6.5億円! 1800psの8.3リッターV16自然吸気ハイブリッド、ブガッティ・トゥールビヨン登場 世界最高峰のハイパーカー

AI要約

ブガッティが新型ハイパーカー「トゥールビヨン」を発表。ブガッティの歴史に残る新型モデルで、伝説のハイパーカーとして誕生。

ハイパーカーの頂点を極めるトゥールビヨンは、現代的なデザインと高性能を備える。ぶっ飛びスペックや斬新なパワートレインも注目。

ブガッティ初のハイパーPHEVとして登場するトゥールビヨンは、250台の限定生産であり、2026年に顧客への納車が予定されている。

6.5億円! 1800psの8.3リッターV16自然吸気ハイブリッド、ブガッティ・トゥールビヨン登場 世界最高峰のハイパーカー

ブガッティが新型ハイパーカーを発表した。その名は「トゥールビヨン」(Tourbillon)。2016年に発表されたシロンの後継モデルである。

◆100年に一度の変革期

近年、自動車産業は「100年に一度の変革期」と言われ、スーパーカーやハイパーカーも大きく影響を受けている。特にパワートレインに関しては、電動化へと舵を切るメーカーも増え、新興メーカーを中心に電気自動車=バッテリーEV(BEV)のモデルも多く登場している。

◆リマック社と統合

ハイパーカーの頂点に君臨するブガッティにも、大きな変化があった。2020年9月にフォルクスワーゲン・グループがブガッティ・ブランドの売却を検討していると発表し、翌2021年7月には、クロアチアのハイパーEVメーカーであるリマック・オートモビリのスポーツカー事業と統合。ブガッティは、リマック・グループとポルシェAGの合弁会社であるブガッティ・リマックの1ブランドとなったのである。

こうなると、次期ブガッティはリマックのテクノロジーを用いたハイパーBEVになりそうに思えるが、ブガッティ・リマックのマテ・リマックCEOは、そうしようとは考えなかった。

◆“永遠に”のために存在するモデル

マテ・リマックCEOは、「次世代ブガッティを、リマックのバッジ・エンジニアリングにするなどということは全く考えなかった。115年に渡るブガッティの歴史と、“比較できるものはもはやブガッティではない”や、“美しすぎるものはない”というエットーレ・ブガッティの言葉を指針に、過去のアイコンと同様に“永遠に”のために存在するモデルとして開発した」と語っている。

こうして、非常に現代的で、息を呑むほどに美しい、この上なくラグジュアリーなトゥールビヨンは、リマックとは異なる新しいハイパー・プラグイン・ハイブリッド(PHEV)として登場した。

◆往年のモデルからインスピレーション

全長×全幅×全高=4671×2051(ミラー込みは2165)×1189mmと、シロンより若干大型化した2シーター・クーペのトゥールビヨンは、往年の「ブガッティ・タイプ35」や、「タイプ57SC」にインスピレーションを受けた、馬蹄型グリルから広がるボディ・シェイプを採用。シロンと比較すると、ボンネット後端で45mm、ルーフは33mm低くなっている。

「速度によって形作られる」現代のブガッティに相応しく、トゥールビヨンはエアロダイナミクスも著しく進化している。「フライング・フェンダー」と呼ばれる左右のフロント・フェンダーは、LED式ヘッドライト下部から空気を取り込み、サイド・エアインテークの空気流量を増大させる機能を有する。これにより、ダウンフォースを高めながら、ボンネットフード下部に備わるラジエターの冷却効率を向上させ、大きなフロント・ラゲッジスペースの確保にも寄与している。

◆ディフューザーがリアのハイライト

リアまわりのハイライトは、大きなディフューザーだ。新しいクラッシュ・コンセプトに基づいて設計されたこれは、キャビン直後からキックアップしはじめ、リア・ビューに迫力を与えている。

高速域で極めて効率的にダウンフォースを生み出すこのディフューザーの効果により、400km/h以上の超高速域では可動式リア・ウイングはボディに格納された状態となる。リア・ウイングは低中速域でのハイ・ダウンフォースと、エア・ブレーキのために使用される。

◆コスワースと共同開発したV16

ハイブリッド・パワートレインは、完全に新開発だ。ヴェイロン以来、約20年にわたって、ブガッティの全モデルに搭載されてきた8.0リッターW16クワッドターボに別れを告げ、トゥールビヨンには8.3リッターのV16自然吸気エンジンを備えた3モーターのハイブリッド・システムが搭載されたのである。

リア・ミドシップに縦置き搭載される自然吸気V16ユニットは、コスワースによる技術協力を得てセロから完全新設計されたもので、全長は約1mと長いが、単体重量はわずか252kgと軽量だ。

◆前2基、後1基の3モーター

レヴリミットが9000rpmと高回転型のこの新型エンジンは、最高出力1000hp、最大トルク900Nmを発揮。これに新世代のデュアルクラッチ式8段ギアボックスが組み合わされて後輪を駆動する。リア・アクスルには、さらに250kW(335hp)と240Nmを発揮する電気モーターが備わる。フロント左右輪にも、250kW(335hp)の電気モーターが各1基備わる。このフロント2基のモーターは、合計で3000Nmもの強大なトルクを発生する。結果、トゥールビヨンはハイブリッド・システム全体で、最高出力1800hp、最大トルク3000Nmという、驚異的なスペックを実現した。

リチウムイオン式バッテリーは、センタートンネルとキャビン直後に搭載されている。容量はグロスで24.8kWhで、800Vの油冷式だ。EV走行における航続距離は最大60kmを実現している。

◆カーボン・モノコック・ボディ

モノコック・ボディには超軽量な次世代のT800カーボン複合材を採用し、バッテリーパックも構造体として統合。フロント・フレームとリア・フレームには、低圧薄壁鋳造アルミニウムや3Dプリントされた構造ブレースを採用し、シロンから大幅な軽量化と高剛性化を果たした。

また鍛造アルミニウムを使用した前後マルチリンク式サスペンションには、オーガニックデザインのアームや、3Dプリントによるアルミニウム製アップライトなどを用い、シロンから45%もの軽量化を達成している。

◆0-100km/h加速は2.0秒

結果、トゥールビヨンは1995kgという車両重量を実現。0-100km/h加速は2.0秒、0-200km/h加速が5.0秒未満、0~-00km/h加速が10.0秒未満、0-400km/h加速が25.0秒未満、そして最高速度は445km/h(通常は380km/hでリミッター作動)という、まさにハイパーカーの頂点と呼ぶに相応しいパフォーマンスを発揮するに至ったのだ。

しかも、リア・アクスルには電子制御LSDを搭載し、フロントは完全なトルク・ベクトリングである。ハンドリングも別次元のスポーティネスを実現しているであろうことは想像に難くない。

◆スポーツクロノグラフを想起させる

トゥールビヨンが、ヴェイロン、シロンと続いたブガッティの歴史に名を残した伝説のドライバーの人名ではなく、200年以上前に。天才時計技士アブラアム・ルイ・ブレゲによって発明された、機械式時計における3大複雑機構のひとつの名称をモデル名に採用した理由が解るのがインテリアだ。

最も目を惹くのがドライバー正面のメーターパネル。最高級のスポーツクロノグラフを想起させるスケルトンデザインが特徴的なこれは、スイスの時計職人が設計から手掛け、チタンやサファイア、ルビーなどを使用した600を超えるパーツが極めて精巧に組み上げられたもの。このメーターパネルはハブに固定されていて、ステアリングホイールとは独立しているので、ステアリング角度に関係なく、常に水平を保つ点も特徴である。

◆センターコンソールも芸術的

 ボヘミアン・クリスタルガラスとアルミニウムを組み合わせた、縦長のセンターコンソールも美しい。アルミパネルは削り出しの一体構造で、表面には陽極酸化処理が施されている。最上部にはバック・カメラの映像を表示する際には2秒で縦に回転する、スマホサイズの格納式タッチディスプレイを装備。Apple CarPlayにも対応している。

エルゴノミクス・デザインのシートは、可能な限り低い位置に固定されている。そのためペダル・ボックスには電動で前後に160mmスライドする機構が備わり、最適なドライビング・ポジションに調整可能となっている。またキャビンを広々と使えるほか、電動で跳ね上がるディへドラル・ドアと相まって、優れた乗降性にも寄与している。

◆250台の限定生産

 一層のスポーティネスと究極のラグジュアリーを兼ね備えた、ブガッティ初のハイパーPHEVであるトゥールビヨンは、フランス・モルスハイムのアトリエで、250台が生産される予定だ。価格は税抜きで380万ユーロ(約6億5000万円)。2026年に顧客への納車がスタートする。

なお、ブガッティは、「トゥールビヨンが最後のICE(内燃機関)搭載モデルではない」とアナウンスしている。

文=竹花寿実

(ENGINE WEBオリジナル)