「岐阜は隕石の通り道」説、発見最多 森林多い県、山を探せばもっとある?専門家「たまたまですね」

AI要約

岐阜県内で最多の5例の隕石が発見されている。発見された隕石の中には、1938年に笠松町に落下した隕石も含まれる。

笠松隕石は民家の屋根瓦を突き破り、落ちてきた隕石であり、現在は町内で隕石を模したお菓子が販売されている。

岐阜県は隕石の通過地点として知られており、隕石が偶然見つかることも多いが、落下のパターンはランダムである。

「岐阜は隕石の通り道」説、発見最多 森林多い県、山を探せばもっとある?専門家「たまたまですね」

 86年前の3月31日、岐阜県羽島郡笠松町の民家に隕石(いんせき)が落ちてきた―。「笠松隕石」の存在を取材で知り、日本で発見された隕石の事例を調べてみると、国内全54例のうち、県内では最多の5例が見つかっているという。「一説では岐阜は“隕石の通り道”と言われているとか…」なんてうわさも聞こえてきた。何か理由があるのだろうか。46億年前から届いた黒い石を手がかりに、宇宙とのつながりを追った。

 「バーン、と屋根瓦を突き破り、家の中に落ちたそうです」。同町の町歴史未来館で開かれていた、石にまつわる展示を4月に取材していた時のこと。奥村智彦館長が隕石のレプリカを前に説明してくれた。奥村館長は国立科学博物館の発表を基に、全国に落ちた隕石をまとめているという。

 奥村館長の資料によれば、県内では美濃市を中心に29個がシャワー状に落下した美濃隕石、羽島隕石(羽島市)、坂内隕石(揖斐郡揖斐川町)、笠松隕石、長良隕石(岐阜市)の5例が確認されている。奥村館長は「森林比率が全国2位にもかかわらず、全国で一番見つかっている。山を探せばもっとあるはず」と期待する。

 笠松隕石は隕石が落ちた箕浦家(笠松町新町)が保管していると聞き、早速向かった。役場近くの箕浦さん宅に着くと、庭の隅に「町指定文化財 天然記念物」の看板を発見。一般家庭で見たのは初めてで、期待が高まる。「普段は金庫に入れているの」。発見者の息子の妻久子さん(77)が家の奥から木箱を持ってきて、現物を見せてくれた。

 落下したのは1938年。「タイヤが一度に5、6本パンクしたような音」がして、当時25歳の箕浦久之丞さん(故人)は床に伏せた。しばらくして頭を上げると「屋根にぽっかり穴が空き、差し込む光が見えた」そうだ。物置を調べたところ、床板にのめり込んだ握りこぶしほどの石を見つけた。少し熱く、久之丞さんは新聞にくるんで交番へ持って行ったという。

 東京で成分を調べ、箕浦家へ返された。「具合が悪い人が拝みに来ることもあった。宇宙から来た特別な石だと、信仰心のようなものがあったのでしょう」と久子さんは振り返る。現在は町内各所で隕石を模した漆黒のまんじゅうやもなかが販売され、町おこしに一役買っている。

 直近では2012年に発見された長良隕石がある。調査に携わった岐阜聖徳学園大(岐阜市)教育学部の川上紳一教授を訪ねた。隕石や化石が所狭しと置かれた研究室で「『隕石かも』という持ち込みは日々ある」と川上教授。長良隕石もその一つで、住民が草刈り中に偶然見つけたという。

 一通り取材した後、期待を込めて冒頭のうわさについて尋ねた。しかし、返答は「たまたまですね。見つけた人が多かっただけ」。氷床の流れがある南極では隕石が発見されやすいとされるが、落下自体は「時も場所もランダム。集中することはない」とのことだ。

 諦めきれず、万が一「隕石かも」という石を見つけたときに備えて見分け方を聞いた。ポイントは「大気圏に入った際に燃えてできる、指で押したようなへこみ」や「見かけよりも重く感じる」ことだという。22年には長良隕石に関連し「戦中に火球を見た」と新情報が寄せられるなど、岐阜の“隕石熱”は冷めていない。川上教授も「探せばまだまだあるかもしれませんね」と話した。