なんてフェラーリだ! 全世界599台限定「SF90XX スパイダー」に驚愕。公道試乗で分かったその真価【スーパーカー最前線】

AI要約

フェラーリ SF90XX スパイダーは、サーキットでの性能を追求しつつも公道での快適性も兼ね備えた限定モデル。

車両の走りや安定性、パワートレインの洗練さなど、高い性能と快適性が両立している。

フェラーリの技術革新と30年ぶりのエアロデバイス装備により、公道での乗り心地が向上している。

なんてフェラーリだ! 全世界599台限定「SF90XX スパイダー」に驚愕。公道試乗で分かったその真価【スーパーカー最前線】

サーキットで速くて公道を走っても快適なんてアリ? 全世界599台限定で販売されたフェラーリ SF90XX スパイダーに、モータージャーナリストの大谷達也がフランスで試乗した。

フェラーリのル・マン24時間プレスツアーでは、われわれ参加者にレースウィークを通じて最新の広報車が貸し出され、それでサーキットとホテルを往復するのが恒例となっている。普段はなかなか触れることのできないフェラーリだが、3日間にわたって片道1時間ほどの行程を繰り返すうち、短時間の試乗ではわからないいろいろな素顔が見えてきて非常に興味深い体験となる。

ちなみに昨年はデビューしたばかりの296GTSに試乗してコンバーティブルモデルとは思えない完成度に感銘を受けたが、今年はなんと、全世界で599台のみが生産されるSF90XX スパイダーが私の試乗車として割り当てられた。

SF90XXのベースとなったのは、フェラーリの現ラインナップでもっともパフォーマンスが高いとされるSF90。V8ツインターボエンジンをミドシップし、ここに3モーター方式のプラグインハイブリッド・システムを組み合わせたSF90は実に1000psの最高出力を誇るが、この超ハイパフォーマンス・スーパースポーツカーの走りをさらにサーキット向きに磨き上げたのがSF90XXなのである。

私は昨年11月、SF90XXのクーペ版であるストラダーレ(こちらは799台の限定生産)にフェラーリのフィオラーノ・サーキットで試乗した。このときは、コースがチョイ濡れだったにもかかわらず、走り始めから意のままにコントロールできるドライバビリティを備えていることを知って驚愕した。さすが、フェラーリがサーキット走行向けに仕立て直しただけのことはある。

もっとも、この段階ではナンバープレートがついていなかったため、公道ではテストできなかった。したがって、サーキット向けとされたSF90XXが公道でどの程度の快適性をもたらしてくれるのか、どの程度の実用性を備えているかは、残念ながら確認できなかったのである。

フィオラノで乗ったのはクーペ、ル・マンではスパイダーとボディタイプは異なっているものの、どちらも貴重なSF90XXであることに変わりない。私は不安と期待が入り交じった思いを抱いて、SF90XXスパイダーの試乗に臨んだ。

走り始めてからものの数秒で、SF90XXがサーキット走行のためだけに作られたクルマでないことがわかった。路面に鋭い突起があってもガツンという強い衝撃は伝わってこないし、周期的に波打つような路面でもボディが激しく上下に揺さぶられることもない。足回りがしなやかにストロークして路面を捉え続ける、実に懐の深い足回りだったのである。

しかも、わだちが残る道を走ってもステアリングが左右にとられることはなく、高速道路ではそっと指を添えているだけでまっすぐと走り続けてくれる。さらにいえば、車速を上げても快適性が損なわれないばかりか、むしろどっしりと落ち着いた乗り心地へと変貌していく。この辺は、フェラーリのロードカーとしてはF50以来、およそ30年振りに装備した固定式リアウィングなどのエアロデバイスが効いているのだろう。

パワートレインも扱い易く、そして洗練されていた。エンジンとモーターをあわせたシステム出力はSF90の1000psからSF90XXでは1030psとさらに増強されているものの、パワーが立ち上がっていく過程でトルクの急峻な山や谷が意識されることはなく、常にスロットルペダルを踏んだ量に見合った加速感を生み出してくれる。スロットルレスポンスの鋭さ、正確さも文句の付けどころがない。しかも、ギアチェンジをしたり、エンジンとモーターで出力が切り替わったりしても妙なショックを発することもなく、いつでもスムーズな走りを見せる。この辺は、多少ギクシャクすることもあったSF90から大きく進化したポイントといえる。