[MOM4752]市立船橋FW伊丹俊元(3年)_得点感覚、覚醒中。インハイ予選決勝とプレミアで最強のライバル・流経大柏相手に“2週連発”!

AI要約

伊丹俊元が得点感覚を取り戻し、2週連続でゴールを決める

市立船橋高と流通経済大柏高の試合で、伊丹はチームに勝ち点1をもたらす

今後もチームと個人の成績向上を目指し、インターハイと全国制覇を目指す

[MOM4752]市立船橋FW伊丹俊元(3年)_得点感覚、覚醒中。インハイ予選決勝とプレミアで最強のライバル・流経大柏相手に“2週連発”!

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]

[6.23 プレミアリーグEAST第9節 流通経済大柏高 1-1 市立船橋高 流通経済大柏高G]

 ここに来てようやくゴールの女神を、自分の方へと振り向かせつつある。苦しい時間は長かったけれど、トレーニングへ地道に取り組み、日常を丁寧に積み重ねてきたことがいま、ハッキリとした形として結果に現れ始めている手応えは、確かに感じている。

「プレミアの前半戦は全然点が獲れていなくて、自分もちょっと焦りがあったんですけど、インターハイの準決勝と決勝で獲れたことは自分の自信に繋がりましたし、プレミアでも今日獲れたことで、また自信が付いたことは感じています」。

 怒涛の公式戦3試合連続ゴールでチームに必要な成果をもたらし続けている、市立船橋高(千葉)の9番を背負った、屈強なレフティストライカー。FW伊丹俊元(3年=鹿島アントラーズつくばジュニアユース出身)の得点感覚、覚醒中。

 先週末のインターハイ予選決勝に引き続き、2週連続で流通経済大柏高(千葉)との対戦となったプレミアリーグEAST第9節。夏の全国切符は掴んだものの、リーグ戦では8試合を終えて2分け6敗と、まだ勝利はなし。伊丹も「チームとしてはインターハイとプレミアは別物だと考えていて、流経はプレミアで無敗ですし、自分たちとしては負ければ厳しい状況になるという中で、インターハイのことは1回忘れて、リセットして、試合に臨もうという形でした」とこの試合へ向かうチームの状況を語っている。

 自身も良いイメージは膨らんでいた。インターハイ予選の準決勝では、延長戦で貴重な決勝ゴールを叩き出すと、決勝の流経大柏戦でも1ゴール1アシストの大活躍。明らかに好調をキープしていた中で、「プレミアではまだ無得点だったので、インターハイでは点も獲ることができて、良い波に乗れていたんですけど、そのことも1回リセットして臨みました」とリーグ初勝利と初ゴールを奪うべく、改めて気持ちを入れ直す。

 ゲームは立ち上がりから流経大柏ペース。「正直あまり収めるところは収められなかったですし、相手の3番が競り合いに強くて、なかなか勝てなかったですね」と振り返った伊丹も前線で基点を創出できず、前半のチームのシュート数はゼロ。難しい45分間を強いられてしまう。

 ただ、インターハイ予選を通じて、自身の変化を実感したところがあった。「『前半で点を決められなくても慌てない』ということを自分の中で意識していて、チャンスがあって外してしまっても、冷静に次のチャンスを常に窺って、そのチャンスを決め切ることを考えるようになりました」。後半6分には先制点を献上したものの、慌てることなく、自分に訪れるはずのチャンスを虎視眈々と狙い続ける。

 18分。右サイドでDF井上千陽(3年)がボールを持つと、2人のイメージは共有される。「千陽とはいつも自主練をしていて、『あそこに1本来るな』とわかっていましたし、あのポイントにしっかり入って、あとは来たボールを頭に当てるだけだったので、練習通りという感じでした」。伊丹がスタンディングジャンプで叩いたボールは、右スミのゴールネットへ飛び込んでいく。

「『伊丹に入れたら何とかしてくれる』ということは関係性としてあったので、伊丹を信じて、中に入れました。いつも自主練で僕のクロスにマンツーマンみたいな感じでずっと中にいてくれるので、練習の成果が出て良かったなと思います」(井上)「もう千陽との練習のおかげでああいう動きが染みついていたので、うまくポジションが取れました」(伊丹)。とうとう飛び出した9番の今季プレミア初ゴール。スコアは振り出しに引き戻される。

 試合の結果は1-1のドロー決着。「結構押し込まれる時間が多くなって、先制点も獲られたんですけど、全然慌てることなく1点返せたのは良かったですし、プレミアではまだ無得点だったので、そこで獲れたのも良かったと思います」という伊丹が流経大柏からもぎ取った“2週連発”となる一撃で、市立船橋は勝ち点1を手繰り寄せた。

 中学時代は鹿島アントラーズつくばジュニアユースでプレーしていた伊丹は、太田隼剛(桐蔭横浜大)と佐藤凛音(法政大)といった“先輩”に憧れて市立船橋の門を叩いたが、実はこの日の対戦相手とも浅からぬ縁があるという。

「自分の家からは流経の方が近いので、その選択肢もあったんですけど、流経と市船の両方に練習参加してみて、市船に来ました。やっぱり流経は良いライバルだと感じていますね」。自分が行くかもしれなかった相手と千葉ファイナルやプレミアの舞台で対峙して、ゴールまで奪ってしまうのだから、サッカーは本当にわからない。

 意識している“同級生”へのライバル心も語り落とせない。中学時代にチームメイトとして切磋琢磨してきた鹿島アントラーズユースのFW徳田誉は、既にトップチーム昇格が内定。この日の前日にはプレミア初出場初得点をマークして、チームの勝利に貢献していた。

「昨日もプレミアでゴールを決めていましたし、負けていられないですね。元チームメイトとして、一緒に得点王争いができるくらい食らい付いていきたいですし、後期のアントラーズ戦は自分が決めて勝ちたいと思っています」。前半戦の鹿島ユース戦はケガで欠場しているだけに、9月に組まれている“古巣対決”に並々ならぬ覚悟で臨むことは想像に難くない。

 ようやくゴールが付いてきた。ここからはより重要な試合ばかりが続く。伊丹は確かな決意を力強く口にする。「目指しているのはインターハイと選手権の全国制覇なので、そこに向けてチームの底上げをして、個人としても結果を出せる年にしたいです。まずは次の横浜FC戦に勝って、その次も勝って、良い流れの中でインターハイに行きたいと思っています」。

 青いユニフォーム。ストライカー。左利き。本人も自身の特徴に「パワフルなプレーと泥臭く点を決める力」を挙げるあたりも含めて、元イタリア代表のクリスティアン・ビエリを彷彿とさせるような、市立船橋が誇るナンバー9。伊丹俊元の得点感覚、依然として覚醒中。

(取材・文 土屋雅史)