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捜索再開に兄、望みつなぐ 輪島・行方不明の垣地英次さん 「あいつが見つからんと前に進めん」
石川県警が不明者の捜索再開を決めた輪島市市ノ瀬町では、瓦ぶき職人の垣地英次さんの行方が分からず、兄は捜索を待ち望んでいる。
地震で家が土砂に押し流された兄弟の英次さんは、雪かき中に土砂崩れに巻き込まれた可能性があるとされ、捜索が本格化している。
捜索再開の決定を知った兄は感謝の気持ちを示しつつ、自分の日常は弟が見つかるまで変わらないと感じている。
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●「頭をなでてやりたい」
石川県警が不明者の捜索再開を決めた輪島市市ノ瀬町では、瓦ぶき職人の垣地英次さん(56)の行方が今も分かっていない。「あいつが見つからんと前に進めん。できるなら顔なり頭なりをなでてやりたい」。兄の弘明さん(59)は弟がいなくなって以来、時間が止まったままだといい、約4カ月ぶりとなる再捜索に望みをつなぐ。
市ノ瀬町では元日の地震で大規模な土砂災害が発生し、複数の住宅が飲み込まれた。そのうちの一つが垣地さん兄弟の育った家で、土砂で100メートルほど押し流され、1階は木や泥で埋まった。
弘明さんによると、英次さんは昨年11月に母親が亡くなって以降、実家に1人で暮らしていた。地震前、納屋の近くで雪かきをしている姿を付近住民が目撃しており、土砂崩れに巻き込まれた可能性がある。
「何とか生きていてほしい」。本格的な捜索が始まった1月中旬以降、弘明さんは毎日朝昼夕と現場に足を運んで活動を見守った。土砂の中からは英次さんの上着や所属していた消防団の服、ヘルメット、古いアルバムなどが出てきたが、英次さんは見つからないまま時間が過ぎていった。
捜索が中断されてからも、弘明さんは週末になるたび、自宅のある金沢から市ノ瀬に向かった。母方の実家を片付けたり、母と英次さんが世話した畑の手入れをしたりしながら、崩落現場に立ち寄り、規制線の外から復旧工事の様子を見つめていた。
それだけに、捜索が再開されると知った時は「涙が出るくらい、うれしかった」と弘明さん。周囲では少しずつ元の日常を取り戻す動きが広がっているが、「自分は弟が見つからない限り何も変わらない」と感じていたという。
弘明さんは「ほかに見つかっていない人もいて複雑な思いがある。弟のために復旧工事の人手が取られるのは申し訳ない気もする」と話す一方、「家もおふくろの墓も流されてしまったけど、せめて弟をおふくろと一緒の墓に入れてあげたい」と話した。