川田利明「麺ジャラスK」15周年「三沢さん、ラーメン屋はそんな甘いもんじゃなかったですよ!」 

AI要約

全日本プロレスの元3冠ヘビー級王者で“デンジャラスK”こと川田利明のラーメン屋「麺ジャラスK」は、来年で15周年を迎える。彼が経営する店での苦労や意地、顧客とのやり取りなどを赤裸々に語っている。

経営が苦しい中でも、川田は意地と性格で続けており、プロレスからのセカンドキャリアであるラーメン屋を大切にしている。

体調不良や経営の苦労、そして訪れる様々な顧客たちとのやり取りを通して、川田はラーメン屋経営の厳しさと喜びを語っている。

川田利明「麺ジャラスK」15周年「三沢さん、ラーメン屋はそんな甘いもんじゃなかったですよ!」 

 全日本プロレスの元3冠ヘビー級王者で“デンジャラスK”こと川田利明(60)のラーメン屋「麺ジャラスK」は、来年で15周年を迎える。5月上旬には経営の苦闘を語った「プロレスラー、ラーメン屋経営で地獄を見る」(宝島SUGOI文庫、税込み990円=注1)が発売され、アマゾンでベストセラー1位を記録するなど話題を呼んでいる。四天王プロレスで一時代を築いた男が見た地獄とは――。

 ――地獄とは衝撃的なタイトルだ 

 川田 資本金1000万円は開店の年にすぐ消えた。俺は「ベンツを3台鍋に溶かした」と言ってるけど、その年にベンツ3台を売って生命保険も解約して私財を切り崩して何とかやってる。開店から14年間、ずっと赤字。今が一番、客足が途絶えてるかな。ただ10年続くラーメン屋は1割と言われる中で何とかやってきたかなとは思う。

 ――なぜそこまで 

 川田 意地と性格だろうね。俺はレスリング(足利工大付属高)でも全日本でも「どうせ逃げ出す」と言われ、意地になって絶対に辞めなかった。同じように今、意地になってる自分がいる。辞めてもやることがない。辞めるにも金がかかるし。

 ――引退はしていないが2009年に一線を退いた

 川田(故ジャイアント)馬場さんの下でいわゆる四天王プロレスをやってた時期は本当にキツかったけどプロレスに専念できた。馬場さんがいて、大きなものに守られてる自分がいたから自由にできた。今の仕事は守ってくれるものは何もない。自分で自分を守るしかない。(夫人の)元子さんが全日本から撤退してからは苦労しかなかった。俺は全日本に骨を埋めるつもりだったんだけどね。フリーになって一線を退き、たまたま選んだのがラーメン屋だった。

 ――セミリタイアしたのはやはり…

 川田 三沢さん(光晴=09年6月13日に試合中の事故で死去、享年46)が亡くなったから。高校時代から一緒にプロレスをずっと追い求めてやってきて、背中を見ていた人が亡くなったら気持ちが切れてしまう。プロレスに対する情熱がスーッと冷めていった。それで初めてセカンドキャリアを考えた。

 ――我々に見えない絆は深かった

 川田 時々、馬場さんが「よっ」とフラリと入ってくるような気もする時もある。あと天国の三沢さんには、全日本を辞めてノアを旗揚げする時「ダメだったらラーメン屋でもやるか」って言ってたけど「三沢さん、ラーメン屋はそんな甘いもんじゃなかったですよ!」って言いたい(笑い)。

 ――全日本での激闘で体はボロボロだ

 川田 首から大けがして右ひざまで全身が悪い。厨房に立っているのもつらい。歩くのもやっと。今が一番お客さんが少ない。特に夜は全然だね。

 ――お客さんもいろいろいる

 川田 ラーメンに無料のカレーをつけたら「カレーだけくれ」って言う人や、十何人で来て小皿料理1品だけ注文して分けて食べて俺と話をしようとしたり…。「この店のラーメンはまずいから食ってみろ!」と部下を連れてきたサラリーマンがいた。部下が「いや、うまいですよ」と言うと怒りだしちゃって(笑い)。世の中いろんな人がいるよ。

 ――許せん

 川田 でも店に来れば俺に会えるから、来てくれる人がいる。そういう人と会うのはうれしいよ。最近はユーチューブで昔の映像を見て来てくれる20代や10代の若い人が増えた。先日なんか13歳の女の子がお父さんと来て、帰りにTシャツを2枚も買って感動してくれた。お金では買えない喜びがあるよね。自分たちが生まれる前の映像を見て来てくれるわけでしょ。そんな人のために店はなくしちゃいけないのかなとも思う。

 ――まさに「俺だけの王道ラーメン」だ。来年で15周年、次は20周年か

 川田 20年…体が持たないような気がする。でも数少ないけど会いに来てくれる人がいるなら続けていこうかなという気持ちがあるね。

 ――本ではすさまじい経営の苦闘を告白している

 川田 脱サラしようとしている人への反面教師だね(笑い)。どんなビジネスでも裏は苦労しかない。おいしいものを作る前にまず経営の勉強をしないとビジネスはやっていけない。俺は半年間、中華料理店で修業したけど、経営の勉強はしなかった。転職を考えている人は熟考してほしい。

 ――最後に

 川田 俺は「うちのラーメンはまずいですよ」とよく言ってるんだけど、スープには相当手間をかけている。一度食べに来てくれればうれしいです。

 注1…本書は19年9月にワニブックスから刊行された単行本「開業3年以内に8割が潰れるラーメン屋で失敗を重ねながら10年も続けてきたプロレスラーが伝える『してはいけない』逆説ビジネス学」を新たに改訂・改題して文庫化された。

【麺ジャラスK】東京都世田谷区喜多見6―18―7 ビスタ成城1F。小田急線「成城学園前」から徒歩12分。定休日=火曜日。営業時間は昼=正午~午後2時(オーダーストップ午後1時30分)、夜=午後6時~同9時(同8時30分)。都合により異なる場合もあり。おススメはカレー白湯ラーメン、鶏白湯ラーメン。