ついに全貌が明らかに! 熊川哲也による新作バレエ『マーメイド』世界初演開幕レポート

AI要約

熊川哲也が芸術監督を務めるKバレエ トウキョウによる『マーメイド』が、9月8日東京文化会館にて世界初演の幕を開けた。熊川が演出、振付、台本、音楽構成を手掛けた、設立25周年を記念しての新作だ。

物語の世界へと皆を誘うのは、グラズノフのワクワクするような音楽。第1幕第1場の舞台は、海の近くの酒場だ。舞台奥には、陽の光をキラキラと反射する美しい海。時間の経過とともに、その色合い、表情が少しずつ変化していく様子が美しい。

大クジラの出現で、物語は大きく動き出す。波間に現れる大きな尾びれが、観客の想像力を大いに刺激、独創的な仕掛けに目を奪われる。

ついに全貌が明らかに! 熊川哲也による新作バレエ『マーメイド』世界初演開幕レポート

熊川哲也が芸術監督を務めるKバレエ トウキョウによる『マーメイド』が、9月8日東京文化会館にて世界初演の幕を開けた。熊川が演出、振付、台本、音楽構成を手掛けた、設立25周年を記念しての新作だ。数々の全幕バレエで多くの観客を魅了してきた熊川。その初日の満席の劇場は、彼の最新作をいち早く体感したいという観客の期待と熱気に包まれた。

古典作品の改訂や、壮大な構想をもって立ち上げるオリジナル作品まで、年に一度のペースで大規模な新作を手掛けている熊川が今回取り組んだ題材は、アンデルセンの童話『人魚姫』。より多くの子供たちにバレエに興味を持ってもらいたいという思いから選んだというが、アニメやミュージカルで人気を得ている物語だけに、熊川がどんな世界を打ち出してくるのか、果たして海の中を自由に泳ぐヒロインはどのように描かれるのか、様々に想像しながら客席へ。

物語の世界へと皆を誘うのは、グラズノフのワクワクするような音楽。第1幕第1場の舞台は、海の近くの酒場だ。舞台奥には、陽の光をキラキラと反射する美しい海。時間の経過とともに、その色合い、表情が少しずつ変化していく様子が美しい。

酒場では、プリンスとその友人たちが、船乗りや娼婦たちと楽しんでいる。そこへやってきた父王の命に従い、幻の大クジラを仕留めるという冒険に嬉々として出発するプリンスは、『白鳥の湖』の憂いを帯びた王子と対照的、朗らかで冒険心に満ちあふれている。この日は山本雅也が、航海への意欲に燃える若きプリンスを爽やかに演じた。

ヒロインの登場は、第2場だ。海の中を自在に遊泳するマーメイドの姿は、リフトを多用して表現。裾がきゅっと反り上がった衣裳も人魚らしさを引き立てる。この日のマーメイドは、飯島望未。海面から船上のプリンスに一目惚れし、全身全霊で彼を愛するひたむきなヒロインを丁寧に演じ、観客を虜にした。

大クジラの出現で、物語は大きく動き出す。波間に現れる大きな尾びれが、観客の想像力を大いに刺激、独創的な仕掛けに目を奪われる。プリンスに攻撃されたことで、嵐を起こし反撃するシャークの存在や、クマノミ、サンゴ、ロブスターといった海の仲間たちもユニーク。魚たちが列をなして登場するさまは、まさに海の中のファンタジーだ。

声と引き換えに脚を手に入れ、「愛が実れば永遠の魂を得られるが、そうでなければ泡になって消えてしまう」という厳しい条件を受け入れたマーメイド。大掛かりな彼女の浮上シーン、そのインパクトが、ヒロインの思いの強さに重なって、胸を打つ。

第2幕も見どころ満載。とくに第3場で繰り広げられるプリンスとプリンセスの婚約式は、クラシカルなバレエの魅力、熊川振付ならではの見応えある踊りがたっぷり詰まった贅沢な場面だ。この日プリンセスを演じたのは日髙世菜。美しいチュチュ姿で華やかなシーンを牽引、マーメイドの恋敵を嫌味なく演じた。