『男女7人夏物語』『ビーチボーイズ』…ウォッチャー座談会「最強の夏ドラマ」ベスト10を決めよう!

AI要約

夏に放送され、夏に観たくなる作品を「夏ドラマ」と定義し、最強の夏ドラマを決めるために、過去の名作やトレンディドラマ、社会問題を取り上げた作品など、様々な作品が紹介されました。

過去の名作から現代に至るまで、夏ドラマは爽やかなラブコメや社会問題を描いたドラマなど、幅広いジャンルが存在し、視聴者からの支持を集めています。

ドラマの設定やストーリー、キャストの起用などが特徴的な夏ドラマは、時代背景に合わせて幅広いテーマを取り上げており、それぞれの作品が独自の魅力を持っている。

『男女7人夏物語』『ビーチボーイズ』…ウォッチャー座談会「最強の夏ドラマ」ベスト10を決めよう!

――夏に放送され、夏に観たくなる作品を「夏ドラマ」と定義し、今回は「最強の夏ドラマを決めよう」というテーマで3人にお集まりいただきました。近年でいえば、去年放送された『VIVANT』(TBS系・’23年)を見た時の衝撃が忘れられません。「日本でもハリウッド映画みたいなスケールの大きなドラマが作れるんだ」と感動しました。連ドラであれだけ予算をかけられるって珍しいことですよね?

大山くまお(ライター) 日曜劇場という同局の看板枠であること、また「半沢直樹」シリーズや『下町ロケット』(いずれもTBS系)らヒット作を量産してきた福澤克雄監督の定年前最後の作品であることから力を入れて制作されましたが、それにしてもかなりレアなケースです。夏は花火大会やお盆など行楽や行事の季節。在宅率が低くなるから、ドラマはあまり観られません。そのぶん、制作費をたくさんかけられないから、大物俳優が出ることは稀。『VIVANT』ぐらい予算をかけて仕掛けなければ夏ドラマで大ヒットは生まれにくい。たとえば、木村拓哉(51)主演の夏ドラってゼロなんですよ。

本誌ドラマ担当編集者K あれ? 『ロングバケーション』(フジテレビ系・’96年)は……春ドラマでしたね。

大山 そうなんですよ。逆にこちらは意外ですが、『半沢直樹』のシーズン1は夏ドラマなんです。ただ、 視聴率を取りにくい経済ドラマということもあって、局内の期待も高くなかった。期待されていないからこそ、逆にチャレンジできる、いろんなことが試せる。それが夏ドラマの強みで、大きく化けた作品がいくつも誕生しています。『WATER BOYS』(フジ系・’03年)はまさにそうでしたね。

北川昌弘(ドラマウォッチャー) 男子高校生が集まって、文化祭で発表するアーティスティックスイミングを練習する物語ですね。一つの目標に向かって奮闘する。若いイケメンたちの肉体も魅力的で、夏にピッタリの作品です。

大山 今でこそ主演級の俳優ですが、当時まだ無名だった山田孝之(40)や森山未來(40)、永山瑛太(41)など若い俳優をメインキャストに起用。田中圭(40)や星野源(43)も出演しています。

北川 今思えば、キャストがビックリするくらい豪華でしたね。夏に観たいドラマといえば、僕が真っ先に思い浮かんだ『ビーチボーイズ』(フジ系・’97年)もそうでした。反町隆史(50)に竹野内豊(53)、人気の絶頂で、当時まだ高校生だった広末涼子(44)がヒロイン役で出ていました。海の近くにある民宿の看板娘役で、失意のイケメン二人に囲まれて物語が展開していきます。

大山 海に青い空、そして恋愛ではなく男同士の友情を描いて平均視聴率23%を記録する大ヒット。あまりにうまくいきすぎたからか、それ以後、似たような設定のドラマは見当たりません。

◆年配の役者が出てこない

編集者K 海辺が舞台の王道作もいいですが、僕はバブル期の空気感をよく描いた『男女7人夏物語』(TBS系・’86年)がイチ押しです。主人公たちはみんなイケイケで、若者の憧れの存在でした。明石家さんま(69)と大竹しのぶ(67)が演じた主人公は、当時大人気のウォーターフロントの高級マンションにそれぞれ住んでいたし、さんまの役はツアーコンダクター、大竹はフリーライター。華やかな仕事ぶりでした。僕も就活生の時にツアーコンダクターになりたくて大手旅行代理店に応募したのですが、見事に落ちました(笑)。

大山 男女7人が絡み合う恋愛ドラマで、’80年代後半から巨大ブームが訪れるトレンディドラマの先駆けと言えますね。メインキャストには奥田瑛二(74)、池上季実子(65)、片岡鶴太郎(69)を起用。当時の人気者が揃っていました。″憧れの職業に就いたちょっとお金持ちの若者たちの恋愛ドラマ″で、年配の役者が全く出てこないのが特徴です。

編集者K その時代のちょっと浮かれた感じがうまく描かれていますね。毎日のように、仕事終わりに合コンに行っていたり(笑)。若者の群像劇と言えば、『ふぞろいの林檎たち』パートⅠ(TBS系・’83年)も夏ドラマでしたが、皆さんどうでしたか?

北川 似ているようで両作はまったく似ていないですね。『ふぞろい』は本当に現実的。学歴差別や売春など、いろんな社会問題を提起しています。そういった意味では時代を代表する記憶に残るドラマです。中井貴一(62)や時任三郎(66)、手塚理美(63)、石原真理子(60)などが出ていましたが、イケているキャラクターはあまりいない。

◆今では絶対に放送できない

編集者K 女性二人は看護学校生役。看護師って、激務に見合っただけの収入をもらえない仕事。時はバブル。″もっと楽に稼げる仕事はいっぱいあるのに、なんでそんなハードな仕事に就くの?″って言われていた時代でした。それに比べると『男女7人』は完全に夢物語(笑)。

北川 タイトルに夏が入っている作品で思い浮かぶのは中山美穂(54)主演の『夏・体験物語』(TBS系・’85年)。まだ15歳だった中山の体あたりの演技はインパクトがありました。先にヒットした『毎度おさわがせします』(TBS系・’85年)の姉妹編ですが、女子高生4人組が夏休み中に初体験をする話です。当時のアイドルが下着姿や水着姿を披露していて、今では絶対に放送できないシーンが多かったですね。若者の性教育的な要素も含めたドラマ作りで、最初は『初体験物語』というタイトルになる予定だったみたいです。

―――トレンディドラマの話に戻りますが、バブル時代を代表するW浅野主演の『抱きしめたい!』(フジ系・’88年)も夏ドラマ。浅野温子(63)演じるキャリアウーマンと、幼なじみの浅野ゆう子(64)演じる離婚寸前の主婦の恋と友情を描いたラブコメディーです。

大山 オープニングのインパクトが強かったですね。白人だらけのビーチを堂々と水着姿で闊歩するW浅野の姿は、戦後のコンプレックスを払拭したバブル当時の日本の自信を感じさせます。とにかく全編明るく、W浅野のパワショルジャケットなどファッションも現在に通じるものがあるので、今の若い視聴者も見たらハマりそうです。

編集者K 共演の本木雅弘(58)、石田純一(70)が若々しくイケメンでした。平均視聴率18.1%。W浅野のやたら大げさな表情や言葉遣いをマネする女子大生がたくさんいたのを覚えています。

◆伝説の″マザコン″の登場

北川 その空気感と真逆なのが、バブルが崩壊した後の暗い世の中を表現した『ずっとあなたが好きだった』(TBS系・’92年)。伝説の″マザコン″キャラクター、佐野史郎(69)が演じたストーカー・冬彦さんは社会現象になりました。ドラマ史に残る作品だと思います。

編集者K 賀来千香子(62)演じる主人公が大学生だったころ、世の中はバブル真っ盛り。布施博(66)が扮する彼氏はラグビーの花形選手でした。ところが、賀来はエリートサラリーマンの冬彦と結婚するのですが、バブルがあっという間に崩壊したように、主人公の生活もものすごい勢いで崩れていく。その過程がただただ怖い。完全にホラーです。違う意味で夏っぽいというか、いわゆる「サイコスリラー」と呼ばれるジャンルの走りだったような気がします。

大山 佐野がプライベートで電車に乗っていたら、乗客が悲鳴をあげたというエピソードもありましたね(笑)。

大山 ちょっとマイナーな作品かもしれませんが、僕が最も好きなのは小林聡美(59)主演の『すいか』(日テレ系・’03年)です。脚本は木皿泉。小林とは土曜夜のドラマ『やっぱり猫が好き』(フジ系・’88年)でもコンビを組んでいました。小林が演じた主人公は平凡な人生を送っていたが、ひょんなことで、ともさかりえ(44)、市川実日子(46)らと共同生活を送ることになります。親離れができてない主人公がさまざまな出来事で成長していく物語です。土曜21時枠と思えない、とても哲学的なテーマで視聴率はふるいませんでしたが、優秀な脚本家に贈られる『向田邦子賞』を受賞するなど、高く評価されました。

編集者K 視聴率は一つの指標ですけど、それだけでは作品の良し悪しを判断できませんよね。近年のドラマで言うと、松本穂香(27)と松坂桃李(35)主演の『この世界の片隅に』(TBS系・’18年)はドラマ通の間では好評でしたが、平均の世帯視聴率は9.7%と、日曜劇場としてはイマイチでした。

――広島の原爆をテーマにした作品ですね。夏は戦争にまつわる節目も多い。

大山 同題のアニメ映画が傑作だったぶん、比較されて損をしていましたが、僕も好きでした。主人公のすずは原爆が投下されて両親が亡くなり、妹が重度の原爆症になってしまう。また、姪っ子と一緒にいた時に近くで不発弾が爆発して姪っ子は即死。すずは生き残るが、右腕を失って大好きな絵が描けなくなる。近年、重いストーリーは避けられがちですが、正面から描いていました。現代の広島も描いていたのが印象的でしたね。

北川 ヒーローでもなんでもない平凡な女性が、戦争で人生が劇的に変わる姿を描くことで、戦争の残酷さを伝えています。

◆今やったら大問題

――個人的に、夏は爽やかなラブコメが見たいです。桐谷美玲(34)と三浦翔平(36)が結婚するきっかけとなった『好きな人がいること』(フジ系・’16年)や、新垣結衣(36)が初めて連続ドラマで主演を務めた『全開ガール』(フジ系・’11年)が好きでしたね。一番好きなのは、綾瀬はるか(39)と藤木直人(52)主演の『ホタルノヒカリ』(日テレ系・’07年)。「干物女(ひものおんな)」という流行語を生み出し、社会現象にもなりました。こういう生き方に親近感があって、ドラマで取り上げられることが嬉しかったです。

編集者K 古い一軒家の縁側に綾瀬と藤木が座ってビールで乾杯していたくらいで、あまり夏感はないですけどね(笑)。ただ、ジャージにちょんまげ姿の綾瀬がかわいかった。働く女性にエールを送る物語として同性から支持を集めました。

大山 夏と恋愛ドラマの相性はいいですね。『愛していると言ってくれ』(TBS系・’95年)も夏ドラでした。豊川悦司(62)が演じる耳が聞こえない男性と、常盤貴子(52)が演じる女優の卵との恋愛物語。こちらは爽やかなラブコメではなく、恋愛表現が非常に激しい。電話でのコミュニケーションがうまくいかないとなったら、突然走り出して会いに行ったり。ワガママそのものでした。

――「手話じゃなくて、声に出してちゃんと言ってよ。愛してるって言ってよ」ってセリフありましたね。今やったら大問題になりそう。

北川 でも、コロナ禍の’20年に再放送されて、当時観ていなかった若い人の間でも話題になっていましたね。『silent』(フジ系・’22年)が爆発的な人気を得た時、同じく耳が聞こえない男性が相手役ということで『愛していると言ってくれ』が再び注目された。設定が似ているだけですが、それくらい色褪せない素晴らしい作品です。

――話は尽きないが、お三方のご意見をもとに編集部が認定した「最強の夏ドラマ」ベスト10を下の表にまとめた。酷暑を避け、冷房の利いた部屋で名作を楽しむのはいかがだろう。

『FRIDAY』2024年9月6・13日合併号より