「夫婦なら何でも分かり合える」は幻想である…医師・和田秀樹「お見合い結婚の離婚が少ない」納得の理由
人間関係の秘訣は、『つかず離れず』の距離感でつき合うことが理想だ。
距離が近すぎるとトラブルのもとになり、遠すぎると関係が希薄になる。
人間関係では、グレーゾーンを認めることが重要であり、2つに分ける二分割思考にとらわれないことが大切である。
人間関係が上手くいく秘訣は何か。医師の和田秀樹さんは「『つかず離れず』のほどよい距離感でつき合うのが理想だ。『近しい関係であれば何でもわかり合える』というのは幻想である。かつて主流だったお見合い結婚は、何でもわかり合えるという期待を、互いにあまり持たない地点からスタートするので、結果として離婚が少ないとも言われる。相手に過度な期待をしないことが『いい加減』なつき合いのポイントである」という――。
※本稿は、和田秀樹『65歳からのひとりを楽しむ「いい加減」おつき合い』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
■理想は「つかず離れず」のつき合い
人間関係のトラブルはたいてい、互いの距離が近すぎることから起こるものです。
近くにいるほど、互いのいやなところが目につき、不満を抱きやすくなります。人と人は、ほどよく離れているほうが、相手のいいところも悪いところも含めた全体像が見えて、いい関係を保ちやすいのです。
友達づき合いや近所づき合いはもちろん、親子や夫婦などの近しい間柄でも、「つかず離れず」のほどよい距離感でつき合うのが理想です。
ただ、現実にはほとんどの場合、「つかず離れず」とはいきません。
たとえば、老いた親との関係では、親が元気なうちは離れて暮らし、たまに様子伺いの電話をかける程度の、薄いつき合いを続けていることが多いと思います。
かつては「親孝行したいときには親はなし」と言ったものですが、長寿化が進んだいまは「親孝行したいときには親が要介護」です。
親の衰えが進み、いざ要介護になると、それまでほったらかしにしていた罪悪感も手伝って、親を自宅に呼び寄せ、熱心に在宅介護を始める。
■親の介護は施設を利用し、こまめに会いに行くといいが
その結果、介護を頑張りすぎて限界を迎え、親を介護施設に入所させると、今度は施設にいる親にほとんど会いに行かなくなる、というパターンがよくあります。
しんどい思いをして在宅介護を続ける必要はなく、むしろ施設を利用し、そのうえでこまめに本人に会いに行くほうがいい。要介護の親を持つ人たちに、私は日頃からそう伝えていますが、その反対になりがちなのが実情です。
親の側が、体が弱ってくると子どもに甘えすぎてしまうとか、夫が定年退職した途端、何でも妻に頼りきりになる、というケースもよくあります。
ベタベタと近寄りすぎるか、突き放すか。極端から極端へと振れてしまい、「いい加減」の関わり方ができていないことが多いと感じます。
距離が近すぎるとトラブルのもとになりますが、かといって突き放すと遠くなりすぎてしまいます。適度な距離をとるのが大切なのですが、それがなかなか難しいのです。
■白か黒かで、その中間のグレーが認められない
近づきすぎたり、離れすぎたりと、人間関係でほどよい距離がとれない人は、「二分割思考」にとらわれている人が多いと思います。
「正義か悪か」など、ものごとを2つにはっきり分けてしまう、この思考パターンの人は、他人のことも「敵か味方か」に分けてしまいます。
そのため、味方だと思っていた人が、少しでも自分を批判すると、敵になったと考えます。味方であっても批判することがあるとか、他人と完全に意見が一致しないのは当たり前といったことが認められません。
白か黒かで、その中間のグレーが認められない。そうした人は、すなわち「いい加減」ができない人です。
世の中はグレーだらけで、真っ白や真っ黒と言えることはほとんどありません。にもかかわらず、それがあるかのような幻想にとらわれている人が少なくありません。