「泣きたい。もういやだ」出産→復帰のはずが大ケガ…アイシング中に「抱っこー!」“ミニ怪獣”の息子に元なでしこDF岩清水梓は救われた

AI要約

出産後に復帰を目指して頑張ってきた岩清水梓さんが、産後初の公式戦に復帰する直前に膝の怪我をし、3カ月の全治が告げられる。

リハビリを通じてアスリートに戻る喜びを感じながらも、怪我によるリハビリは前回とは異なり、落胆と挫折感が漂う。

開幕戦を楽しみにしていた岩清水梓さんが、怪我によって再び辛いリハビリに取り組むことになり、喜びと悲しみの入り混じった状況を乗り越えようとする。

「泣きたい。もういやだ」出産→復帰のはずが大ケガ…アイシング中に「抱っこー!」“ミニ怪獣”の息子に元なでしこDF岩清水梓は救われた

 女性アスリートにとって、妊娠・出産は現役引退とイコール。日本のスポーツ界ではそれが当たり前という暗黙の了解があった。しかし、なでしこジャパンW杯優勝メンバーの岩清水梓さんには「わが子を抱っこして、ピッチに入場したい」という夢があった。出産のち競技という“職場復帰”への奮闘記『ぼくのママはプロサッカー選手: 岩清水梓の出産と子育てのはなし』(小学館クリエイティブ)より一部転載にてご紹介します。(全4回)

 ひと言で言えば、最悪だった。泣きたい。もういやだ。やり切れない。

 出産から、思っていたよりもだいぶ時間はかかったが、体もようやくアスリート仕様に戻り、実戦もしっかりこなして、やっと元の「サッカー選手・岩清水梓」になってきた実感があった。あとは2021年9月のWEリーグ開幕に合わせて調整して、いよいよ目標だった、産後初の公式戦に復帰する……はずだった。

 開幕戦まであと1週間に迫った日のトレーニングで、最悪の事態は起こった。

 トレーニング中、右足を投げ出してシュートブロックをすると、膝の内側に痛みが走った。その瞬間、なんとなくいやな予感がした。これはヤバいやつかもしれない、と。

 翌日、いつものように息子を保育園へ送り届けると、その足で病院へ行き、MRI検査をしてもらった。先生から下された診断は、内側側副靱帯損傷。全治3カ月。やってしまった。

 あー、いやだ。面白くない。これまで、どれだけがんばってきて、どれだけ開幕戦を楽しみにしてきたことか。ツイてなさすぎる。なんでよりによって、自分にとって一番大事なこのときなんだよ―。

 同じリハビリでも、出産後にやってきたリハビリと、今回のリハビリでは意味合いがまったく違う。前者は、期間は長いけれど、自分が望んでやってきたリハビリだった。未来はわからなかったけれど、希望を胸に、少しずつアスリートに戻っていく体を実感しながら行うリハビリは楽しかった。つまり産後は、ポジティブなリハビリだった。