まだ来るかも! 今年は22年ぶりの太陽フレア当たり年

AI要約

2024年5月10日~11日には、20年で最大の磁気嵐が地球周辺に吹き荒れ、世界各地でオーロラが観測された。

太陽フレアは太陽表面の活動によって引き起こされ、地球に影響を及ぼす可能性がある。

太陽活動が活発な2024年は、磁気嵐やオーロラの出現がさらに期待される。

 (小谷太郎:大学教員・サイエンスライター)

 2024年5月10日~11日(協定世界時、以下同じ)、この20年で最大の磁気嵐が地球周辺に吹き荒れました。北極からハワイまでオーロラが襲い、赤や緑に輝く夜空の写真と人々の賛嘆の声がSNSを埋め尽くしました。日本でも北海道や能登半島から、オーロラが見えたという報告が届きました。

 磁気嵐は、太陽表面がぼかぼかフレア(爆発)を起こして、X線やら粒子やら磁力線やらを大放出することで生じます。どうやら2024年は数十年ぶりの「当たり」の年で、後半も活発な太陽活動が期待できます。

 「期待できます」などと書いてしまいましたが、磁気嵐は破壊的な電磁気現象で、通信や発電網やGPSなどのインフラに深刻な影響を及ぼす可能性があります。2003年の磁気嵐では、スウェーデンや南アフリカなど世界各地で停電が起きました。

 どうして今年は数十年ぶりの太陽フレア大当たりの年となったのでしょうか。今後、いったい何が起きる(かもしれない)のでしょうか。

■ 世界各地をオーロラが襲う

 5月10日から11日には、世界の人々が夜空を見上げ、初めて見るオーロラに驚嘆しました。芸術的な写真を何枚かお見せします。

 オーロラは緯度の高い地方でしか見られないのが普通ですが、この夜はなんとナミビア(南緯23°)やハワイ(北緯20°)でも見られたという報告がありました。

 日本でオーロラが見られることは珍しいのですが、北海道はもちろん、能登半島などでも、目視や撮影に成功した人が出ました。

 オーロラを光らせているのは、太陽からやってきた電子や陽子やイオンといった粒子です。そういう粒子が大気上層(高度100 km~500 km)の酸素原子や窒素原子に衝突すると、原子が赤や緑に光るのです。

 太陽フレアという現象は、エネルギーの高い電子や陽子やイオンといった粒子を大量に放出します。放出された粒子は秒速1000 km程度の猛スピードで宇宙空間に広がり、2日ほどで地球軌道に到達します。

 たまたま進路に地球があると地球に降り注ぐのですが、地球の持つ磁場の効果で、北極辺りと南極辺りに多く降り注ぎます。

 このため、太陽フレアにともなって高緯度地方では豪勢なオーロラがはためくのです。

■ 磁石の力でフレアする

 太陽表面には黒い点がぽちぽちと打たれていて、「(太陽)黒点」という全くひねりのない名で呼ばれます。太陽表面は5777 K(ケルビン)というたいへんな高温ですが、黒点は約4000 Kと少々低く、そのため暗く見えます。低いと言っても、鉄もタングステンも融かすほどの温度ですが。

 黒点は0.1~1 T(テスラ)ほどの強い磁場を持ち、太陽の磁極といえます。黒点は巨大な磁石だといってもさほど間違っていません。

 地球の磁極は北極と南極にあって(ほとんど)動きません。北極には(現在は)磁極のS極があり、南極には(現在は)N極があって、そのため地球上では方位磁針のN極は北を指します。北極にあるのがSouth極で南極にあるのがNorth極とは、ちょっと奇妙な感じがしますね。

 一方、太陽黒点というものは、2個に限らずいくつも出現して、太陽表面を這い回り、数日~数カ月で消滅します。見た目では区別できませんが、N極の黒点とS極の黒点があって、たいてい近くにペアで存在します。

 黒点の磁場は、電子や陽子やイオンなどの粒子を捕まえる働きがあります。(磁石が砂鉄を集める様子が連想されるかもしれませんが、違う原理です。) そういう電気を帯びた粒子の集団をプラズマと呼ぶので、黒点の磁場はプラズマを捕まえているという言い方をします。

 ときおり、隣り合う黒点の磁場がぶつかり合ったり、つながったり、逆に切断されたりすることがあります。すると磁場に捕まっていたプラズマは弾き飛ばされ、衝撃で超高温に熱せられ、宇宙空間に放り出されます。それにともなって可視光やX線が放射されます。千切れた磁場の切れ端が、伸ばされて切れたゴム紐のように飛んで行きます。

 これが太陽フレアというものです。

 また、太陽の上空には「コロナ」という薄い高温ガスの層がありますが、太陽フレアにともなってコロナも吹き飛ばされる場合があります。この「コロナ質量放出」が重なると、地球を襲う磁気嵐はますますすごいことになります。