『虎に翼』寅子と航一が辿り着いた2人にとっての“普通” 不器用な身長差キスが微笑ましい

AI要約

新潟地裁で再会した寅子と航一が互いに惹かれ合い始める。2人は永遠の愛を誓わず、だらしない愛を探し始める。航一の提案により、不器用なキスを交わす2人の微笑ましい姿が描かれる。

寅子と航一が答えにたどり着くまでの経緯や、優三の手紙に宿る深い愛、そして2人の不器用な身長差のキスによる進展が描かれる。

次回からは寅子が大きな案件を担当し、原爆裁判に突入する展開に注目が集まる。同時に、現実のモデルとなる裁判官三淵嘉子のエピソードも関連して紹介される。

『虎に翼』寅子と航一が辿り着いた2人にとっての“普通” 不器用な身長差キスが微笑ましい

 新潟地裁で再会し、少しずつ惹かれあってきた寅子(伊藤沙莉)と航一(岡田将生)。互いに愛する子供と亡き夫/妻がいる。それでも、どうしても胸が高鳴ってしまう。『虎に翼』(NHK総合)第95話では、2人が互いに納得する認識を見つけ合った。

 それが「永遠を誓わない、だらしがない愛」という形。寅子にとって優三(仲野太賀)は今もこれからも愛する夫で、それは航一の照子(安田聖愛)への思いも同じだ。けれど、寅子は航一にどうしても会いたくなり、航一は寅子といると自分の心にしていた蓋がつい外れてしまう。

 理想の自分とかけ離れていくことに戸惑う寅子に、航一は「永遠の愛を誓う必要はない。なりたい自分とかけ離れた不真面目で、だらしがない愛だとしても、僕は佐田さんと線からはみ出て、蓋を外して、溝を埋めたい」とドキドキする今の気持ちを大事にしても罰は当たらないのではないかと提案する。

 筆者が最近観たある映画では、愛する妻を亡くした主人公が新たなパートナーとの恋に踏み出せずに、妻との思い出を大切に生きていくという描写があった。それがその人もしくは一般的な普通であり、答えなのかもしれない。『虎に翼』の凄さの一つに、そんな普通や当たり前を見つめ直し、もう一つの答えを提示してくれることが挙げられる。どうしたって結婚式の決まり文句「永遠の愛を誓いますか?」を思い出してしまうし、筆者の中のイマジナリー寅子が「はて? 永遠の愛とは?」と吠え出しているが……高瀬(望月歩)と小野(堺小春)が誓った「友情結婚」のように人の数だけ答えがあって、それぞれの価値観での普通がある。優未(竹澤咲子)にとって困ってる人を助けるのが普通のことであったように。寅子と航一にとって「永遠を誓わない、だらしがない愛」が、自分らしくいられるのであれば、それが最適の答えであり、やがて2人にとっての普通として馴染んでいくのだろう。

 寅子と航一がこの答えに辿りつくまでには、花江(森田望智)や優未、涼子(桜井ユキ)による後押しと、なんと言っても優三の手紙に書かれた寅子への深い愛があったわけだが、2人が交わした不器用な身長差のキスがなんとも微笑ましい。いや、微笑ましいを超えて、かわいらしいまである。

 航一のしようとするその気配に身構える寅子。ぎこちなく寅子を抱き寄せた航一は寅子を見下ろし、寅子は航一を見上げている。航一は膝を曲げて、体をかがめて、寅子に顔を近づけるが、互いに同じ方向に顔を傾けてしまう。タイミングがやっと合い、唇を重ねた2人の顔が離れ、目が合うと思わず「フフフ」と笑いが込み上げてきてしまう。濡れてよく滑る廊下を、2人が手を組み寄り添って歩いていく姿も、これからを想像させるいい終わり方だった。

 寅子は幸せな暮らしの一方で、裁判官として大きな案件を担当することとなる。現在、書店には『虎に翼』の関連書籍が多く並んでいるが、中でも目を引くのが「原爆裁判」という文字であり、寅子の実際のモデルとなっている三淵嘉子を語る上で避けては通れないエピソードだ。次回予告に、「原爆を投下した行為は国際法に違反するとして」「日本政府に賠償を求める訴えを起こしている」というセリフがあることからも分かるように、『虎に翼』はいよいよ原爆裁判へと突入する。