「優しくなりたい」長渕剛さんが語る「自責の念」と「許す心」 7年ぶりのアルバム「BLOOD」に込めた思い

AI要約

長渕剛が7年ぶりのニューアルバム「BLOOD」をリリースし、アリーナツアーもスタート。コロナ禍を経て書かれた新曲や、幅広いテーマの歌詞について語る。

長渕剛は家族の影響や伊集院での思い出から歌のルーツを語り、自責の念や優しさを大切にするメッセージを込めた楽曲を作り上げた。

ツアーでは爆発的な一体感を作りたいと話す長渕剛。コンサートでのパフォーマンスにかける思いや、九州での思い出について語る。

「優しくなりたい」長渕剛さんが語る「自責の念」と「許す心」 7年ぶりのアルバム「BLOOD」に込めた思い

 鹿児島県出身の歌手、長渕剛さんが7年ぶりのニューアルバム「BLOOD」をリリースしました。6月25日からはアリーナツアーが始まり、九州では福岡市と鹿児島市で2公演ずつ開催されます。福岡市を訪れた長渕さんに、曲作りの思いやツアーへの意気込みを聞きました。

 -前作「BLACK TRAIN」から7年。この間、コロナ禍があった。長渕さんにとって、コロナ禍とはどんな期間でしたか。

 ★長渕 不条理みたいなのは、非常によく分かった年月でありましたよね。国の問題とか社会の問題にぶち当たって、それでも一丸となって解決していこうと。美しかったのは、閉塞(へいそく)感を打破するために一丸となってみたいな、一つになるんだな、というようなことも感じたし。あとはやっぱり、弱ってる人たちのために、自分が動かなきゃっていう思いは、非常に色濃く見えた日々でしたね。

 -「BLOOD」の曲は、7年の間に書きためたんですか。

 ★長渕 いや、ほとんどはこの1、2年です。

 -この国の現状に対する怒り、故郷への思慕、家族愛…。実に多彩な10曲が収められていると感じました。

 ★長渕 人を傷つけたり、自分が傷ついたり、そうやって人間は生きていく。で、最終的に何が残るか。僕は「自責の念」だと思うんですよ。自分が悪かったからこうなったんだと。それぐらい人間は優しい生き物だと信じています。そうしたときに、許す心って人間にはいっぱいある。そんな優しさにも満ちている。優しくなりたい。今回はこんな思いで、かなりの歌を書きました。

 伊集院(鹿児島県日置市伊集院町)で過ごした3歳の頃、母親が歌ってくれた童謡の響き。つらく悲しいときとか、涙が出そうな感情で、ふいに口ずさむメロディーです。「夕焼小焼」とか。そのメロディーがたぶん僕の「原書」なんです。創作の一端に大きく影響している。誰もが分かる歌、誰の心にも存在する歌、誰もが耳から入って心にすっと落ちていく歌。そういったものをつくりたい。これが難しいんですよ。自分の感情をかきむしるように大学ノートに書き連ねていくんですけど、そんな歌だったら別に自分の部屋で歌えばいいわけであって、それを世に放つということは、どこに向かって歌っていくのかっていうことが問われるわけですね。そんな思いで45年、書きつづってきました。今回のアルバムには、そういったものが色濃く反映されているんじゃないかと考えたりします。

 -ツアーが始まります。見どころを教えてください。

 ★長渕 爆発的な一体感を作るコンサートにしたいですね。

 -ステージで全身の力を出し尽くすパフォーマンスは、今も30年前の長渕さんと基本的には変わっていないように見えます。

 ★長渕 30代で感じましたからね。自分が絶え間なくしてやり続けようとすれば、心技体を極めないとできないと。当然、稽古をして体をしばきあげるみたいなところはあります。身を削る思いをして、昨日までしおれていた人間が、泣いていた人間が、目の前で笑顔になる。これがやりがい。そのために命を懸けるんだって35歳で決めたんですよ。今回も客が本気で拳を挙げる、笑顔になる。そんなコンサートになると思います。

 -九州では生まれ育った鹿児島、大学時代を過ごし、音楽活動にのめり込んだ福岡。どちらも長渕さんを育んだ土地です。

 ★長渕 鹿児島には毎年、帰るんですよ。伊集院に行く。そうすると亡くなった父母の声が心の中で聞こえる気がする。「俺は少しはましな歌い手になれた?」と尋ねて答えを聞く。そんな場所なんです。

 僕は博多という街に背中を押されて東京に出た。「あんたスーパースターになりいよ」と応援してくれた仲間や、ご飯を食べさせてくれた親代わりの人がいた。僕の脳裏に全部、刻み込まれている。博多は鹿児島とは違う、とてつもない第二の故郷です。

 -長渕さんのコンサートは、昔からのファンのほか、若い新しいファンの姿も目立ちます。

 ★長渕 親、子、孫の3世代で来てくれるお客さんもいる。頑張らなきゃなと思います。

(文・湯之前八州、写真・菊地俊哉)

 ながぶち・つよし 1956年9月7日生まれ。鹿児島県出身。福岡での音楽活動を経て78年に「巡恋歌」で本格デビュー。「勇次」「乾杯」「とんぼ」などヒット曲多数。俳優としてもドラマや映画に出演。

 TSUYOSHI NAGABUCHI ARENA TOUR 2024 BLOOD 6都市11公演。九州は29、30日に福岡市のマリンメッセ福岡、7月27、28日に鹿児島市の西原商会アリーナ。いずれもSS席1万8000円、S席1万3000円、A席1万1000円。詳細は有名プレイガイドで。