「MIU」が描く人生のピタゴラ装置 全方位ch
ピタゴラ装置とは、連鎖的に動く簡単な仕掛けのことで、小さな玉が次々と動きを引き起こす。その仕組みが登場する番組やドラマについて触れられている。
主人公の志摩は、人生をピタゴラ装置に例え、運命や出会いが人を導くスイッチと語る。それぞれの人が影響し合い、前に進んでいく様子が描かれる。
「MIU404」や「アンナチュラル」など、同じ世界線のストーリーが交差し、登場人物が絡み合う姿が見られる。
小さな玉が転がってドミノを倒し、その最後のパーツが別の玉を動かし、次は滑車を動かし-。こうした簡単な仕掛けが連鎖的に動いていく仕組みを、「ルーブ・ゴールドバーグ・マシン」というそうだ。NHKEテレの番組「ピタゴラスイッチ」に登場することから、「ピタゴラ装置」の通称で知られている。
ささいな振動で転がり出す玉。思わぬ役割を担うハンマー。番組の放送時間は把握していないが、目にしたときにはじっと見入ってしまう。本筋の進行とは無関係に思われた仕掛けが最後に合流すると、ちょっとした感動さえ覚える。
野木亜紀子さんによるオリジナル脚本の刑事ドラマ「MIU404」(TBS系、令和2年)では、このピタゴラ装置を人生に見立てていた。
主人公の志摩(星野源)は「誰と出会うか、出会わないか」といったスイッチ(仕掛け)によって人は道を間違え、罪を犯してしまうと語る。言葉通り、後にわずかなことで明暗を分けた少年たちがいた。
マイナスの作用ばかりではない。相棒の伊吹(綾野剛)は、イレギュラーな人事で志摩と組んだことがスイッチなのだと、志摩の過去に踏み込み苦しみから解放する。登場人物の誰もが誰かと少しずつ影響し合って前を向き、それぞれの道を歩いていく。
社会は無数の仕掛けを共有する壮大なピタゴラ装置だと思うと面白い。誰かが倒したドミノが、遠くの誰かを動かすかもしれない。自分が何げなく触れた仕掛けが、ずっと後の自分に影響するかもしれない。
MIUは、同じ野木さんのオリジナル法医学ドラマ「アンナチュラル」(TBS系、平成30年)と同じ世界線の物語。登場人物も交差し、アンナチュラルの解剖医の指摘で解決に至った事件もあった。その傲岸不遜な解剖医、中堂(井浦新)は画面には映らなかったが、同僚たちと関わる中でまた少し丸くなっただろうかと想像する。
この2つのドラマと世界線を同じくする映画「ラストマイル」が、23日に公開された。日本中を恐怖に陥れる謎の連続爆破事件。映画の公式サイトには、登場人物としてドラマの面々がずらりと並ぶ。ストーリーはもちろん、志摩たちがあれからどんな日々を過ごしたのかを垣間見るのが楽しみだ。(織)