新型iPad Airは最速・最高ではない。しかし!多くの人にとって最良のタブレットだ

AI要約

Appleは新型iPad Airを発表し、M2プロセッサを採用。同時にApple Pencil Proも登場し、使いやすさが向上している。新型iPad Airは最速・最高品質ではないが、多くの人にとって最良のタブレットであると言える。

iPad Airは11インチと13インチの2サイズ展開で、高機能化されたApple M2チップを搭載。カメラ画質も良好で、Apple Pencil Proが魅力的なアイテムである。

CPU性能よりもGPU性能のほうが大幅に伸びを達成しており、ストレージ速度にも差別化が見られる。価格はiPad Proよりも安く、一般的な用途やクリエイティブワークには十分な性能を持つ。

新型iPad Airは最速・最高ではない。しかし!多くの人にとって最良のタブレットだ

 Appleはプロセッサに自社開発のSoC「M2」を採用した新型iPad Airを5月7日に発表、5月16日より販売開始した。同日には「M4」を採用した新型iPad Proがリリースされているが、一般ユーザー向けのiPad AirもプロセッサがM1からM2に刷新されたことにより、パフォーマンスが底上げされたことになる。

 また両機種の発売に合わせて、「Apple Pencil Pro」も登場。「スクイーズ」(握る)やダブルタップ、触覚エンジン(バイブレーション)などによりスタイラスペンとしての使い勝手が向上している。今回は本製品借用したので、実機レビューをお届けする。「iPad Pro」に関しては借用でき次第、レビューをお届けする予定だ。

■ より広い層をターゲットとするため2サイズを展開

 第5世代までの「iPad Air」のディスプレイサイズは1種類だったが、2024年モデルは11インチと13インチの2モデル展開となった。高機能化され、高価になった「iPad Pro」に代わり、より広い層をターゲットとするため2サイズ展開になったのだと思われる。

 基本的なスペックは共通。初期OSは「iPadOS 17」、SoCは「Apple M2チップ」(高性能コア×4+高効率コア×4を搭載した8コアCPU、10コアGPU、16コアNeural Engine、100GB/sのメモリ帯域幅)を採用。

 メモリは8GB、ストレージは128GB/256GB/512GB/1TBの中から選択できる。メモリ容量は第5世代と変わっていないが、最小ストレージが64GBから128GBに変更され、512GBと1TBが追加されたわけだ。

 インターフェイスはUSB-C×1、ワイヤレス通信はWi-Fi 6E、Bluetooth 5.3。従来通りWi-Fiモデルと、Wi-Fi + Cellularモデルが用意されるが、SIMカードスロットが廃止され、eSIMのみという仕様となった。

 カメラはリアに1,200万画素広角、フロントに1,200万画素超広角を搭載。フロントの1,200万画素超広角というスペックは同じだが、カメラの位置が縦持ち時の上部ではなく、横持ち時の上部に変更された。

 両者で最も大きな違いは、当然のことながら画面サイズ。11インチLiquid Retinaディスプレイと、13インチLiquid Retinaディスプレイの2サイズ展開となっている。両ディスプレイのスペックは基本的には同一だが、11インチが500cd/平方m、13インチが600cd/平方mだ。

 また、サイズ/重量/バッテリ容量は、11インチが178.5×247.6×6.1mm/462g/28.83Wh、13インチが214.9×280.6×6.1mm/617g(Wi-Fiモデル)、618g(Wi-Fi + Cellularモデル)/36.59Wh。

 ただしバッテリ駆動時間は、Wi-Fiでネット利用/ビデオ再生したときに最大10時間、モバイルデータ通信でネット利用したときに最大9時間と、スペック上は違いがない。

 このほかの細かなスペック、全モデルの直販価格については、下記の2つの表を参照してほしい。

 両機種ともアクセサリとして、「Apple Pencil Pro」(2万1,800円)、「Apple Pencil(USB-C)」(1万3,800円)、「Magic Keyboard」(11インチ用4万9,800円、13インチ用5万9,800円)が用意される。Apple Pencilはともかく、キーボードはかなり割高に感じられる。サードパーティ製キーボードと組み合わせることもおすすめしたい。

■ 13インチ版では大画面でHDRコンテンツを堪能できる

 前述の通り13インチiPad Airには13インチLiquid Retinaディスプレイが搭載されている。従来iPad ProのようにバックライトにminiLEDが搭載されているわけではないが、輝度や発色については申しぶんない。

 もちろんYouTubeやNetflixアプリではHDRコンテンツを再生可能だ。黒の表現についてはminiLEDやOLED採用機にはおよばないが、それでもコンテンツプレーヤーとしては非常に優秀なタブレット端末であることは間違いない。

 ただしiPad Pro(M4)は、10Hz~120Hzの可変リフレッシュレート、高輝度、高コントラスト比、Nano-textureディスプレイガラスなどの差別化ポイントがあるのは留意しておこう。

■ Apple Pencil Proは魅力的

 今回、iPad Airと一緒に「Apple Pencil Pro」を借用したが、Proを冠するだけの使い勝手の向上を実感できた。

 「スクイーズ」(握る)動作で画面上にフローティングメニューをすばやく表示でき、ダブルタップや軸の回転操作でツールを簡単に切り替えられる。また、対応アプリではペンのサイズ・形・色なども画面上で確認できる「ホバー」機能や、ほかのデバイスと同様に「探す」機能も搭載された。

 筆者のように同じ色のペンでひたすら書き続けるような使い方であれば従来のApple Pencilで十分だが、ツールを切り替えつつ創作に没頭したいという漫画家やイラストレーターにとっては非常に魅力的なアイテムだと思う。

■ 並べて比較しない限りはiPhoneとも見劣りしないカメラ画質

 カメラについてはカタログスペック上では大きな変更はない。ただし「スマートHDR 3」が「スマートHDR 4」にバージョンアップされ、フロントカメラにおいて画面表示をフラッシュの代わりとする「Retina Flash」が「True Tone搭載Retina Flash」に変更されている。

 今回実際にテスト撮影してみたが、基本的な画質は良好だ。横に並べて比較しない限り、最新のiPhoneとも見劣りしないと思う。夜景モードは搭載されていないが、よほど暗くなければ撮影可能。タブレット端末としては十分満足できるカメラ画質だ。

■ CPU性能よりもGPU性能のほうが大幅な伸びを達成

 最後にパフォーマンスをチェックしてみよう。今回比較対象としたのは下記の4モデルだ。ただし一部ベンチマークはバージョンアップされ、旧バージョンをインストールできないため、すべてのベンチマークを4製品で実施できていないことをご了承いただきたい。

 CPU性能についてはGeekbench 5をご覧いただきたいが、Single-Core Score、Multi-Core ScoreともにM2搭載機がM1搭載機を上回っている。iPad Air (M2) をiPad Air(M1)を比較すると、122%相当のスコアだ。

 3Dグラフィックス性能については「Basemark Metal Free 1.0.7」で比較すると、総合性能(Overall)で、iPad Air(M2)は、iPad Pro(M2)に対して96%相当、iPad Pro(M1)に対して140%相当、iPad Air(M1)に対して138%相当のスコアを記録している。CPU性能よりもGPU性能のほうが大幅な伸びを達成しているわけだ。

 ストレージ速度についてはおもしろい結果となった。iPad Air(M2)は、iPad Pro(M2)に対して52%相当、iPad Pro(M1)に対して57%相当、iPad Air(M1)に対して117%相当のスコアを記録している。iPad AirとiPad Proではストレージ速度を差別化しているのは間違いなさそうだ。

 バッテリ駆動時間についてはディスプレイの明るさ50%、音量50%でYou Tubeを連続再生したところ、12時間57分21秒動作した。カタログスペックの「Wi-Fiでネット利用/ビデオ再生:最大10時間」よりも約3時間長く動作したことになる。

■ 最速・最高品質ではないが、多くの人にとって最良のタブレット

 新型iPad AirはM2を搭載してリリースされた。現在M3、そしてM4を搭載するiPad Proがすでにリリースされているわけだが、個人的には一般的な用途であればM1でも十分であり、M2を搭載していれば4K動画なども含めたクリエイティブワークも快適に行なえると考えている。

 M4搭載iPad Proはプロフェッショナルクリエイターのためのタブレットであり、そのスペックは筆者も含めて多くの人にとっては使いこなせないと思う。

 新型iPad Airは使い勝手が向上したApple Pencil Proに対応しており、イラスト系クリエイターにピッタリ。3Dゲームもタブレット最高品質で楽しめる。そして価格はiPad Proよりも大幅に安い。

 新型iPad Airは最速ではないし、最高品質でもない。しかし多くの人にとって、(入手性を考慮すれば)最良のApple製タブレットであると言えるだろう。