目指すのは「松本人志と宮沢賢治を足したような作品」 独特の「間」と世界観を追求し、注目を集めるアニメーション作家

AI要約

「いきものさん」というアニメ作品が人気を集め、2023年度文部科学大臣新人賞メディア芸術部門を受賞した話。制作背景や作品の特徴について紹介。

監督・脚本の和田さんの経歴や作品制作への情熱、学生に教える姿勢などについて。

将来の挑戦として仮想現実作品への取り組みも視野に入れている和田さんの活動について。

目指すのは「松本人志と宮沢賢治を足したような作品」 独特の「間」と世界観を追求し、注目を集めるアニメーション作家

 いきものになりたい丸刈りの少年「いがぐり」と犬の日常を描いた「いきものさん」。昨年7~9月、初めて制作したテレビアニメが深夜枠で全国放送されると、不思議さやほのぼのとしたストーリーが評判を呼び、2023年度文部科学大臣新人賞メディア芸術部門を受賞した。この部門では過去に「鬼滅の刃」や「ゴールデンカムイ」を手がけた漫画家らが選ばれており、「候補になっていたことにすら驚いた」と笑顔で振り返る。

 1話90秒で全12回。カメに甲羅を借りて中にすっぽり入ってみたり、抱きかかえたネコの体がスライムのように伸びたり、川に入った少年のパンツの後ろをトンビがつかんで引き揚げたり。毎回違ういきものたちとユーモラスなやりとりを繰り広げる。従来の作品同様「気持ちのいい動き」を追求し、セリフがほぼないのも作風だ。「言葉は意味が強すぎて扱いづらい。キャラクターの表情や動きだけで表現し、解釈に幅を持たせたい」

 神戸市東灘区出身で、子どもの頃は王子動物園によく通った。大阪教育大学でグラフィックデザインを学び、3年時に思いつきでアニメを制作。「映像の中に生まれる緊張感や空気感」に面白さを感じ、東京芸大大学院の映像研究科に進んだ。塾や郵便局などでアルバイトをしながら作品を発表。12年にはベルリン国際映画祭短編部門の銀熊賞に輝いた。

 14年には西宮市の大手前大学に着任し、建築&芸術学部の教授として学生にアニメ制作を基礎から教える。「大事なのは企画から完成までモチベーションを高く保つこと。作り手だからこそ、身をもってその楽しさと苦労を伝えられる」

 学生時代から一貫して目指すのは「松本人志と宮沢賢治を足したような作品」という。「独特の『間』と、現実と非現実が入り交じる世界観を自分なりに表現したい」。最近は仮想現実(VR)作品への挑戦を検討中。43歳。(地道優樹)

【メモ】「いきものさん」はネットフリックスなどで配信されている。人気芸人や声優らによる副音声も楽しめる。和田さんは監督・脚本のほか、絵コンテ、原画、編集を手がけており、「1話つくるのに3~4週間かかった」という。