「もう十分に偉大だ」井上尚弥への“不要な階級上げ風潮”に米元世界王者が嘆き「簡単なことじゃないし、危険」

AI要約

プロボクサーの井上尚弥に対する階級上げに関する議論について報じられている。米メディアが階級を上げるべきだとの意見を取り上げる一方、井上は自身のベストを出す段階でないと階級上げを行わない姿勢を貫いている。

一部の識者は、階級上げによるリスクや過度な期待に懸念を示しており、井上がすでに偉大な選手であり、意思を尊重すべきだと主張している。

井上が前試合で初めてダウンを喫したことから、階級上げは慎重に検討すべきであり、身体の成長や相手のパンチに対処するためにも準備が必要であるとの意見も存在している。

「もう十分に偉大だ」井上尚弥への“不要な階級上げ風潮”に米元世界王者が嘆き「簡単なことじゃないし、危険」

 プロキャリアで文字通りの“無敵”を誇る井上尚弥(大橋)。ボクシングの世界スーパーバンタム級4団体統一王者に君臨する彼の下には、日々ありとあらゆる意見が飛び交っている。

 もはや暴論とも言える意見も彼の下には飛び込んでいる。とりわけ井上の階級上げに対する意見は目も当てられないものがある。

 フェザー級のファイターたちから指名されるなど、階級の垣根を越えて挑戦状が叩きつけられる中で、井上は「階級をひとつ上げるのはそう簡単なものじゃない」と階級上げに慎重な姿勢を崩していないのだが、そうした態度を米メディアは厳しく批判。「スーパーバンタム級で欠点だらけのチャンピオンを何人も倒して、無敵のチャンピオンになった。だが、この階級はボクシング界で最も弱い階級の一つで、大したことではない」(米ボクシング専門サイト『boxing247』)といった意見も目立つようになっている。

 無論、井上が階級上げを恐れているわけではない。それはすでに4階級を制してきた彼のキャリアを振り返れば一目瞭然である。どれだけ煽られても慎重な態度を崩さないのは、あくまで自身の「ベスト」を出せる段階でなければ、ステップアップをしても意味がないという判断なのである。

 しかし、各国メディアのパウンド・フォー・パウンド(PFP)でも1位に指名されるほどの実績がゆえ、か。“ボクシングの本場”ではさらに高みを目指すべきという異論が噴出しているのだ。

 もっとも、こうした現状を憂う現地識者もいる。元世界2階級制覇王者のポール・マリナッジ氏は、米メディア『ProBox TV』のYouTube番組において「すでにイノウエは何階級も上げてきている。俺は今以上の過度な期待はしない」と持論を説いている。

「彼がそうなるというわけではないが、階級を上げ続けると最終的にドーピングに行き着いたりもする。それにイノウエはもう十分に偉大な選手だ。何をするにせよ、彼の意思を尊重するべきだ。(階級上げを求める風潮は)ボクシングというスポーツが抱えているやっかいな問題だよ。世間も、メディアも、過度に上げさせたがる。けど、そんな簡単なことじゃないし、何よりも危険だ」

 強い口調で訴えたマリナッジ氏は、「イノウエの前の試合も圧勝だったけど、ダウンをしているじゃないか」とも指摘。5月6日に東京ドームで行われたルイス・ネリ(メキシコ)戦で井上がプロ初ダウンを喫した事実をふまえ、こう続けている。

「階級が上がれば、必然的に相手のパンチやサイズも上がっていく。あのダウンの経験が『階級を上げるならまず身体を作ってから』という気持ちを強くさせたのかもしれない。それに30歳を超えて、身体がどう成長していくかも分からないからね」

 一部の米メディアやファンの間で続いている井上に対するネガティブな論調。それに対しては、マリナッジ氏のように冷静に“正論”を説く識者も少なくない。やはりボクシングの本場においてもモンスターの声価をきっちりと認められていると言えよう。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]