尾野真千子が〝20年来の悪友・戦友〟結城貴史とタッグ 「DitO」

AI要約

日本とフィリピンの合作映画「DitO(ディト)」は、プロボクサーとして再起を図る男と一人娘の微妙な絆を描いた作品。

主演俳優の結城貴史が初監督作品であり、田辺桃子と尾野真千子も出演し、結城監督が全身全霊をかけて制作に取り組んだ。

フィリピンを舞台にした物語で、家族の絆や再会、挑戦をテーマに据えた本作は、演技陣の強い信頼関係を背景に描かれている。

尾野真千子が〝20年来の悪友・戦友〟結城貴史とタッグ 「DitO」

日本とフィリピンの合作映画「DitO(ディト)」は、フィリピンを舞台にプロボクサーとして再起を図る男と一人娘の微妙な絆を描いた。俳優の結城貴史が初監督作品で主演を務め、娘をドラマ・映画で人気上昇中の田辺桃子、妻を尾野真千子が演じた。結城監督は「役者を30年やってきて『居場所』をテーマに自分も生きてきた。この映画にその思いを込めた」と全身全霊をかけて製作に挑んだ。

神山英次は日本に妻ナツと一人娘の桃子を残し、フィリピンで再起をはかるべく奮闘しているプロボクサー。そんな彼の元に、桃子が母を亡くして訪ねて来る。生き別れ同然だった父娘は久々の再会を果たし、衝突しあいながらも少しずつ関係を深めていく。やがて40歳を迎えた神山に、ラストチャンスとなる試合の話が舞い込んだ。「DitO」とはフィリピンのタガログ語で「ここ(here)」の意。

結城監督は、田辺が中学生の時に仕事を共にし「芝居に打ち込む姿を気に入っていた」と言い、尾野とは「二十数年前にCMのオーディションなどをともに受けて以来の仲」で、映画を作る時は「2人にぜひ共演してほしいと思ってきた」と直接オファーした。尾野は結城監督について「何でも話せる兄弟みたいな悪友であり、戦友でもある。結城が年月をかけて撮った作品を心して見てほしい」と全面的に協力。田辺も「物語、音楽、色遣い、そして熱量あふれる作品」と言葉に力を込めた。長年にわたる信頼関係が3人を結び付け、本作に結集して作品の骨格になっている。

結城監督は2017年に別の企画でフィリピンに滞在し「ボクシングの本場に来たのだから」と仕事の合間に現地のジムに通い、「いつか彼らの姿を映画に」と思うようになった。もう一つ、フィリピン出身のボクシング界のレジェンドで、6階級の世界チャンピオンになり、テレビ司会者や政治家にもなったマニー・パッキャオの「年齢はただの数字だ」という言葉に感銘を受け、挑戦し続けることに自身を重ねたという。

ただ、ボクシングに特化した映画や表面的な貧しさに焦点をあてる考えはなく「僕なりの家族像を描きたい、というのが軸にあって、たまたま職業がボクシングだっただけ。若いころから父とうまく接することができなかった自分を桃子に投影した」と話した。

フィリピンでの撮影が大半を占めた。「風景も、文化や言葉も全然違う場所。いつもの自分たちとは異なる感覚で解放感も緊張感もあった」と尾野。海外での撮影が初めてだった田辺は「異文化がたくさん混ざっている街のイメージがあった。最初は、車が多くてせかせかした印象が強かった。スラム街やローカルな場所では、初めは警戒されたが、敵ではないと分かるととてもフレンドリー。エキストラとして協力してくれたり、撮影中は音を立てないよう周囲に伝えてくれたり親切だった」と懐かしそうな表情を見せた。

結城が今年6月に再訪した時には現地の人たちから「桃子は来ないのか」と残念がられたという。田辺は「役の桃子がフィリピンに慣れていく姿と、自分がこの国に親しみを感じる感覚がリンクしてプラスになった」と振り返った。