「“首ったけ”になるには絶好なマシンだ!」 西川 淳がアルピーヌA110Rチュリニほか5台の輸入車に試乗!!

AI要約

モータージャーナリストの西川 淳さんがエンジン大試乗会で試乗した5台のガイ車の本音を明かす。それぞれの車両の特徴や乗り心地、感想について述べられている。

各車両の特徴や魅力が詳細に語られ、読者も一緒に体験したかのような臨場感を持って記事を読むことができる。

ゴーストに至っては、最新のロールス・ロイスの最高傑作であり、乗用車界で類を見ない存在であることが強調されている。

「“首ったけ”になるには絶好なマシンだ!」 西川 淳がアルピーヌA110Rチュリニほか5台の輸入車に試乗!!

モータージャーナリストの西川 淳さんがエンジン大試乗会で試乗した5台のガイ車がこれ! アルピーヌA110Rチュリニ、ベントレー・コンチネンタルGT S、DS4エスプリ・ド・ヴォヤージュ、ポルシェ911GT3 RS、ロールス・ロイス・ゴーストに乗った本音とは?

◆いろんな発見があった

クルマの個性や運転の面白さを教えてくれたのがガイシャでした(ゴルフII)。それから40年近く経った今でも新型のガイシャに乗ることが決まるたび、それがどんなブランドであっても、なんだかワクワクするものです。この日のEPC会員の皆さんもきっと、初めてのブランドやモデルに乗って同じようにワクワクされたことでしょう。「乗り心地って上には上があるものなんですね」とか、「これって普段の街乗りに最高じゃないですか」とか。いろんな発見があったと思いますし、私自身も日頃からそのモデルに抱いている印象や感想が会員の皆さんの感じたこととさほど違っていないことに大いに勇気づけられもしました。クルマ好きどうしが同じクルマを体験し、その印象をその場で共有するということ、それ自体がとても楽しい経験であることをこのイベントはいつも教えてくれるのです。それにしても最近の英国車は、ええよなぁ~。

◆アルピーヌA110Rチュリニ「良い意味で“いびつ”」

本誌執筆陣お墨付きスポーツカーといえば最近じゃこのA110がその筆頭だろう。私は多少へそ曲がりな性格で、ほとんどパーフェクトというべきこの仏産2シーター・ミドシップに対してほとんどパーフェクトであることが面白くない要因だと思っていた。ところがRチュリニはどうだ。ヤンチャな要素(室内外の見栄えや聞こえてくるノイズ、締め上げられたアシなど)もそこかしこにあって、パワートレインに変更がないにもかかわらず、乗っていてスタンダード仕様よりはっきり速く感じる(実際に速い)。“首ったけ”になるには絶好なマシンだ。もちろん性能のパーフェクトさにいささかの欠如もないわけだから、ドライビング・ファンを味わわせるためのサービス精神が旺盛になったぶん、良い意味で“いびつ”なスポーツカーになったというべきなのだろう。Rのようなカーボン・ホイールを履いていないから精神的な安心感もあって、気兼ねなく走り、攻め込んでいける。いやはや、A110恐るべし。とはいえ乗るならGTを選ぶだろうな~と思いつつ、中古車サイトを見れば、あったぞピンクメタ!

◆ベントレー・コンチネンタルGT S「長く付き合える」

隣に座るEPC会員が唸った。「極上の乗り心地って皆さん(評論家)こういうことをおっしゃっているんですね」。はい、そういうことなんです、知らなきゃよかったよね。でも、貴方はもう知ってしまった!

幸か不幸か、否、幸せに決まっている。クルマ好きなんだから。最高の乗り心地ってものを知っておいた方がいい。というわけでコンチネンタルGTの素晴らしさは、もちろんスタイルやインテリア質感も良いけれど、特にこの世代においてはその上質なドライブ・フィールにこそあった。究極のフラット・ライドを体感できることもその1つ。さらに実は助手席の読者も「けっこうキビキビと動きますよね」と気づいてくれたとおり、走りにはかなりのスポーティさも備わった。お望みであればスポーツカーのように走らせることもできるハンドリングの持ち主。それが現行モデルについて最も語るべき美点だ。W12よりもV8に顕著。フロント・アクスルにかかる重量差、というよりもむしろ、エンジン搭載位置のバランスだろうか。トランスミッションの熟成も進んで今まさに熟れ頃。長く付き合える1台。

◆DS4エスプリ・ド・ヴォヤージュ「期待を裏切らない」

クルマ好きならDSを含むシトロエン系モデルの乗り心地に関して、たとえ未経験者であったとしても、いくばくかの知識と期待を持っているはず。想像できるというか、もっというと“良いに違いない”というイメージを抱いている。だから誰もが期待して乗り込んでこられる。ハードルが上がってしまっているのだ。隣に乗せるこっちは別にシトロエン関係者じゃないにもかかわらず、心配になってしまう。新しいモデルは期待を裏切ってしまうんじゃないか、もうハイドロの時代ではないんだから……。全くの杞憂であった。「これは毎日乗っていたい乗り心地です」。助手席のEPC会員が相好を崩す。「でしょ?実にシトロエン(DS)らしい」。私の顔もなぜかほころぶ。しかも2人して確認したことには、一般道の低速域はもちろん西湘バイパスの高速域、さらには箱根ターンパイクでもその心地よさが続く。「単にふわふわしているもんだとばっかり……」。そう、柔らかいのに引き締まっている。その絶妙さが独特なのだ。ゆえに一度味わって好きになると虜になってしまう。仏車嫌いに付けたいクスリ。

◆ポルシェ911GT3 RS「凄まじく懐が深い」

もはやため息しかない。たとえお金があってもすぐには買えない、という現実よりも、どうしようもなくハイレベルな仕上がりにドライバーとしてまったくもって対峙できる自信がまるでないから。もちろんそんな難しく考えずに金があるなら、そしてポルシェに選ばれたなら飾っておくだけでもいい、買っておくという考え方もあるけれど、剥き出しの刃をピカピカのまま床の間に飾っておけば絶対に使いたくなるに違いないからヤバい。手練れが試すというならまだしも、素人が真剣に振ろうとするとたとえ道場であってもいらんことが起きそう。だから諦めもついて、ため息しか出ない。ハァ。ちょいと流した程度じゃ、RSに特別な性能でわかることなんてたかが知れている。せいぜいDRSオンの効く感じ(スーッと浮くように進む)くらい。あとは凄まじく懐の深いこと。公道ではどんなに頑張っても何事も起きそうにない。サーキットに行けば行ったで自分の技量以上のところへ瞬く間に達してしまいそう。限界まで行かなくても十分に速いとは思う。でも我慢できないだろうな、きっと。やっぱりヤバい。

◆ロールス・ロイス・ゴースト 「乗用車界の史上最高峰」

上には上があるということがゴーストに乗ればよく分かる。それまでどんなに乗り心地の良いクルマに乗ってきたとしても、ゴーストに乗ると“負けた”と知るだろう。もちろん過去には単なる心地良さで勝るモデルもあったはず。けれどもショーファーではなく完全なるドライバーカーとしてゴーストに勝るとも劣らないモデルが果たして他にあったかというと、同門のカリナンくらいしか見当たらない。間違いなく乗用車界の史上最高峰。値段が高いからそんなの当たり前、を超えてくる。こんな巨体がまるで不自由なくターンパイクを駆け上る、駆け下りる。V12エンジンは遠くの方で滑らかな音を奏で、その精緻な唸りは耳まで心地よい。そんなクルマ、他にある?

ゴーストに限らず最新RRの味わいをチョイ乗りなんかで知ってしまうと、こればかりはクルマ好きは知っておくべきレベルを超えて本当に不幸だ。なぜならそれがもう頂点だから。RRは今、若い人に人気なのだそう。若返りに成功したブランドなのだ。彼らは一生RRから離れられないことだろう。とっても羨ましい。

文=西川 淳

(ENGINE2024年4月号)