「地域にとってのサードプレイスでありたい」 定年後、長年住む松戸で開業:本屋BREAD&ROSES・鈴木祥司さん

AI要約

新京成線沿いに位置する常盤平駅に、定年後に開業した書店「本屋BREAD&ROSES」の物語。

地域の団地住民や通勤客に愛される落ち着いた雰囲気の書店で、桜並木が店の前を彩る。

店主の鈴木さんは本好きな元書店員で、定年後に本屋を始めた経緯を持つ。

「地域にとってのサードプレイスでありたい」 定年後、長年住む松戸で開業:本屋BREAD&ROSES・鈴木祥司さん

 千葉県の松戸駅と京成津田沼駅を結ぶ新京成線。常盤平駅は、1960年に建てられた常盤平団地の最寄り駅で、高度成長期には数多くの住民がここに暮らし、賑いを見せていた。しかし、団地住民を中心に、ゆるやかに高齢化が進んでいく。駅前の西友にあった老舗書店「学友堂」も、2024年1月に長い歴史に幕を下ろした。その数カ月前、駅前から東西をつなぐ常盤平さくら通り沿いに新たな書店「本屋BREAD&ROSES」が誕生した。店主は約30年前、結婚を機に松戸市内に移り住み、昨年2月に定年を迎えたばかり。地域の“サードプレイス”になれたらと考え、毎日店を開けている。

「本屋BREAD&ROSES」は、新京成線の常盤平駅と五香駅の、どちらからも徒歩約10分。「日本の道100選」の一つである常盤平さくら通りに面しており、落ち着いた雰囲気の場所にある。この通りに約600本の桜が咲き乱れる春はもちろんのこと、花びらが散った後の葉が青々と茂っている時期も魅力的だ。同店の大きな窓からは、そんな桜の木を眺めることができる。

 12時のオープンと同時に、顔見知りの客がふらりと訪れ、店主の鈴木祥司さんと雑談をする。次に来た客は、鈴木さんに本の注文を依頼した。大きな窓に面してカウンター席があり、セルフサービスのカプセルコーヒーを味わうこともできる。2023年10月のオープンから7カ月が過ぎ、少しずつ地域に溶け込んでいっているようだ。

 松戸市内で暮らして約30年になる鈴木さんは、都内にある労働組合の職員として働き、2023年2月、60歳の誕生日に定年を迎えた。その数年前から、定年後をどうするか考えはじめたという。

「多くの人と同じように、このまま職場に残るのか、転職するのか、新しいことを始めるのか、といろんな選択肢を思い浮かべ、考えました。定年が近づくにつれ、本屋をやりたいという思いが強くなっていったんです」

 そう話す鈴木さんは、実は大学を卒業後、大手書店に就職していた。外商部に配属されたので、売り場に立っていたわけではないが、本好きな鈴木さんにとってはそれなりに充実した日々を過ごしていた。しかし、約2年で転職し、労働組合の職員となった。

「転職したのは書店に不満があったわけではなく、なんとなくでした。当時はバブル期で、転職への抵抗感もなかったんでしょうね。労働組合の仕事では調べ物をすることが多く、本好きだったことは役に立っていたと思います」