初ル・マンで好調維持する宮田莉朋。欧州で身につけた“新たなメンタル”も武器に

AI要約

WEC世界耐久選手権第4戦ル・マン24時間レースの予選で、クール・レーシングの37号車がLMP2クラスのポールポジションを獲得。

宮田莉朋が自身初のル・マンを迎え、好調な走りを見せるも、落ち着いた態度を維持。

宮田は夜の走行にも挑戦し、レースに向けて様々な準備を行っている。

初ル・マンで好調維持する宮田莉朋。欧州で身につけた“新たなメンタル”も武器に

 6月12日に行われたWEC世界耐久選手権第4戦ル・マン24時間レースの予選。LMP2クラスでは、クール・レーシングの37号車オレカ07・ギブソン(ロレンツォ・フルクサ/マルテ・ヤコブセン/宮田莉朋)が、ヤコブセンのアタックにより、暫定クラスポールを獲得した。

 2番手にコンマ3秒の差をつけた37号車は、その後ナイトセッションのFP2でも最速タイムを記録。13日に行われる最終予選『ハイパーポール』で、クラス上位グリッドを争うことになる。

 今季、同様の体制でELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズに参戦している宮田は、自身初のル・マンを迎えている。これまでのところ好調を維持しているが、宮田のテンションは普段と変わりなく、落ち着いているように見える。

 13日のFP3開始を前に話を聞くと、予選でのヤコブセンのトップタイムは「いい意味で予想外でした」という。FP1では赤旗の影響などでアタックシミュレーションができず、予選一発でのマシンバランス等の確認がほとんどできないまま、予選に挑んでいたのだ。

「マルテ選手は昨年、予選の経験があるので信頼はしていましたたが、実際にどこまでいけるかはやってみなければ分かりませんでした。そういった意味で昨日の結果は本当に良い驚きでしたし、その走りをしてくれたマルテ選手と、クルマを作ってくれたチームには感謝しています」

 予選後のFP2では、宮田自身初めてサルト・サーキットの夜を走行した。

「僕個人としては、富士24時間も初年度からずっと出ていましたし、今年ハイパーカーの耐久テストにも参加させていただいていて、外のライト(照明)がない状態で走行もしていたので」と、大きな問題には直面しなかった様子。ただし、ル・マンのスピードレンジでの夜の走行は、特有の難しさもあったようだ。

「やっぱりル・マンは300km/h近いところからフルブレーキしたり、300km/hから250km/hくらいまでしか落とさずに曲がるコーナーが多いので、バンプの有無とかブレーキングポイントなどの判断は、多少昼間よりも難しいかなという印象はありますね。そこは経験のあるドライバーに比べたら劣る部分ではあるのですが、今日もナイトプラクティス(FP4)はあるので、しっかりレースに向けて準備するだけかなという感じです」

 テストデーでの取材時には、バックモニターがなく、後方確認はサイドミラーしかない状況について若干の懸念を示していた宮田だが、果たして夜の走行では「反射してしまって、全然見えないですね」と、難しい状況ではあるようだ。

 なお、クール・レーシングでは毎日の朝のミーティングで、その日のランプランが発表されるそう。決勝での乗車順もまだ確定しておらず、スタートドライバーという可能性もゼロではないようだ。さまざまな可能性に対して常に準備することで、宮田自身の心境にも変化があったという。

「正直、昨日の予選もマルテ選手がシミュレーションできていなかったので、『(アタッカーが)自分になるのかな』と心の中では感じていて。だから、いつでも乗れるようにと意識はしています」と宮田。

「ヨーロッパに来てから『どうなってもいいや』というメンタルを持てるようになりましたね。日本のときはシリアスになってしまうというか、(予定が変わると)『いやいや乗らないって言ったじゃん!』みたいになってしまう場面が多かったのですが、今年に入ってからは『そうなったら、乗って、自分のパフォーマンスが出せればいいや』と切り替えがなんとなくできるようになっています。緊張はするかもしれないですが、どんなときでも対応できるようにした方が、今後のためにもなるかなと思っています」

 決勝に向けて、宮田は天候を一番の不安要因に挙げる。

「僕もロレンツォ(・フルクサ)もル・マンが初めてなので、天候が変わったときにどう対処すべきか。レースなので当然速く走りたい気持ちにもなるし、やっぱり勝ちたいと思うと速く走らなきゃいけないという焦りも出ると思うので、そこをチーム全体としてしっかり意識を持って、レースするだけかなと思います」

 取材後のFP3では、ヤコブセンがスロー走行でピットへと戻る場面が見られたのは若干気がかりだが、マシンが問題なく走っている限りは、ELMS序盤戦の勢いを維持しているように見える。初めてのル・マンで、宮田が上位争いをする光景も現実味を帯びてきた。

[オートスポーツweb 2024年06月14日]