「素人みたいなミス」「踏むしかないでしょ!」「面白いサーキットだな」「ハメられちゃった」【SF Mix Voices 第3戦予選】

AI要約

野尻智紀がスーパーフォーミュラ選手権第3戦でポールポジションを獲得。

大嶋和也、小高一斗、Juju、木村偉織、太田格之進、山下健太のドライバーたちの予選結果と挑戦の様子。

決勝レースに向けて、各ドライバーが意気込みを語る。

「素人みたいなミス」「踏むしかないでしょ!」「面白いサーキットだな」「ハメられちゃった」【SF Mix Voices 第3戦予選】

 6月22日、全日本スーパーフォーミュラ選手権第3戦の公式予選が宮城県村田町のスポーツランドSUGOで行われ、開幕戦鈴鹿でウイナーとなった野尻智紀(TEAM MUGEN)が2024年シーズン初のポールポジションを獲得した。

 ここでは予選後、全ドライバーが参加して行われる取材セッション“ミックスゾーン”から、ドライバーたちがフリー走行と予選について語った内容をお届けする。

●大嶋和也(docomo business ROOKIE) 予選8番手

 昨季の再現を狙う大嶋が予選で魅せた。岩佐歩夢(TEAM MUGEN)のトップタイムと1000分の1秒差の2番手タイム、1分06秒058を記録したQ1を振り返った大嶋は、クルマが改善によって「本当にぴったり」ハマったと喜んだ。

 2023年シーズンをとおして計3回だった入賞のうち、SUGOでは最上位の4位となった大嶋。「やっぱり去年一番調子が良かったコースなのでかなり期待」していたという彼は、昨年タイムが伸びなかったセクター1とセクター2のバランスに焦点を当て、チームとともに準備を進めてきたという。

「去年ダメだったところを改善できるようにいろいろとやってきたのですが、正直、朝のバランスはあまり満足のいくものではなくて予選もQ1をぎりぎり通れるかな、くらいに思っていました。ただ、いろいろと相談しながらちょっとずつ案を出しながらやった修正が本当にぴったりハマって、Q1は本当に乗りやすかったです」

 そのQ1グループBにおいて、大嶋は他のドライバーと異なる動きを見せた。多くの選手たちが定石どおりユーズドタイヤでのチェックラン後にニュータイヤを履いて1回きりのアタックに入っていったのに対し、彼はタイムアタックを2度行ったのだ。

「次が(富士)テストで新品タイヤを残す必要がないので、2セット(使って)アタックしました」と意図を説明した大嶋。「最初のアタックの感触が良かったので、そのままセットを変更せずに(2回目の)アタックに行きました。バランス的にはほぼ完璧に近いような状態で、あまりにも良かったのでQ2に向けてクルマをいじる勇気がなくて一緒で行ったのですけど、ちょっとバランスが崩れちゃってダメでしたね」。

 結局Q2は8番手。タイムを伸ばしきれなかったことについて、大嶋はバランスの変化のほかにもうひとつ要因があったことを指摘した。

「(隊列の先頭を走る)MUGENの2台がけっこうゆっくりとタイヤを温めていて、僕的にはタイヤを温めきれずに終わっちゃった感じでした。その後ろにいたので『ちょっとハメられちゃったな』と思いました」

●小高一斗(KONDO RACING) 予選10番手

 予選Q1グループBで4番手タイムを刻み、KONDO RACINGのチームメイトである山下健太とそろってQ1を突破した小高は、開幕2戦で苦労したあと、ここSUGOでのQ2進出が「大きな一歩」だったと語った。

「鈴鹿とオートポリスどちらも予選、決勝もあまり良い調子で走れていませんでした。今回に向けては、山下選手が今シーズンそこそこいい状態で走れているというところで、そこを全体共有して自分のクルマにも取り入れた」と小高。

「持ってきたクルマがフリー走行でユーズドタイヤを履いたときからそこそこ走れていて、最後にニュータイヤを入れても(バランスが崩れず)Q1を通れるか通れないか際どいところではあったのですが、予選ではしっかりと通ることができました」

 各組から6台ずつが進んだQ2は10番手タイム。小高はこの結果について、修正しきれなかった部分がありアジャスト次第でさらにタイムを上げることが可能と見ている。

「Q2に向けては、ある意味今回の目標じゃないですけど、課題をQ1に見据えていたためアジャストしきれなかった部分もあります」

「でも何かこう、ちゃんとスーパーフォーミュラの中で戦えているというか、なんとなく“レースができているので”、ここ数戦を考えれば僕たちにとってはすごく大きな一歩だったと思います」

●Juju(TGM Grand Prix) 予選20番手

 開幕戦鈴鹿の予選では「チームとのコミュニケーションの問題もあって思うようにアタックラップに入れなかった」り、第2戦オートポリスでは走り出しのフリー走行でトラブルに見舞われたこともあって満足な状態で予選を迎えられなかったりしたが、今回のSUGOでは朝からトラブルフリーで予選に臨むことができ、「現状の自分の力を出して、自分の走りをすることができたのは、すごい良かった」とJujuは振り返る。

「タイムの上がり方も順調でしたし、予選のタイムも悪くなかったので、もう少し練習の時間があればまだまだタイム上がるかなという感じはしています。ただ、流れ的には良いのですが、クルマには少し課題もあって、チームは松下(信治)さんも含めて良くしようとしています」

 Jujuはフリー走行中、1コーナーで飛び出す場面も見られた。

「練習時間がすごく短いので……本当なら少しずつ自分やクルマの限界値を引き出せていけたら一番いいのですが、それをやっていると時間もかかるので。あの短い練習のなかで限界値を見つけるという目的で、1コーナーでは何回か限界を行きすぎて飛び出すというのはあったのですが、あれも含めていい練習になりました」

 チームとしての課題はコース前半、ツイスティなセクター1と2だとJujuは言う。

「自分としてもそこは良くできるように、とは感じています。ただ、サーキット自体は決して苦手な感じではなく、むしろ面白いサーキットだなというのはすごく感じているので、もっともっと走りたいなという気持ちはあります」

 Jujuは「今回はレース前から流れが良く、クルマも自分自身も改善点はまだまだあるのですが、それでもちゃんと落ち着いて自分の力を出し切れば、ちゃんと結果を出せるという自信は以前よりもある」と決勝に向けてもポジティブな姿勢を見せる。

「明日はガラっと変わって雨のレースになるかもしれません。スーパーフォーミュラで雨のレースは自分にとって初めての経験なので、今夜じゅうにできることはしっかりして……ただ、走ってみないと分からないこともたくさんあると思うので、明日は明日で自分のベストを尽くしたいと思います」

●木村偉織(San-Ei Gen with B-Max) 予選11番手

 今季2度目のQ2進出を果たした木村。19番手に終わったフリー走行1回目から挽回してのQ2進出となった。

「朝のFP1の順位が下位に沈んだなか、何としてもQ1を突破したいというなかで、いろいろセットアップとか走りを見直してアタックしました。結果的にうまくハマってQ1を突破できて良かったです」と木村。「今回は残りのニュータイヤの本数を考えて、Q1で2セットいきました。そこでも良いイメージを作ることができたので、良かったです」と振り返った。

 そんな木村は、この6月22日が25歳の誕生日。フリー走行後のピットウォークでケーキが用意され、チームや訪れたファンから盛大にお祝いされ、そこが予選に向けてスイッチが入ったという。

「ピットウォークの時にお祝いしてもらって、みんなから『おめでとう!』と言ってもらえて……『これは絶対にQ1通らなきゃいけないな!』と思って、そこですごく気持ちも切り替わって良いアタックができました。それこそSPコーナーは『いくしかないでしょ!』という感じで入っていって、最終コーナーも『踏むしかないでしょ!』みたいな感じでした。改めて、応援されるってこんなにパワーをもらえるものなんだなと思いました」

 雨の予報も出ている決勝レースに向けては「11番手スタートなので、何がなんでもポイントを持って帰りたいです。SUGOで雨は走ったことがないので、朝のFP2で雨が降ってくれればいろいろな確認もできるので良いかなと思います」と意気込みを語った。

●太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING) 予選7番手

 朝のフリー走行でスロットルトラブルによりクラッシュを喫してしまった太田。マシンは予選までに修復が完了したものの、セットアップはもちろんのこと、ニュータイヤも試せていない状況下で予選に臨んだ。それでもQ1のグループAで3番手タイムを記録するとQ2では7番手につけた。

「最初、使い込んだタイヤで走行していて、普段はやらないのですけど確認したいことがあったので連続周回をしていました。その時にスロットルのトラブルが出てしまって、馬の背コーナーでブレーキを踏んだんですけど止まりきれなくて突っ込んでしまいました」と午前中の状況を振り返った太田。ここで走行時間を失ったことが、大きな痛手だったという。

「SFでこのコースを走るというのはすごくチャレンジなことです。マシンのセットアップもそうですが、あの速度域でニュータイヤを履いていなくて、実質10分しか走れていないというのは正直絶望的な展開でした。最初はQ1を通れば御の字かなと思っていました」

 それでも「活用できるものといえば自分の経験と、データやオンボード映像でイメージを作っていって、Q1のアタックに臨みました。本当に『これくらいのグリップ感なんだろうな』という想像をもとに走って、その中でフルプッシュしました」と太田。

 Q1は突破できたもののQ2ではトラフィックの影響でタイヤを充分に温められないままアタックすることになったという。

「ウォームアップで渋滞していて自分のペースで走れなかったので、全然温められないままアタックに入った感じでした。そこはちょっと残念でした」と悔しい表情を見せるも、「Q1を突破できて良かったかなと思います」と前向きに捉えていた。

●山下健太(KONDO RACING) 予選6番手

 午前中のフリー走行で4番手につけ、予選Q1突破に自信を持っていた山下。しかし、Q1グループAではその予想に反してタイムが伸びず、突破ぎりぎりの6番手と肝を冷やこととなった。

「自分が思っていたよりも、意外とQ1の路面コンディションが良く、それがクルマ的にはあまり合っていなかった」ようだと語った山下。「予想外でしたね」。

 その後のQ2に向けては、クルマをアジャストし予選タイムを縮めることに成功するも、SPコーナーのひとつめでイン側の縁石に乗ってしまい若干のタイムロス。「素人みたいな、速くハンドル切りすぎた」ミスを悔やんだ。

「Q2に向けて(Q1で)思ったことを修正したところ、クルマとしてはまずまず良い方向に行きました」と山下。「自分のセクター3のミスがあって……3番手くらいのポテンシャルはあったと思っているので、反省しないといけないアタックの内容だったのが悔しいです」

 23日(日)の決勝レースに対しては、「開幕戦の鈴鹿で6番手から2位になっていますし、明日は午後に向けて雨が止む予報も出ているのでドライアップしていくかもしれないし、かなり荒れるレースになると思います。参戦年数も長いですし、経験値を活かして上がっていきたいと思います」と意気込みを語った。

[オートスポーツweb 2024年06月23日]