「感謝の気持ちを白球に」 大分大会が開幕、43校の選手ら行進

AI要約

第106回全国高校野球選手権大分大会が開幕し、大分商が大分高専に7回コールド勝ちするなど、力強い試合が繰り広げられた。

開会式では国歌・大会歌の独唱や選手宣誓が行われ、選手たちは感謝の気持ちを込めて誓いを立てた。

始球式や育成功労賞の贈呈など、大会を祝う様々なエピソードが生まれ、選手や関係者が一丸となって盛り上がっている。

「感謝の気持ちを白球に」 大分大会が開幕、43校の選手ら行進

 第106回全国高校野球選手権大分大会(大分県高校野球連盟、朝日新聞社主催)が6日、大分市の別大興産スタジアムで開幕した。晴れ渡った青空の下、選手たちはグラウンドを力強く行進した。開幕試合は大分商が大分高専に7回コールド勝ちした。7日は1回戦3試合が予定されている。

 開会式は午前10時半から始まり、43校がプラカードに先導されて入場。やや緊張気味の選手もいたが、しっかり腕を振ってグラウンドを行進した。国歌と大会歌の独唱は芸術緑丘高2年の鈴木心鞠(みまり)さんが務めた。

 県高野連の奥田宏会長は今年1月の能登半島地震に触れ、「被災した方への思いやりの気持ちを持つ一方、今日も当たり前に野球ができることに喜びの気持ち、また感謝の気持ちをもって過ごしてきた」とあいさつ。「チームメートとの絆を大切にし、一投一打に思いを込めて正々堂々とはつらつとしたプレーをしてくれることを願っています」と選手らを激励し、「始まります。頑張ろう」と呼びかけた。

 朝日新聞大分総局の高嶋健総局長は「一戦一戦が、高校生活を野球に打ち込んできた皆さんの晴れ舞台です。暑い中ですが、練習の成果を存分に発揮し、悔いのないプレーを期待します」と話した。(大村久)

■国歌・大会歌独唱、芸術緑丘高の鈴木心毬さん

 開会式では芸術緑丘高の音楽科声楽専攻2年、鈴木心毬(みまり)さん(17)が国歌と大会歌「栄冠は君に輝く」を独唱した。暑さを忘れるような澄んだ歌声が球場に響き、観客らの拍手に包まれた。

 「選手の皆さんが全力を尽くせるように精いっぱい歌った。コンクールとは違う緊張感でした」と鈴木さん。昨年10月の第77回滝廉太郎記念全日本高校声楽コンクールで2位に輝き、8月には「音楽の都」オーストリア・ウィーンへ短期留学する。「貴重な経験をさせていただいた。将来は世界の舞台に立てるような声楽家になりたい」と話した。(貞松慎二郎)

■選手宣誓、中津北・朝田遥斗主将

 選手宣誓は中津北の朝田遥斗主将が務めた。「この大会の次には甲子園が待っているが、この大会は日頃の言葉にできない感謝の気持ちを白球にこめたい」と思いを語った。

 6月の組み合わせ抽選会で希望者25人の中から抽選で決まった。観客らが見守る中、多くの人への感謝や力添えに触れた上で、「今までやってきたことに自信を持ち、感謝の気持ちを決意に変え、仲間たちと最後まで全力で泥臭く戦い抜くことを誓います」と力強く宣言。スタンドから大きな拍手が巻き起こった。(神崎卓征)

■始球式、大分市立大在小6年の高野翔吏さん

 開幕試合の始球式では、大分市立大在小6年の高野翔吏(しょうり)さん(12)がマウンドに上がった。直球をビシッと決めて、「ナイスピッチ!」と声をかけられた高野さん。「思い通りの投球ができた」と笑顔を見せた。

 所属する大在少年野球クラブでは投手と遊撃手を受け持つ。大リーグ・ドジャースの大谷翔平選手が好きだといい、「将来はプロ野球選手になりたい」と夢を語った。(貞松慎二郎)

■育成功労賞、元大分上野丘監督・釘宮啓彰さん

 高校野球の選手の育成と発展に尽くした指導者に贈られる今年の「育成功労賞」に、元大分上野丘監督の釘宮啓彰(ひろあき)さん(享年56)が選ばれた。開会式の前に、大分県高野連の奥田寛会長から妻のさとみさん(48)に賞状が手渡された。

 1993年に安岐高校の軟式野球部の監督に就いてから29年4カ月にわたり、高校野球の指導にあたってきた。2009年には県内で初の21世紀枠推薦校として、母校の大分上野丘を春の選抜大会に導いた。16年以降は病魔と闘いながら、ノックバットを片手にユニホーム姿でグラウンドに立ったという。

 受賞が決まった後、仏前に「私が代わりに受賞するけど許してね」と報告したさとみさん。この日、啓彰さんの遺影をもって臨み、「いろいろな思いが込み上げてきた」と涙を浮かべた。

 最も印象に残っているのは、啓彰さんの夢だった「母校で甲子園出場」が決まった時。「人前ではニコニコしていたが、家では涙流して泣いていた」と振り返る。亡くなる前は「もう一度、グラウンドに戻りたい。教壇に立ちたい」と話していたという。

 受賞後、さとみさんは「自分の名前がもう一度呼ばれることが、本人には照れくさいだろうけれども、すごくうれしいんだろうなと思う」と話し、「多くの人に感謝している人だった。今回もまわりの人の後押しで受賞できた」と笑顔だった。(大村久)