捨てた「根拠ない自信」 安楽、成長実感のメダル―スポーツクライミング〔五輪〕

AI要約

17歳のスポーツクライミング選手が初の五輪で銀メダルを獲得した。彼の子どもらしい勢いが確かな強さに変わる過程が描かれる。

宙斗選手が新しいクライミングスタイルで常識を覆し、国際大会での成功を収めるものの、挫折も経験し、成長を実感する。

今後の成長に期待が寄せられる宙斗選手は、17歳で貴重な経験を積み、将来の可能性に期待される。

 怖いもの知らずの勢いは、確かな強さに変わった。

 スポーツクライミング男子複合の安楽宙斗選手(17)=JSOL=が初の五輪で銀メダルを獲得。伸び盛りの高校生が日本男子に初のメダルをもたらした。

 伸び伸びとクライミングを楽しんだ。「勝ちたいと思って自分から練習を始めるようになったのは高校1年生から」。高校2年の昨年、一気に注目の存在となる。

 最大の武器は下半身主導で上半身を「脱力した」登り。腕力やジャンプ力など筋力を重視したこれまでのクライミング界の「常識」を覆した。国際大会デビューを果たしてボルダーとリードでワールドカップ総合優勝を果たした。

 だが昨夏の世界選手権で初めて壁にぶつかる。メダルと五輪出場権獲得への重圧の中、リードで体が動かずに落下して4位。「根拠のない自信で突き進んでいた。実力を思い知らされた」。人知れず涙を流した。それから1年。オフシーズンには筋力トレーニングを続けて肩周りを大きくし「力は倍以上になった」。世界の強豪と試合や合宿を重ねることで、心が揺れ動かない「集中力の深さ」を学んできた。

 今回は準決勝、決勝ともボルダーで首位に。決勝こそ疲労や緊張からリードでリズムを乱して金メダルを逃したものの「リラックスしていたし、去年よりは強くなった」。成長を実感した。

 「国際大会に出始めて1年半でここまで来た。これから『最強』と言われるクラスになれるよう頑張りたい」と誓った。貴重な経験を一つ積んだ17歳は次の4年間でどのような成長を見せるのか。周囲の想像を超える可能性を秘めている。