論「技術は本当に並外れている」

 メジャーリーグもいよいよ終盤戦。ポストシーズン進出や地区優勝争いが激しさを増す中で、MVPを巡る議論が活発化している。

 目下、ナショナル・リーグの筆頭候補と見られているのが、大谷翔平(ドジャース)だ。

 今季の大谷は右肘に執行した手術の影響もあり、フルタイムの指名打者(DH)としてプレー。いわゆる“打者専任”となっているわけだが、そのスタッツは目を見張るものがある。現地時間9月7日時点で打率.289、45本塁打、46盗塁、100打点、OPS.986と、史上初の「シーズン50本塁打・50盗塁」も現実的な目標として捉えている。

 近年のMVP投票において最重要視されている指標「WAR」(打撃、走塁、守備、投球を総合的に評価して選手の貢献度を表す数値)にあって、DHは例外なくマイナス評価が下される。ゆえに、ただ打つだけではMVP受賞は厳しい。事実、“史上最強のDH”と言われたデビッド・オルティス氏が54本塁打、137打点を記録した2006年も、MVP投票では3位に甘んじている。

 そうした中で、大谷が評価を高める理由は、シーズン50盗塁を目前とする走力の向上は間違いなくある。

 無論、盗塁増加の理由は米球界で設けられたルール改変による要素は少なくないだろう。メジャーリーグでは23年のピッチクロック導入とともに始まった投手による牽制回数(3回)の制限、さらにベースサイズの拡大など走者有利の傾向が強まっている。

 だが、純粋に大谷の技術を評価する声が尽きないのも事実だ。米老舗誌『Sports Illustrated』で、トム・ベルドゥッチ記者は「新しいルールで盗塁はずっと簡単になったんじゃないか?」という問いに対して「今シーズンのメジャーリーグにおける盗塁成功率は78.7%と前年(80.6%)を下回っている。各チームはより良く守ることで適応してきている」と指摘。その上で、こう論じている。

「オオタニの盗塁がヘンダーソンの時代より楽かと言われれば、それほどでもない。それに彼はドジャースが4点差以上つけている試合では、盗塁を試みたことがない。彼の盗塁のほとんど(24個)は、ビッグイニングになる可能性が低い2アウトの場面で決めている。そして、適切なカウントで、適切な投球を選ぶコツを彼は心得ている。その技術は本当に並外れている」

 ルール変更によって、走者が有利になった面は少なからずある。だが、それだけで大谷の技術を論じてしまうのは、やはり勿体ない。50盗塁に迫る彼の身体能力とスキルは評価されてしかるべし、だ。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]